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転生トラック職人

作者: 猫丸 鳥太

転生トラックで転生した人じゃなくて轢いちゃった人はその後どうなるんだろう?人生真っ暗?テンプレとはいえなんか可哀想だな……と思ったのでなんとなく職人にしてみました。

 転生トラック職人の朝は早い……ということもない。出番によってまちまちである。

 ある時は朝の通学・通勤時間帯。またある時はお昼時。そしてまたある時は夕方から夜(深夜帯の場合も含む)にかけての下校・退勤時間帯。そのいずれかの時間帯に転生トラック派遣会社により職人が派遣されるのである。

 自身の担当派遣先が決まった職人は、配られた資料を熟読する。――ちなみに資料には実行日に転生者がとる行動や周りの状況などが細かく記されているらしい。


 そして、担当が決まった転生トラック職人達はそれぞれの担当地区へと赴き、転生者及び実行日時、現場周辺などを入念に確認する。間違った人を轢いてしまっては大変だからだ。



 この仕事をただトラックで突っ込むだけの簡単な仕事だと勘違いする人間もいるが、実は少し違う。

 転生トラック職人には高度なテクニックや応用力などが求められる。


 何故かというとこの転生トラック、シチュエーションなどが多岐にわたり、そのどのようなシチュエーションだろうと完璧に対応する必要があるからだ。


 例えば『居眠り運転』や『よそ見運転』などが有名だろう。

 しかしこれらは比較的簡単な部類となる。転生者は疲れていたり、不注意などから注意散漫になってることが多い。

 職人によれば、転生者の信号無視や、トラックが突っ込んできていると周りが騒いでいるのにも関わらず、それに気付かずにいる場合が多いのだそうだ。


 しかし簡単な部類と言っても例外はある。稀に転生者が避けてしまうという事態が発生するのだ。

 だが、失敗しても慌てずに再度チャレンジする者や、はたまたどこかへ突っ込み二次災害を引き起こしそれに巻き込ませるという者。避けた先へ別の職人を突っ込ませるなどの二段構えを利用した職人技を見せる者もいる。


 他には『誰かを助ける為にとび出した結果、転生者がぶつかる』というものもある。

 助ける相手は転生者の友達だったり大切な人だったり、猫や見知らぬ子供だったりと多岐にわたる。

 そして助けた相手が実は○○だった! だから助けてくれた君にはこうこうこういう特典を付けてあげよう! ということもまれにあるらしいが、それは職人達にはまったく関係のない話。


 それらとは別に職人達の間で難しいと言われているのが『○○からとび出してきた転生者』とぶつかるというものだ。これはいかに職人といえども難しいらしい。


 理由は『転生者のとび出すタイミング』である。どこから飛び出してくるにせよ、遅くてもいけないし、早すぎてもいけない。適切なタイミング、及び速度で突っ込まなくてはいけないが、その適切なタイミングを教えてくれるものは何もない。こればかりは職人による勘がものをいう世界だ。

 よってこの依頼をこなせるのは、あまたの転生者を転生させてきたベテランの職人たちだけが担当できるのだ。



 転生トラック職人の役目は転生者にぶつかってからも続く。

 そのまま逃げるという指示が出る場合もあるが、救急車を呼んだりすることもある。だからといって転生者が助かったりはしないが……

 職人達は転生者を轢いた事によって生じるあらゆる後始末をこなしたのち、帰還命令が下される。

 そして帰還したあとは今回の報告書を提出し、そこでようやく職人たちの長い仕事は全て終わるのだ。



 異世界転生がブームになってからというもの、職人たちの仕事量は倍増したと言ってもいい。

 テンプレと称されるほど使い勝手が良いので依頼がどんどん入ってくる。

 時には「これはちょっと……」と思われる依頼も入ってくるのだが、職人たちに断るという選択肢はない。


 職人たちは言う「確かに辛い仕事ですが、大事な役目なので」 そういって苦笑いをこぼす。



 今日もまた新たな転生トラックの依頼が入る。依頼が入り続ける限り、職人たちもまた転生者達を転生させ続ける。転生者たちの新たな旅路を祈って……

 





職人もいいけど、向こうの過失で轢いてしまい人生終わった後、死んでしまった主人公を恨みながら自分も死ぬ。それから何らかの形で自分も主人公の転生した世界に転生した事を知った運転手が人生狂わせた主人公に復讐する話とか読みたいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 過失ではなく、むしろ本来の主人公達をひいてしまったがために、被害者となるかもしれないトラック運転手。 本来なら語られることのない立場のキャラの話は、とても魅力的で、素敵だと感じました。 …
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