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天使の羽  作者: ミクマリ
3/5

漂流

「おはようございます、今日も心地よい朝ですね

良い一日をお過ごし下さい」

竜馬さんからのツイッターDMが毎朝、律義に来る

特に秘密の内容ではなく挨拶だけだが、

ツイッターの表では私と竜馬さんと由衣ちゃんっていう10代の女の子と

3人でよく会話している

「沙紀さんはOLさんなのですね、お仕事大変ですね」

「特に大変じゃないよ、由衣ちゃんは遊べる時に遊んだ方がいいよ」

「僕は社会人になってもいつでも遊んでるよ、

その代わり仕事もしっかりやってるもんね(自慢)」

「そうなんだ!屁の河童?(笑)」

ん?なんや、なんかデジャヴ?――



ツイッター世界では楽しいのにリアルは嫌な事ばかり、、、

仕事が終わり自分の部屋に帰ってきた沙紀は疲労困憊していた

「やっぱり自分の部屋が一番落ち着く、、、」

沙紀にとって一人の時間は必要不可欠である

一人の静かな時間を持てないと精神がかき乱されて

心の均衡を失い大きなダメージを被る

キャンドル式アロマポットにローズウッドを数滴たらして

浄化された自分の部屋に甘くて清々しい香りを充満させる

黒衣装されたテーブルの上に置かれた水晶とタロットカードの横には

小皿にて神岩戸神社で購入した清め塩を綺麗な山型に盛る

照明を消して天上を満天の星空に変える

そしてパワーストーンで作ったブレスレットを腕に嵌めて

心の中で守護神ミカエル様にお願いをする

「ミカエル様、どうか私をお守り下さい」

心の鎮静化を図る努力をして邪を跳ねのける儀式だけは整える

沙紀は毎日家に帰り自分の部屋に居る時はこの儀式を行う

沙紀は医者に慢性疲労症候群(ME)と診断されている

部屋を風水的に浄化してアロマ趣味を持ったのも精神の安定を図る為である


沙紀はエンパス体質

エンパス(共感力)とは他人のエネルギーに影響を受けやすく

他人の感情を直感的に感じて自分のものの様に受け入れる事が出来てしまう体質

エンパスの人は他人の望みや願望思考やムードによって無意識に影響を受けてしまう

単に感受性が非常に高いというだけでなく、感情に限定された能力でもない

肉体的な感受性やスピリチュアルな衝動、そして他人の動機や隠された意図まで知る事が出来る能力

慢性的な疲労感や環境に対する過敏性もある

外部要因の影響である事も多いが自分自身が原因である場合も多い

つまり他人のカルマや感情、エネルギーが蓄積されたこの世の中を

引き受けて歩いて行っているようなもの

人の多い場所に圧倒され

他人の感情を自分の感情のように感じる

エネルギー・バンパイヤやその他の他人から感情を受け入れ過ぎてしまい

その結果、エネルギーを使い果たしてしまい不眠症と消化不良、腰痛の持病がある

特に消化管は自分でも危ないと危機意識を持っている


今日も職場のトイレで嘔吐した

これ以上は持たない、、、

太陽神経叢にあるチャクラは腹部の中央にあり感情の座として知られている

エンパスが他人の感情を感じるのはこの場所である

職場で嫌な事がある度にこの繰り返しである

呪術師のような部屋で過呼吸発作に襲われて漸くここまでは出来たが

もう躰が動かず沙紀はベットに突っ伏してしくしく泣いているだけだった

涙が出てきて止まらなくなった


今日の出来事を反芻してみる

沙紀はこの仕事を始めて3年目

先輩と後輩の板挟みになり今日もとても疲れている

女社会は過酷

仕事内容よりもグループ同士のいがみ合いに毎日、疲労困憊している

お風呂も夕食を取れない精神状態

なにもする気が起こらない

仕事から帰ってきた沙紀は頭と身体が一致しておらず鬱になっていた

沙紀は争いが嫌いである

人に強く言えないし自己肯定感も低いから両方のグループの板挟みになる

沙紀が仲良くしている後輩の女の子が

違うグループの先輩に目を付けられ

今日も些細な事で強い叱責を受けていた

相手を思いやっての注意ではなく

気に入らないグループの相手の精神を壊してやろうとする悪意

醜いモラハラで人格攻撃

「どういう育ち方したの?なんでこんな事が出来ないの?」

沙紀はエンパス体質である

後輩の女の子は泣きそうな顔をして我慢しているのに

沙紀の方が泣いてしまった

場の空気の悪さ

(あの子はいつもそう、めんどくさい子ね 笑)心の声が聞こえてくる

相手の感情が手に取るように分かる


エンパス体質、つくづく沙紀自身もめんどくさい体質だと痛感している

そんな沙紀には天上界と通じている自負がある

ワンネス体験から沙紀は5次元意識体と繋がったのだ

沙紀は大天使ミカエルの存在を身近に感じている

私は天使に守られている

いつも天使が私の側にいる


天使は物質的な世界ではなく霊的な世界に属するが

しばしば人間の目に見える形で現れたりするとしている。(日本正教会)

