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なんでもない一日に、ふと考えてしまった、ただそれだけの、命の話。

作者: 偲瑕しおん

 どの範囲までが命なのか、最近よく考える。いやいや、たまに。

 高校生なんて思春期の真っ直中にいれば当然のように考えるのかもしれないし、あまり深く考えちゃいけないのは百も承知だ。答えがないものは嫌い。

 まず前提として人間には命がある、とする。それは例えば学校で隣の席のAくんや、私のこと嫌ってそうなBちゃん、あと担任の先生にも命があることになる。

 当然、私にもきっとある。いやいや、あるか。前提がある以上どうであっても私にも命はある。

 人間に命があるのなら言うまでもなく動物にも命がある、と教え込まれたので、動物にも命があるとして。じゃあ植物にも命はあると言って差し支えない。

 歩道でリードを付けられて散歩しているワン……犬や、あと呑気に日向ぼっこして眠っているにゃん……猫。ゴミを漁っている忌まわしいクソカラ……カラスとか、或いは生活範囲で身を隠している動物や生活範囲外の動物にも命がある。

 犬に水攻めされている哀れな雑草、彩りと景観のために植えられた草花。花屋で売られている花にも、もう何十年と腰を下ろした樹々にも命はある。もちろんその草木を食べる虫にも、微生物にも命はあると言っていいはずだ。

 命は、ここにしかないのだろうか。

 もし命の定義が感情、理性を有した存在にだけあるのだとすれば、それは人間にしか当てはまることはない、と今は思うしかないか。動物にも脳はあって、もしかしたらあるのかもしれないけれど、ないかもしれない。両極端の一方が正解だとしても、これは動物に聞くしか証明する方法はない。

 或いは植物。脳なんて有していなくとも感情を持つことはあるのかもしれないし、逆も然りだ。確かめる方法は未来の青い猫に託すしかない。みんな大好きにゃん……猫型のロボットならきっと証明してくれるだろう。

 ちょうど話題にあがったけど、ロボットには命はない、というのは通説というか、むしろ一般通念か。鉄や鋼の身体に銅線や銀の詰まった血管、クリーンな電気エネルギーの申し子は人間とかけ離れている以上命はない、と。

 けれどあの青い猫は感情を持っている。無論理性も持ち合わせている。これはさっきの定義に当てはめたとき、確実に命の条件を満たしていて、それは命にふさわしい。

 人工知能は理性の塊のようなもので、感情をプログラムされれば当然人間のようなアルゴリズムをとるのは明白だ。それは、命に違いない。

 別の見方がある。命は美しいという言葉が酷く、またどうしようもなく傲慢なのは言うまでもないけれど。これに人間を当てはめたとき、人間は命を失うことになると思うのは私だけなのだろうか。

 人間は醜い。救いようがない。理性と感情は欲求を抑えたり解放したりするための弁でなければいけないのに仕事を果たさないことが多々ある。

 そうして罪科を犯した人間を、もしくは悪人だと思われている人間を、ないしは悪人だと思っている人間を美しいと思うかどうかと問われれば、私は醜いと答えるし、そう答えた私も同様に醜い。つまり、命はない。

 芸術作品。建造物。宝石。景観。愛情や感情。途方もなく美しいそれらに命が宿っていると形容する人は、自分にもそれが宿っていると思っているのだろうか。ぜひ聞いてみたい。

 命の定義がどこまで及ぶのか、ふと考えるなんて。それは意味のない問答であるのかもしれないから、誰かにとってはつまらない話だろうけど。

 これは私の願望。私は文学、文章、言葉に命があればいいなと思っている。どんな定義下でも構わないから、私の発した言葉に、誰かが述べた言葉に、紙に綴じられた言葉に、どうか命があってほしい。

 幾千も、幾万も、幾億も、幾兆も、幾星霜も、生き続けてほしいと思う。読まれたり、話されたりするたびに言葉は命をもつなんて、とてもいいよね。

 文章を指でなぞって、読む。誰かの息づかいや鼓動が聞こえてくる気がする。

 それは、きっと言葉が生きている証。

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