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七夕

作者: テーム
掲載日:2021/08/20

あなたに届きますように

そう一言込めて

縦長の紙に書き記す

きっと願いは叶わないだろうけれど

そう思いながら短冊を木につるす

明日は晴れますように

明日の夜空には川が流れていますように


晴れ間に光が差し込んでいく

雲の動きが今日は早い

学校が早く終わるテスト期間に

勉強の呪いから少しでも遠ざかりたくて

堤防でぐったりとしている

心地の良い風が吹き

その風で雑草が踊る

何も気にしないお前はいいなと

そいつらを下敷きにしてやった

寝転ぶ私を彼が呼ぶ

「こんな所で何してるの?」

至極当然の疑問に私は動揺する

もちろん質問に動揺したのではない

彼がこんな所にいることに動揺したのだ

一瞬の間が開いた

「ううん、何でもないよ」

「何でもないって、答えになってないだろ」

彼がはにかんでみせる

私は苦笑いを作る

ああいつも何でこんなことになるのだと自分に落胆する

「まあ、テストの結果なんてまだわかんないんだから、そう気を落とすことないって。じゃあな」

そう言って彼は去って行った

私ががっかりしたのはテストなどではないのだと大声で叫びたくなった


短冊が木にぶら下がっている

その数はざっと二十ほどある

この一つ一つに届きそうで届かない思いがあると思うと

少し安心する

私がいっぱいいるのだと肩の荷を木に吊す

短冊がかかればかかるほどに姿勢を低くしていく木は

どんな気持ちでいるのだろうか

勝手に願いを掛けやがってと思っているのだろうか

もしくは願いを懸けやがってかな?

兎にも角にも私は身勝手に

ただの植物にこうして願いを預ける

明日の天気に願いを預ける


恋はいつの間にか落ちているもの

誰かがそういった

確かにそうだった

いつも教室で顔を合わせていたはずだけれど

どうしてか放課後にボールを追いかける姿を見ると

心が高鳴った

心臓の鼓動も速くなる

風を受けて変になっている髪型も

走り疲れ、膝に手をつけているその姿も

声を出して、周りを鼓舞しているのも

何もかもが素敵に思えた

あの日の夕焼けは君しか見ていなかったのだろうと思う

だから私はいつもの君じゃない君を見つけてしまったのだろう


それかは周りを気にするようになった

君がいないかを気にするようになった

良くないことかも知れないけれど

君が話す相手によっては少し悲しい気持ちになったりもした

何もしないでいるのに

一丁前に感情ばかりを動かしてしまう

止められない気持ちとはこういう類いのものをいうのだろう

動かないでいるのは楽なのだけれど

心と体が乖離していく感触がじわじわと伝わってきた


短冊は少しの風で飛ばされてしまった

私の願いなどそんなものでしかなかったのだろうか

よくわからなくなった

けれどあの日の曇り空は鮮明に覚えている


それぐらいの結び方でしかなかった

それぐらいの距離感でしかなかった

それぐらいの・・・

状況を整理して、言い訳を言おうにも

どうしてもまとまらない

止まらない感情というのはこういう類いのものをいうのだろう

一秒間に一歩足を踏み出す

後ろから来る達に

一体何人に先を越されたのだろうか

俯いている私には何もわかりはしなかった


背中を押して欲しくて

あの木に願いを吊した

後悔はない

あの日吊した時の私と

今の私との思いは変わってはいないから

来年の七夕

私はきっと同じ願いを書いているのだろうと思う

そしてまた駄目なのかも知れない

それでも来年は晴れますように

そう思って、晴れた空を少し睨んだ

終わり

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