プロローグ
「…最悪だ」
俺はとある運搬会社に勤める平凡な男。……いや、平凡じゃないのが一つあったな。
それは、家というか家系である。
うちの先祖は大体妖怪、神、妖精、特殊な人間など、様々な種族だったという。そして、みんな それぞれの能力を持っていた。
まあ、つまり子孫の俺たちも能力を持っている。ただ、俺以外、血が薄くなったからか、能力が弱くなって出たらしい。能力は東方の様な「~程度の能力」のようだ。
俺はどうやら先祖返りというやつらしい。今更だが、うちは神社をやっている。が他にやることもないので道場も営んでいる。ただ、家族の鍛錬の時は能力ありの模擬戦だ。
俺は昔から心が読める能力を持っていたため、家族がみんな俺を使っていた。
あ、別にDVにあっていたとかではなく、俺は普通に愛されて育った。
ただ、心を読めるというのはかなり便利なもの、俺も社会人になった時なんで家族が俺をよく使ってたのか分かった。
例を挙げると、新人の頃に一部いじめが起こっていた。だがそれはターゲットを俺に変えるようにするための罠だった。
正直、あの頃は傑作だと思った。こっちは心を読んで分かっていたので気にしなかったが、さくらをやっていた人たちが困惑するようにこちらを見てきた。
それでもあきらめなかったあの人たちは俺の悪い噂を流そうとしたので社長に今までしてきた不正の数々を証拠とともに直談判したら即クビになり、うちの会社には平和になった。
なんでも、昔からの問題児で不正を隠すのがうまくなかなかクビにできなかったという。
社長からは感謝され、何かお礼をということで俺は早めに帰りたいので夜の運搬はできる限りなしでお願いしますとダメもとで頼むとOKだという。
脱線したが、俺はさっきの話の通り夜勤はできる限りなしになった。がもちろんそれはできる限りだ。
今回初めての夜勤でとにかく眠い。
と考えていると、ある心が聞こえてきた。愚痴の様な心……やばい。
急速に眠気が覚め、俺はハンドルを限界まで回し、ブレーキを踏んだ。
予想通り目の前の横断歩道に疲れ果てた人が渡っていた。あっちは驚きで固まっていたが、俺が急旋回したので倒れた。
そりゃそうだ、運搬業者ということは俺が乗っていたのはトラックである。
――まったく、これじゃあテンプレの逆だな。
俺はトラックの中で潰れながら、そう考えていた。
おれは夢を見ていた。記憶にないはずなのに懐かしいと感じる。直感で分かった。これは先祖の記憶…
そして、その記憶が終わるたびになにか力が俺に入って……いや、何かが目覚める感じだ。
長い長い、夢を見た。
「……知ってる天井だ」
目が覚めた。そこは病院ではなかった… 家だった、しかも、若返っている。
原因はもうわかっている。
多分、死にかけで俺の能力が他にも覚醒したんだろう。
……俺、かなり強化されたみたいだ。