武器屋
濃い茶色の木で建てられた店の中に入ると、そこでは沢山の武具が売られていた。
「らっしゃい。何が欲しいんだ?」
太く低い声で男が聞いてきた。その男の腹はふくれていて、髪はくせ毛。手入れもしていないようだ。そして酒臭い。
「防具です」
「身軽な方がいいか?」
「はい」
男は聞き終えると店の奥に入っていった。
俺の戦闘スタイルは素早さを生かしたものだから、身軽な方がいいと思った。
少しすると、男は手に金の装飾が施された銀製の防具を持ちながら、戻ってきた。それは明らかに手持ちのお金では買えそうにない程、立派なものだった。
「こんなに高価な物は買えません」
「ただでやる」
「そんな、どうしてですか?」
「俺が信託を知らないと思ってるのか?お前さん勇者だろ?直接戦えないからな。こういうところでサポートしたいのさ」
俺は男の目を見ながら、ありがとうございますと答えた。
勇者という存在が期待されているのは理解していた。だけど、実感したのは初めてだった。
俺は救わないとならないんだ。こんな人達を。魔王という、悪の根元から。
「ブレーバーって呼んでもいいか?」
「はい、もちろん。あなたのお名前はソーダですよね?」
「そーだ。この店は武器屋のソーダって呼ばれてるぜ」
「ソーダと呼んでも?」
「ああ、もちろんいいぜ。楽に話してくれ。堅苦しいのは嫌いでな」
「じゃあ、ソーダ。俺はそろそろ行くよ」
「またな、ブレーバー。お前さんの幸運を祈っとくぜ」
良い店だった。人の暖かさを感じた。また来よう。
* * * * *
日が沈み始めましたねぇ。暗闇は魔族をより凶暴に強力にしてしまいます。まだ、戦闘経験の少ないブレーバー君には、今から始まる戦いは辛い物になるかもしれませんねぇ。
うふふっ。うふふっ。うふふっ。
* * * * *
日が沈む。
俺は宿屋で休んでいた。距離は長くは無かったが、初めての一人旅で大分疲れている。ボロいベットに横になり、そっと目を瞑る。
ガンガンガンガンガーン。ガンガンガンガンガーン。目を瞑ってから、間もなく魔族の侵入を知らせる鐘の音が聞こえてきた。
俺は勇者だ。救わなければ。閉じていた目をかっと見開き、貰いたての金の装飾が施された銀製の鎧を身につけ、机に脇に置いていた剣を右手で掴むやいなや、飛ぶように、騒ぎの方へ向かって走り出した。