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「I my me mine」【ショートショート】

作者: カブトムシ(昆虫ゼリーP)

 私はワタシを好きになった。


 それはある視点から見ればナルシストと呼ばれるものなのかもしれないし、ある視点から見れば単なる日常生活の中で生まれるごくごく普通な恋愛観なのかもしれない。


 ワタシは私の瞳を、唇を、髪を備え付けの三面鏡越しに透かす。あぁ、今日も大変うつくしう。麗しく見えるお人形のような自分の輪郭を指先でなぞりながらとくに生産性も普遍性もない言葉を呟いた。


 わたしは時々、自分が自分では無いのではないかとふと疑心に包まれるときがある。ワタシは単なる操り人形だし一人複数役のしがない女優だ。なんて、絵空事を包みこんだ暗鬼は大気圏を越えて空気も感じられない状態でいつも風船のように割れてなくなる。ような気がする。


 わたくしが綺麗だと思えば、ワタシも綺麗だと思うし、私が汚ならしいと感じれば、ワタシも汚ならしいと感じてしまうだろう。


 残された理性だって、蜜を垂らした唇だって結局は言いたいことをただ言い連ねているだけなのだ。 

 そこに価値観などないし、当然だが倫理観もない。だから別にいいだろう。わたしを愛せることができても。溢れ出る濁った甘い蜜をわたくしが啜っても。


 だってワタシは私と私だもの。


 だって私は私とワタシだもの。


 ワタシ。私。ワタシ。わたくし。わたし。



 さあ、ワタシの中から湧き出る人影は幾つ存在するのでしょうか。


(終)



※ここから先はエピローグです。




おまけーエピローグー


 わたしが愛を伝えても。私は許し、ワタシは許さず、わたくしは許し、私は許してはくれない。


 ワタシが蜜を舐め取っても。私は甘いと言い、ワタシは酸っぱいと言い、わたくしは苦いと言い、わたしは美味しいという。


 これは全てお人形。麗しい麗しいまるで生身の人間のようなお人形。


 種類は沢山あるんだ。それこそ、人の持てる人格の数以上に。



 さあ、今日の私はどのわたしがいいかな。

 

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