なんでお前と漫才しなアカンねん!!!
はい、どうも!
僕らの名前は「きゅうりたんズ」で~す!
僕ら若手でしてね
これから頑張っていかなアカンなって思ってます
すっかり涼しくなってきたよね
君は秋の食べ物で何が好きなん?
「うどん」
それは秋の味覚とは言わんよね
たとえば秋といえば
秋刀魚や栗や松茸とかあるよね
秋と言えば?
「かゆい」
うーん、僕の言ってる意味、
分かってないようやね(笑)
それは君の悪い癖やと思うよ
人の話しはちゃんと聞かなアカンよ 笑
「自分、人ちゃうし、ゴキ虫やん!」
誰がゴキ虫やねーん 笑
「はい、もういいよ、次のコンビ入って来て」
無慈悲に言い放たれたその言葉に頭の中が真っ白になった
強面の審査員5名に囲まれて1分で下された評価
ここは若手芸人オーデションが行われている雑居ビルの一室
奥で次の出番を控えてるコンビの殺気が伝わってくる
早く退けと、、、
新宿歌舞伎町は昼間も夜と変わらず猥雑で独特な街である
まだ残暑の厳しい9月
裏通りの喫茶店で男二人が落胆して座っていた
もう今日は夢を語る事も出来ず
世間の厳しさを嫌という程思い知らされた。
敗北感いっぱいの負け犬オーラを全身に発しながら
沈鬱な顔をした男二人が向かい合わせになり珈琲を飲んでいる
「お前が悪い、、」
黒縁眼鏡を掛けたイケメンが相手を見ずにポツリと呟いた
「なんでお前は笑いながら突っ込むんじゃ?、儂が考えた台本がスベッたみたいで気分悪いわ」
向かいで珈琲飲んでる個性的な外見した男がボソッと返した
「おもんないねん」
疲労の色がピークに達してるいるのか
顔色が鉛色となり話すのも億劫そうだった
「なあ」
その男の顔は人間離れしておりビジュアルだけでも笑いが取れる外見である
「ワイ、なんでこんな事してるんや、、」放心状態で呟いた
「何でってお前、儂らはこれからお笑いの世界で天下取るんじゃ、
お前今更何ゆうてんねん!?」
イケメン男は蔑むような声で言い放った
「だから、なんでワイが人間の爺と漫才しなアカンねんっていうてんねん!」
個性的な外見の男がプチキレだした
「だいたい爺さんのネタ古いねん、あんな昭和みたいなネタで笑いとれるか!」
「お前は下等生物の河童やからの、儂の凄さが理解できんのじゃ、
儂も色々大変なんやぞ」澄ました顔をしてイケメンが言った。
他の客から見れば売れない漫才師コンビが相方と喧嘩している模様
「なにが大変やねん!、ワイばっかりしゃべらせやがって!
爺は(うどん)と(かゆい)しか言うてへんやんけ!」
20代前半ぐらいのイケメンの本名は譲介爺さん
冷たい印象を放つ整った顔立ち
鋭い目つきに黒縁の眼鏡。
引き結ばれた薄い唇から細い顎の線が神経質な感じを物語っている。
髪は今どき珍しい茶髪のロン毛だが
チャラい風貌に似合わず哲学者のような雰囲気を醸し出している。
自分の美意識を強烈に持ち
残暑の厳しい今日みたいな日でも
痩せぎすの長身に黒いシャツとスラックスをつけている洒落者。
そして正確に言えば譲介爺さんの魂が乗っ取った他人の身体であり
乗っ取られた若い男はチャラい外見で魂不在だった通りすがりの男。
こんな男の身体を拝借するのに良心は痛まないと
爺さんは気分よく憑依した
この譲介爺さんはあの世に帰る時
百鬼夜行に出くわし余りにも面白いので妖怪と一緒に踊りながら付いて行った
そのまま時間切れとなり帰れなくなったお茶目な爺さん
座右の銘は「人生なすがまま」
もう死んでるのにね
譲介爺さんは妖怪学校の特別講師
妖怪総大将ぬらりひょんと意気投合し
その頭の回転の早さと百鬼夜行を恐れず踊りながら付いてきた度胸を見込まれて
元人間でありながら妖怪学校の教育者に成った変わり者
個性的な外見をして爺さんと漫才しているこの男の正体は河童
名前を太郎丸と云う
頭悪く口も悪く落ち着きなくて直ぐキレて臆病でスケベと欠点ばかり
しかも河童妖怪なのに泳げず毎日頭の皿に自ら水をかけて暮らしている半妖怪
力だけはあり相撲が大好き
変身能力も少しはあるが今の人間の姿は中年太りしたブサイクな男にしか化けれない
妖怪学校の落ちこぼれで出来が悪すぎて何度も落第している小物妖怪
譲介爺さんはこの河童を何故か気に入り
(バカにしやすく直ぐに突っ込んでくる性格が気にいったらしい)
自ら師匠役を買って出て総大将のぬらりひょんに話しをつけた
面白くないのは太郎丸
いくら落ちこぼれでも元人間を師匠とは思えず反感しか無かった
妖怪の本分は人間を驚かす事
なのに漫才コンビ組んでオーデイションに合格するぞと云われ
譲介爺さんが書いた台本で漫才する事になった。
文句を言ったが「お前にはお笑いの才能がある」と煽てられ
面白かったら卒業単位をやると言われたから
太郎丸自身も妖怪の本分である事を忘れて漫才の練習に付き合ったおバカ
その結果がこれで放心状態になるのも無理は無かった
「お前にはやる気が見られん!笑いを舐めるなよ」譲介爺さんの放ったこのセリフで太郎丸はキレた
「なんでお前と漫才しなアカンねん!!!!!」
太郎丸は大声で怒鳴り席を立って店を出ていった
爺さんはひとり残されて
「おい河童、金置いていけよ」と呟いた