第二話 婚約者の浮気相手の女性
どうしてこんなことになってしまったんだろう……。
今、わたしの前で、信じられない光景が展開されている。
婚約者であるルアンソワ様とイレーレナさんというわたしの知らない女性。
抱きしめ合い、唇と唇を婚約者であるわたしの前で堂々と行うなんて……。
わたしはめまいがして、倒れそうになる。
ここで倒れてはいけない。我慢するのよ!
なんとか体の態勢を維持する。
やがて、ルアンソワ様は、彼女から唇を離した。
「フローラリンデよ、どうだ」
ルアンソワ様は勝ち誇ったように言う。
二人は、体は少し離したが、手はつないだまま。
わたしは我に返ると、
「どうして、どうして、この女性とキスをしているんですか?」
と言った。
するとルアンソワ様は、
「このシチュエーションを見てもまだわからないのか?」
と冷たく笑いながら言う。
ますます腹が立ってきたわたしは、
「わかりません」
と言った。
もちろん、わからないわけではない。
抱きしめ合っているだけでも浅い関係でないことは理解できる。
そして、二人はキスまでしている。
それも、頬に軽くしているのではない。
頬だけだったら、少し親しい間柄であればしないこともないだろう。
しかし、唇と唇を重ね合わせているということは、抱きしめ合う関係以上に深い関係になっているということなのだろう。
でもわたしはそれを認めたくはない。
認めたくはないのだけど……。
「彼女は、わたしの恋人なんだ。好きなんだ」
ルアンソワ様はそういうわたしの思いを一瞬で破壊した。
恋人……好き……。
イレーレナさんは恥ずかしそうにしている。
その態度を見ると、怒りで心が沸騰し始める。
「恋人って……。わたしという婚約者がいるのに……」
「恋人を持ってはいけないのかい?」
ルアンソワ様は、わたしに、何を言っているのだろう、というような表情で言う。
「婚約者がいるのに、別の人と付き合うのを浮気と言います。ルアンソワ様は浮気をされているのです」
「わたしは浮気をしているつもりはないんだけどな」
どこかフワフワしているような感じのルアンソワ様。
「浮気でなければなんだと言うんでしょうか?」
「教えてやろうか?」
「教えていただきたいと思います」
「本気だ。浮気ではなくて本気。わたしは、きみのことは嫌いではない。これからも婚約者としてきみのことを大切にしたい。しかし、一方で、イレーレナのことも大切にしたい。わたしは本気でイレーレナのことが好きなんだ。だから、浮気ではない。本気だ」
わたしは、めまいがしてくる。気分もいいとは言えない。
しかし、こんなところで倒れるわけにはいかない。
「わたしという婚約者がいる時点で、他の女性と付き合えば、それは浮気なんです」
「いいではないか。別にきみと別れようと言っているわけではない。二人と一緒に付き合っていきたいだけだ。なあイレーレナ。きみもそれでいいだろう?」
ルアンソワ様がそう言うと、イレーレナさんは、
「ルアンソワ様がそう言うなら従います」
と恥ずかしそうに言う。
「イレーレナさん、あなたは、それで満足なの?」
わたしは、イレーレナさんに向かってそう言った。
すると、イレーレナさんは、急に厳しい表情になる。
「フローラリンデさんとおっしゃいましたね」
「そうですが」
「今はこの状況を受け入れます。残念ですが、ルアンソワ様のおっしゃることですから従うしかないです。しかし、いずれわたしが婚約者になります。ルアンソワ様の愛はわたしにあるのですから」
イレーレナさんは、冷たく笑いながらそう言った。
「面白い」
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