自由主義神学リベラルでは天使は擬人的表現であるとも捉えられ

天使が実在するとは必ずしも考えられてはいない

一方、福音派では聖書は天使の存在を当然としているのであって

人格をもった天使が存在する事は聖書の教理であると信じられている


沙紀は雲を見ては天使の姿に見え、部屋に羽根を見つければ天使の羽根だと認識する

満天の空を見て突然思い出したのは五次元の意識体が沙紀に入ってきたからである

そういう運命だったのであろう


沙紀は科学的にそういう現象を説明した脳科学に心理学がある事も知っている

(シミュラクラ現象)

人間の目には3つの点が集まった図形を人の顔と認識されるようにプログラムされている脳の働き

(パレイドリア)

心理現象の一種。視覚刺激や聴覚刺激を受け取り普段からよく知ったパターン

本来そこに存在しないにも関わらず心に思い浮かべる現象を指す

雲の形から動物、顔、物体を思い浮かべたり、月の模様から人や兎の姿が見えてきたり

録音した音楽を逆再生して速く/遅く再生して隠されたメッセージが聞こえてきたりと

いうものがある

意識が明瞭な場合でも体験され対象が実際は顔でなく雲だという認識は保たれる

ランダムデータの中に何らかのパターンを認識するアポフェニアの視覚的聴覚的事例

これは壁のシミを見て人の顔に見える

不思議な事なんてこの世には無いと3次元的解釈である

実際に経験した人間にしか実感はわかないし人に説明は不可能

それは次元の違う事象であるから、

沙紀はいきなりアセンションした。

悟りを得る為に厳しい肉体修行をしている求道者ではなく

昨日まで普通に社会で仕事して平凡に生きてきた女性がである

(アセンション)

物質世界の三次元から新しい意識の次元に向かって上昇していくプロセス


沙紀に飛び込んできた意識体は

4次元を飛び越えて直ぐに5次元意識が沙紀の内部に語りかけてきた

次元とは場所ではなく意識のレベル

3次元とは一般的に物理次元と解釈されるが物体の世界だけを意味するのではなく

3次元も意識の状態である(とても限定的で制限が多くなる)

3次元に暮らしていれば、これが唯一の現実だと思い込んでしまいがちだが

その時点でどれほど限定的な考え方を強いられていることになる

3次元とは頑固な信念と不自由なルールで生きており

固体同士はお互いに合体したり通り抜けたりすることは出来ないと考える。

すべては重力の影響を受け、物体は消失することなどなく、他の人の思考を読むことも出来ません。二元論に対する強い信念があり、ジャッジメントと恐れは至るところで生まれる


