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プロローグ

 ロードバイクに乗ってみたい。


 そんな気持ちになったのは大学に入ってすぐだ。入学した2ヶ月間は電車通学だった。電車は人の多さで暑苦しいは、臭いわと、とりあえず鬱陶しかった。何より、移動が面倒だった。学校へ行く分には嫌であったわけではない。自宅から学校の距離と公共交通機関が不便と思ったのだ。自宅から学校までは直線的な距離は約18㌔、しかし、電車を使っていた俺は最寄駅に乗り、都市部に向かう10㌔地点の乗り換え、地下鉄に乗って大学の最寄駅を目指すU型に遠回りしながら乗らなければならなかった。何より、大学の最寄駅から校内まで約2㌔歩くのがただただ面倒だった。だからこそ、乗ってて楽しいし、速いと聞いていたロードバイクには興味はあったし、自転車といえど直線上の最短距離で走ったらどうなるのかも気になった。そして、


「母さん、自転車が欲しい。それもママチャリとかじゃなくて、ロードバイクに乗りたい。」


「…珍しいね、ねだってくるなんて、何かあったの?」


 確かにあまり親にねだることはなかった。だからこそ、笑いながら驚かれた。


「定期券がそろそろ切れるし、お金補填して電車で行くより、自転車の方がお金をあまりかけずに住みそうだからさ…、この機会に心機一転してもいいかなって」


「………ここから学校近くないと思うのだけど、自転車で行くつもりなの?その…ロードバイク?に乗って」


「電車に乗る時のストレスが嫌なんだよ。少しでも解消されるならそれに越したことはないよ」


「ふんふん……………、で、本音は?」


「弱○ペダルを見て、本格的にロードバイクかっけぇ!!!!!めっちゃ欲しいと思いまぁしたぁぁ!!!!!!!!」


 そう今までのは所詮“建前”だ。事実思っていたこととはいえ、はっきりと言ってどうでもいい。

 ただ、興味あるから乗ってみたい!俺、アニメ好きですし?影響受けったっていいじゃないですか。他に何か理由要ります?


「維持費大変でしょ。パンクした時、いつも運んでたのは私だからね?あと、遠くて間に合いませんでした、とかの遅刻理由になってほしくない」


「大丈夫!大丈夫!修理が必要な時は自分で何とか自転車屋に足運んで治してもらうし、遅刻しない時間に出て間に合わせるし、仮に遅刻してもそれを理由にしないから!」


 お願い!と両手を合わせ、超、必死に懇願していた。


「ふぅ…、仕方ないね。まぁ入学祝いあげたことなかったし、入学祝いということで買ってあげる」


「あざます!!!!!!!!あ、洗濯物畳むね、お風呂も洗うよ!犬の散歩も後で行ってくるね!!!!!」


「こういう時は調子に乗って」


 グゥの根も出ません。とりあえず、言ったことは全て実行したのであった。


 数日後ーーー


「おぉ!!」


 眼前に飛び交う多くの自転車!!!そして、ママチャリ達ーー………


「ママチャリでよくない?」


「嫌だ」


 即答した。ロードバイク探しのために出かけたのにママチャリで落ち着くわけなかろう。

 ただ、全く気持ちもわからなくもない。そうとにかくロードバイクは値段が高い!!思っていた以上に高かったから俺も正直驚いていた。でも、ロードに乗りたかった。そこは曲げるつもりはない。

 まぁ、メーカーとか細かいことはわからないので好みのカラーデザインで決めることにしていた。

 大きなショッピングモールの中にある自転車屋でそのロードバイクが目に入った。それはGAINT・CONTENDだった。いい感じの黄緑色が入ったラインにベースは黒、悪くない。むしろこれがいいとこのとき思った。


「これが欲しい」


「そんなすぐ決めちゃうの?他見なくていいの?ほら、あそこのママチャー」


「絶対、嫌‼︎」


 何が何でもママチャリに誘導したいらしい。しかし、俺も譲歩するわけにはいかない。他のロードバイクの値段より安かったし、何より色が気に入った。俺だって、何が何でもこのロードを買って貰う。


「自転車で8万後半…、ねぇ、もしかしたら他もいいものあるかもしれないし、先に下の階のスーパーで夕ご飯の材料買いに行こ!」


「えぇ、もうしょうがないなー…、っていうと思う?だが断るだよ?」


 有耶無耶にする魂胆が見え透いておるわ!!


「はぁー…、しょうがないなぁ」


 よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎


「じゃあ、半分は出してね」


 ………………………………………うん?


「え、半分?それってどういう事ぉ?」


「高いし、こうして色々な場所に付き合ってあげてるだけ感謝しなさい。かかった分の金額はすぐにとは言わないから、次のバイトの給料日にかかった金額の半分は返してね?」


 買ってあげないとは言っていないので、まだいい。それにここで駄々こねていたら、それこそチャンスは無くなると感じた。だから渋々とはいえ、承諾した。いや、せざるを得なかった…。

 いずれにせよ、入学祝いに買ってあげると言っていたセリフを撤回はして欲しいものだ、とこの時は思った。

 そして、店員にこの自転車くださいと告げると


「はい、ありがとうございます。あとスポーツ車ですとライトや鍵など付いていないのでこちらも選びましょう」


 「えっ、そういうのついてないんですか?」


 母は驚いた口調で告げるた。ついてないですね〜と店員は説明していた。

 ライトや鍵が付いていないことに気づいてはいたが、まさかスタンドや泥除けといったパーツもあるなんて知る由もなかった。

 この時、パーツで購入したのはライト、ダイヤル錠、スピードメーター、サドルバック、パンク修理キッドグッズ、空気入れ、ヘルメットであった。これらで約2万円辺り…


「それらも含めた半分は後々返してね」


 俺は何もない天井見ながら、はぁいと答えた。

 そうして、初のロードバイクを手にしたのだった。

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