第一話 浮気をされてしまい、婚約を破棄されたわたし
わたしはフローラリンデ。リランテーヌ子爵家の令嬢。
ボトルンド公爵家の令息ルアンソワ様と婚約中だった。
しかし……。
「わたしルアンソワは、フローラリンデとの婚約を破棄する」
ルアンソワ様は、わたしに冷たくそう言った。
婚約してからほぼ一か月。
今日もルアンソワ様のお誘いで、ルアンソワ様の屋敷までやってきた。
そろそろ抱きしめられたり、キスをされてもいい頃……。
と言いたいところだけど、まだ心の準備をしつつある状態。
ルアンソワ様が嫌いなわけではない。
ハンサムで、やさしいタイプだと思うので、好意は持っている。
ルアンソワ様の方も、わたしのことを嫌ってはいないようだ。
しかし、現状は、なかなか仲が良くなっていかない。
ルアンソワ様のところに来た時は、毎回、ルアンソワ様と話をする時間がある。
本来だったら、楽しいおしゃべりの時間と言えそうなのだけど。
それはいいのだが、話題がなかなか続かない。
わたしの方は、一生懸命話題作りをするのだけど、あまり興味を持ってもらえないことが多い。
残念ながら、まだまだ心は通じ合っていないと言えるだろう。
もともと初対面の頃からフィ-リングは合っていないように思った。
でも婚約者になった以上は、そういうことは言っていられないと思い、一生懸命ルアンソワ様の好みに合う女性になろうと努力してきた。
とはいうものの、心が通じていない状態で、そういうことだけ求められても困惑してしまう。
複雑な気分。
でも求められたら受けるしかないなあ……。
そう思いながら、ルアンソワ様の部屋に行く。
わたしはドアをノックした。
「誰?」
ルアンソワ様の声が聞こえる。
「フローラリンデです」
「入りなさい」
わたしがドアを開けて、部屋に入ると、そこには……。
ルアンソワ様と女性の二人。
これって、どういうことなの?
二人は、ただいるだけではない。
抱き合っていた。それもうっとりとした表情で。
わたしという婚約者がいるというのに……。
「今日はよく来てくれた」
冷静な表情に戻るルアンソワ様。
しかし、女性と離れはしたものの、依然として手をつないでいる。
なぜ手をつないだままなの!
そう叫びたくなる。
「ルアンソワ様……、その女性はいったい……」
わたしは、冷静になろうと一生懸命だったが、どうしても声が震えてしまう。
「紹介がまだだったな。この方は、ボランギュール公爵家の令嬢イレーレナだ」
「イレーレナです。よろしく」
冷たく笑うイレーレナさん。
わたしはだんだん腹が立ってきた。
「ルアンソワ様、この方とはいったいどういう関係なんですか?」
「関係?」
「そうです。今日は、ルアンソワ様とわたしと二人だけで会うはずなのに、知らない女性がそばにいるのですから。その女性のことを教えていただきたいと思うのは当然だと思います」
「そんなに教えてほしいのか?」
「教えていただきたいです」
「じゃあ、教えてやろう」
ルアンソワ様はそう言って笑うと、イレーレナさんを抱きしめる。
そして……。
「イレーレナ、好きだ。大好きだ」
「ルアンソワ様、好きです。大好きです」
二人はそう言い合うと、唇と唇を近づけていく。
これは夢なのだろうか……。
婚約者であるはずのルアンソワ様と知らない女性が、抱きしめ合っている。
それどころか、唇と唇を重ねようとしている。
わたしはまだルアンソワ様に抱きしめられたことはないのに……。
わたしは想定していなかったことに、思考が停止していく。
ルアンソワ様、それだけは、それだけは、しないで……。
かろうじて、それだけを思う。
しかし、わたしの思いは届かない。
唇と唇は重なっていき、二人はうっとりした表情になった。
「面白い」
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