依頼主
車を走らせること30分、南不動産に到着した。
車を駐車場に止め、俺達が事務所に入るとカウンターの女性が話しかけて来た。
「こんにちは、湊さん、藤宮さん。ご足労いただいてありがとうございます。社長は社長室にいますのでどうぞ。」
「わかったよ。ありがとう、川上さん」
「こんにちは、川上さん」
川上さんに挨拶を返し、俺と麗は社長室にむかった。
社長室の扉を麗がノックすると中から南さんの入室を許可する声が返ってきた。
「ど~も、南さん。湊です。」
「失礼します。湊と藤宮です。依頼の件で参りました。」
「すまないね、湊君に藤宮君。忙しいだろうにこんなに頻繁に来てもらって。」
僕たちが入室し、挨拶をするときっちりとスーツを着た白髪のダンディーな南さんは僕達に謝罪をした。
「いやいや、忙しいのは麗だけですから大丈夫ですよ。こっちとしてはこんなに利用してもらえて嬉しいですよ。」
「湊君そんなんだと藤宮君に愛想つかされるよ。君も大変だね。」
「所長のサボり癖にはなれてますので。」
「そうかい?まぁ、彼に愛想を尽かしたらうちに来たらいいよ、君は優秀だからね。」
「やめてよ南さん。麗がいなくなったら俺精神的にも肉体的にも死んじゃうってば。それより仕事の話に入ろうよ。」
僕が依頼の内容について話すよう南さんに促すと彼は笑いながら話し始めた。
「ハハハ、仲が良いようで何よりだよ。さて、依頼の内容だが新年度の引っ越しシーズンに合わせて入居を開始したマンションで怪奇現象が起きるというクレームが来たんだよ。最初は入居を開始したばかりだからね何か勘違いじゃないかと思ったんだがね、入居者が余りにも必死なものだからね何か大事が起きたりしたら困るから君達に連絡したんだよ。」
「そりゃまた珍しいねぇ、土地に関してはしっかり地鎮祭も行ったんでしょ。」
「ああ、しっかりと行ったよ。だからこそ余計にきみょうでね。」
そう言うと南さんは困ったものだよと小さく呟き目頭を揉んだ。
まぁ、忙しい時期が過ぎて一段落できると思った矢先にこれだもんなぁ、そりゃ疲れるは。
そんなことを考えていると麗が南さんに話しかけた。
「わかりました。詳しい内容につきましてはご本に確認しますので、マンションの住所と問題の部屋の部屋番号、それと住人の名前を教えてください。」
「それについてはこれを読んでくれ。」
「ありがとうございます。料金についてはいつも通りですので、それと契約書はこちらになります。所長、他に何か南さんに確認しておきたいことはありますか?」
「いや、いいかな。まぁ、何かあれば連絡しますんでお願いしますね南さん。」
「了解したよ。それじゃあ、頼よ。」
「りょーかい!」
「承りました。それでは失礼します」
こうして必要事項を済ませた僕達は南不動産を後にして、問題のマンションに車を走らせた。