恋に堕ちて
「私はシリウス星出身の20代の女性です。ライトワーカーです。ツインレイを探しています、
宇宙の根元はひとつに繋がっています。私達はこの世で生を受けたのは今の時代に愛を伝える為です。
ワンネス、あなた達も私も元はひとつです」
パソコンのキーを叩く度に縋るような想いで言霊を伝えている自覚があり自然と涙が出てくる
沙紀は今日もネットでメッセージを送っている
ライトワーカーとして「人々にスピリチュアルな世界を伝える」という使命を果たす為に。
ライトワーカーとは直訳すると「光の仕事人」
ライトワーカーとは愛の反対の「怖れ」や「不安」から
地球の人達を助けるために自ら選んで生まれてきた人達のこと
ライトワーカーは見える世界と見えない世界の架け橋としての使命を持って生まれてきた
ライトワーカーの人生の目的は人々にスピリチュアルな世界を伝えること
沙紀の部屋は過度な装飾品が無くシンプルで常にヒーリング音楽が流している
パソコンの前にはタロットカードのメッセージが壁にピン留めされている
「タロットカード・大アルカナ No:01 魔術師・The Magician」
意味は「意志・手腕・外交」
「これまでにずっと望んでいたものが、あなたに向かって来ています。
すべてが美しいくらいなまでにうまくいきます。
今はあなたの人生の中でも魔法のような時間です!
計画した通りに物事が進むかそれ以上に良いものに発展するでしょう。
この豊かな時間には喜びの感情と充足感に意識を集中させましょう。」
沙紀のパーソナルカラーは黒
部屋は黒色を基本に纏められている
天上には星座を模写した模様が施され月と太陽と星のイルミナティが
星座を表現するかのように一定の規則性を持って配置されている
ベットもカーテンも黒を基本とした呪術師のような部屋
テーブルも黒で其処に水晶とタロットカードが暗示的に置かれている
黒を中心とした部屋なのに陰気な印象を受けないのは観葉植物の存在
沙紀は植物を育てるのが上手く種子から育てあげるのが得意である
部屋にはアロマが焚かれており
浄化された部屋が沙紀にとっては最も強力なパワースポットになっている
おしゃれにもこだわりがあり基本は流行には左右されないので
服も少なくクローゼットの中もシンプルである
観る習慣もないのでテレビも無く
スピリチュアルと占い関連ばかりの本が几帳面に整列された書籍棚
そしてオーディオセット、パソコン、ベットだけである
仕事以外はほぼ外出せず
自分のこの部屋が最も気持ち良い空間である
自分のブログを持ち毎日ツイッターで宇宙から降りてきた言霊を送るのが日課になっている
ブログ更新し、ツイッターにて発信する事は
自分にしか出来ない事だと思っている
沙紀のリアルは世間一般には決して安泰だとは言えなかった
仕事は派遣事務で彼氏も居ない,将来に対しては不安だらけである
年々歳を重ねていく度に焦りもある
来年には30歳になる
だが不思議と沙紀の心は満ち足りていた
脳内麻薬であろう
ネットでライトワーカーとしての使命を伝える事でドーパミンが放出され
思想に支配された脳内からは達成感で恍惚とした歓喜に満たされる
私はライトワーカー、愛を伝えていると、
沙紀は既にこの世の者ではない、妖精だと自覚もある
いつでもシリウス星に帰る覚悟はあるし
早く帰りたいと願っていた
希死念慮がある訳では無いが
子供の時からこの世の生に対しての執着が薄かった
「不思議ちゃん」と他人からは評価される
「自分は人と違う」と違和感があった。
家族から十分な愛情を受けているのに孤独感や寂しさを常に感じていた。
生きる意味や自分の存在について考えていた。
権力が嫌い。無意味な年功序列、ピラミッド型の権威や差別にも敏感
人といるより独りでいる方がリラックス出来る。
20歳の時に霊体験をした
ある日、満天の空を眺めていた時に何もかも思い出した
自分は宇宙と繋がっている事を自覚して涙が止まらなくなった
(ワンネス:ひとつである状態)
「自分がすべて、すべてが自分」
宇宙の一部が自分なのではなく、宇宙そのものが自分だった
「至福感」
自分が広がったと思ったらすべてが自分
自分が愛の中心、自分が平和の中心。
所有するものは何もなく、みんながそれを感じる。
ただ気づきがある、それだけ。
