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天使の羽  作者: ミクマリ
4/5

再会

沙紀の職場は新宿にある

京王線で通っている

毎朝の通勤電車、世の中でこんなに嫌なものはない

人間が荷物のように押し込まれている車内

これは異常、殺人的な光景

沙紀は辛うじて掴まる所を確保し

倒れないようにバランスを保っていた

昨日、痴漢された。

こちらが身動き取れない状態でお尻を触られた

怖くて声も出せずに只管我慢し

身体を固くして時が過ぎ去るのを待っていた

心の中では嵐が吹き荒れ

世の中の全てを破壊したい衝動に駆られていた

想像上の沙紀は痴漢の手首を捻り上げ

うつ伏せになった相手の背中を鋭利な刃物でめった刺しにして

血だまりの中で高笑いしていた

だが現実では身体を固くしてお尻を左右に振り怖いまま我慢していた

卑劣な痴漢者に対して僅かな拒否反応を示すことしか出来ないでいた自分

その事を思い出し悔しいのと情けない感情で急に腹が立ち涙が出てきた

身体が固くなり沙紀の目に映る光景が徐々に赤色に変化してきた

(死ね、死ね、みんな死んじゃえ、、、、、、、、)

沙紀は呪文の様に小さく唱えだし身体が小刻みに震えてきた


(次は新宿、新宿)

車内アナウンスが流れてきて沙紀の思考も途絶えた

現実に引き戻された

漸く目的駅まで到着し非人道的な満員電車から解放された

改札口を出て夢遊病者のような足取りでのろのろと

視点も定まらない沙紀は前方の人込みから声をかけられた



「沙紀ちゃん、おはよう」

目の前の女性が笑顔で声をかけてきた

沙紀の知っている女性である

「あ、、、マリさん、おはようございます」

沙紀もぎこちなく小声で挨拶を返した

彼女の名前は大庭マリ、占い師

今年の夏に東京癒しフェアで知り合った女性

タロット占いの店を夫婦でしていた

沙紀は何気なく癒しフェアの祭典に入り

目的なく各店舗を見て回った

そしてマリ夫婦がしている店の前で声をかけられた

癒しフェアは客引きするような場所ではない

初めて店舗側から声をかけられた

大庭裕也・マリ夫婦

「お嬢さん、お探しのものは見つかりましたか?」

笑顔で声をかけてきたのは大庭裕也

アロハシャツを着た細身で優しい声をした男性

沙紀は戸惑った

いきなり初対面の人から声をかけられたのだ

しかも癒しの祭典、占い店舗のスタッフに、

「いえ、特に探しているものはありません」

沙紀は警戒心を隠さず用心した声色で応答した

「そうですか、私どもはハワイアンタロットの占いをしている店です

うちの占い師が貴女を一目見て興味を持ちました。

お時間が宜しければ是非寄って行きませんか?

勿論、無料です」

にこやかに人懐っこい笑顔で話しかけられた

街や商業施設での占いの店から

このように声をかけられたら即お断りするけど

この癒しの祭典はお祭り、余興としては面白そうと

その時は判断し、促されるまま店舗に入る事にした

後から考えてもこの行動は沙紀自身の衝動性を抑えられない病気の症状だと自覚している

赤のカーテンで仕切られた小さな個室

そこに紫の地に白の花をデザインしたムームーを纏い

黄色い花飾りを首に巻いた女性が座っていた

艶のある長い黒髪、肌の色は小麦色にやけており

大きな眼と鼻筋の通った顔立ちアジア系美人


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