4次元とは、いわば3次元と5次元を結ぶブリッジであり

4次元を抜けていく中で5次元への準備をする

多くの人は実感のないまま4次元を過ごしているが

一般的に喜び、愛、感謝を経験する時

私たちは4次元の意識を経験していると言われる

スピリチュアル・アウェイクニングやハートが開く経験をしている時の感覚

心が静かでクリアになっているときの感覚も同様

4次元において、時間はもはや直線軸上には無く

絶え間ない現在の感覚があり過去や未来には意識が行かなくなる。

時間は柔軟であり拡大・収縮することが可能

現実化は4次元ではずっと早くなり考えただけで素早く現実になる。


5次元とは愛の次元と言われ、完全にハートで生きる感覚

5次元にシフトし、そこにとどまるためには、

精神的・感情的な問題は全て解消しておく必要がある

恐れ、怒り、苦しみ、敵意、罪悪感などは、この次元には存在しない

5次元での現実化はもはや瞬時

考えた瞬間それはそこにある

人々はテレパシーでコミュニケーションし、

人の感情や思考を簡単に読み取ることが出来ます。

時間の感覚は劇的に異なる

夢の中で5次元を訪れる人も多いでしょう。


この躰は胃腸障害と腰痛、そしてエンパス体質とボロボロ

今無事に生きている事だけでも奇跡である

私は守られている


沙紀は無宗教である。

家は浄土真宗曹洞宗だがお墓参りに行く時以外は意識した事が無い

更に宗教に対しては強烈な嫌悪感を持っている

これだけ宗教に対して嫌悪している沙紀であったが

20歳の時に訪れたワンネス体験によってスピリチュアル世界に埋没し

天使の存在を身近に感じている

キリスト教徒でもないのにと

のち程、沙紀自身も笑いながら友達に話した

沙紀の宗教嫌いは祖父からの影響と生まれ育った環境要因が大きい

祖父が祖母と結婚する時に祖父の母方がその宗教に入っており熱心な信者であった

祖父は祖母と結婚した後

その学会から退会する事に苦労した

祖父が生まれ育った環境はその宗教信者がその土地に密集しており

粗暴な人が多い地域だった

昭和の時代までは被差別的部分もあったと聞くが

表には出ずに闇に葬られた事件は平成が終了しようとする現在では

益々明るみになってきた

不幸な境遇の人に甘言を弄して信者を獲得するそのやり方

宗教に心を支配された人は自分の判断が出来ない人格を作り上げる

そして自らを守る為に他者信者の獲得に翻弄する

まるで不幸の手紙のような不の連鎖である

戦後の無秩序な世相でその人達の暴力的強奪とリンチを日常的に目の当たりにしており

その宗教も信者も嫌悪していた。時代と土地の二つの地縁が祖父の宗教嫌いを作り上げた

権力と金儲けを現世での幸せと定義し

宗教を政治に結びつけ選挙時になると親しくもないのに

まるでノルマがあるがごとく、なりふり構わず羞恥心も無く知人に電話をかけてくるその団体

信者を獲得する事で天上界に行けると謳っているが、要は上納金が安くなるので結局は自己の現世利益の為に動いているねずみ講のようなシステム

現世利益を追い求めお金と権力を希求し拒否すれば地獄に堕ちると呪いをかけてくる信者

公職選挙法に違反しているにも関わらず貴方の事だと盲信し他人様を囲み糾弾し

愛の宗教だと嘘ぶく教義

一神教の愛の宗教も排他的で神に祈れば他宗教を殺戮していった過去の歴史が雄弁に語っている

仏教も元は同じなのに宗派を分裂しては罪も無い人を巻き込んでの戦争を繰り返している


瞑想に耽っていると内省して次々と思いが浮かんでくるが

キリがないのでもう終わろうと考えた

今日は早く寝なきゃと思い沙紀はベットから起き上がった

漸くお風呂に入って食欲ないけど食べる決意もした時

躰を動かして今まで意識してなかった周りの異変にも気がついた

今夜はよく犬の鳴き声が聞こえてきたことを、



夜の閑静な住宅街に見るからに不審者風の男が沙紀の家まで来ていた

その男は目当ての沙紀の家を見つけたが同時に驚愕して溜息をもらした

「な、なんちゅう家やねん、、なんで結界張ってんねん、、、」

夜の秋風が心地良い10月

綺麗に舗装されて車一台通るのも余裕ある道幅

計画的に作られたモデルシティ

ここに辿り着くまでに主婦と思われる女性3人とすれ違った

女性達は男を一瞥した瞬間急いで視線を外した

あまり顔を見ない様に不自然な緊張が走る、奇異な目で見る事が憚れる程の容姿

髪はぼさぼさでバンダナをしている。そして頭上の真ん中だけは禿ている

その下には間が抜けたような不自然に離れている目があり

団子鼻で口も大きく締まりがなくだらしない

首は太く短く寸胴で小太り体型、地味なポロシャツとジーンズで運動靴も汚れている。

目立つのはその太くて短い左手首にはパワーストーンのブレスレットが3つ重ね着けている。雰囲気から品の無いオーラを醸し出している中年男

夜の闇からその男に向けて声がかけられた


「おい、ブサイク!」

「誰がブサイクやねん!!!!」

太郎丸は誰だかわからない相手に反射的に突っ込んだ

太郎丸は夜の闇の中、目を瞠り声の主を探したが見つけられず焦っていた

「姿見せろや!この卑怯もん!キッショイんじゃよ!」

先程までは煌々とした街灯で見通しも良かったのに今は消灯したのであろうか、

月明かりだけの夜の景観に住宅が並んでいるだけであった。



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