疎外感の反対、一体感とも違う、愛そのもの
全てのものはつながっている、
全てのものとつながっている。
それは共感とか共有するということよりも
もっと深い、愛そのものに直接触れること
沙紀にはこの世は愛で出来ている事を発信していく使命がある
そしてシリウス星出身の同胞と魂の次元で繋がるのだ
沙紀はツインレイを探している
この世で再び魂の再会するのだと夢想している
元々の性分であろう、家族から十分な愛情を受けて素直に育ち
他人からも愛されるキャラクターである
外見も女として恵まれている
何人かの男性からも言い寄られたが別に同性愛者ではないが男にも興味がなく
今まで彼氏も作らず只管、この世が愛で満たされる事だけを願って生きてきた
時々、一般的な女性の幸せコースから外れた人生だったとは自覚する時もある
同級生は早々と結婚し子供も出来て世間的に認識されている主婦の立場を得ているのに
自分は世間とは隔絶された立場に甘んじている
こうして毎日パソコンに向かってメッセージを送り
ネット仲間と文章にて会話をしている
ハイヤーセルフ(自分の魂の高次元の側面)と
データとして蓄積されたソース(アカシックレコード)を手に入れる為に
(ワンネスを知る方法のひとつは自分の個性を表現していくこと
自分らしさを認め、出していき、個性をどんどんを細分化して、
細かいところをどんどん知ろうとしていくこと
人と合わせるのではなく、自分として自分を表現して生きること)
リアルでは難しい
なので沙紀にはこのネット世界が居心地が良い
ネット世界は魑魅魍魎な世界
ある人は自称霊能者、そしてある者はライトワーカー
その他にも哲学者や宗教者にニーチェ気どりの思想を何年も飽きずに
毎日ネットで流している人もいる
リアルでないこのネット世界は虚構世界
本物なら匿名性世界でなくリアルで行動している
なので沙紀もこのネット世界は理性では否定しているのだが
リアルでの充足感が満たされていない状態であるので
この虚構世界に沙紀もいつのまにか生活の一部になっていた
最近、毎日ツイッターで会話している人が居る
その男の人は沙紀の事を長い間、探し求めていたツインレインだと言っていた
年は22歳で漫才師志望、まだ修業中で中々目が出ないが荒んだこの世の中で
笑いで多くの人を幸せにするといつも自分の夢を沙紀にツイッターで語っていた。
スピリチュアルに興味があり講習会にも何度か参加している。
タロット占いも出来て霊感も強いとのこと
沙紀にとって重要なキーワードが「無償の愛」
魂の伴侶である相手に対してはごく自然に無償の愛を捧げたいという気持ちが生まれる
相手を思いやった行動が生まれ、その見返りを求めることはない
たとえ相手が経済的窮地に立っていてもツインレイであるならそんな事は厭わない
沙紀はスマホ着信に気がついた
またあの人からツイッターDMが来ていた
「今日は漫才のオーデイションに行きました。惜しいとこまで残ったのですが落ちました。
夢を掴む事って大変ですね、今日の悔しさを糧にして明日からも頑張ります」
沙紀は可哀想にと思った
こんなに努力しているのに今回はダメだったのね、、
「頑張って下さい。私も陰なりに応援しております♡」
河童妖怪の太郎丸はムカついて歩いていた
「なんやねん、あの爺腹立つわ!、元人間の分際で河童妖怪のワイに説教しやがって!
何がやる気が見られへんねん!お前の台本にセンスないやんけ!
最初から人間なんかと漫才なんてやる気なかったわ!」
太郎丸にとって最も癒される場所は多摩川の岸辺
そこで腰を降ろして怒りを鎮めようとしていた
「こんな時に癒されるのはワイの沙紀ちゃん」
スマホでツイッター見ながらニコニコしていた
他人から見ればとても不気味な光景に映っていた絵面
ブサイクな中年男がスマホ見ながら独り言を言い
ニタニタしている姿は気持ち悪い
「おお!沙紀ちゃんから♡マーク来てるで!ワイと沙紀ちゃんはツインレイやねん、愛してるで!」
沙紀ちゃんの住んでる所は同じ東京、アイコンも自撮りで分かっている
場所もだいたい見当がついてる。
今度こっそり見に行こうかなと妄想を膨らませていった
これが匿名性ツイッターの怖い所である
こうして嘘で固めたツイッター世界で
妖怪が人間の女の子にストーカーする心理状態になっていく