Story memoryⅩⅠ
・ファイ(シャドウ)視点
…姫様達に、話す為にここに来た。
シャドウではなく、ファイという遠き時代の者として。
(姿はシャドウで安定した)
シャドウ「…『シャドウ』としての記憶が戻ったのは…ルビー。姫様とタンジャ様の娘に出会えたから。
だから、こうして君達の前に僕はいる。…『僕』がけじめをつけ、『俺』として生きていく為に」
フレア「…シャドウ」
シャドウ「…信じられないかも知れないけれど、僕は遠き未来。転生した君達の前に…敵として、立ち塞がる。それも許されないようなことを」
アクア「…本当ですか」
…特に、君の大切な人達。なんて言わない。とても言えない。
シャドウ「…どんなに辛くても、君達はそれを乗り越え強くなっていく。
…それは今も、未来でもね」
姫様を守り僕が死んだ。
確か暴走し僕を殺害した彼も、暴走の原因を追うように病死。良い人だったからな…。
皆がそれを乗り越えるのがどんなに大変だったのか、知ってる。
…今、目の前でも、必死に乗り越えようとしてる人。
シャドウ「…姫様」
フレア「……」
シャドウ「ずっと苦しんできたことを、知ってる。
…だからもう、あの日のことを悔やまないでください」
カーディ「えっ……」
フレア「…シャドウ、貴方は…分かってたのか…」
シャドウ「…」
僕が死んだ後、食事も食べず部屋に籠り何日も泣いていたこと…
──シャドウ…シャドウ…どうして…どうして私との約束を裏切ったの…!!
絶対に生きて帰って来いって言ったのに…何で!?
見えているのに…涙を拭いて差し上げることも、肩に触れることも…声さえも、届かなかった。
何も、出来なかった。
ただ、姫様が荒んでいく姿を見ているしか出来ない無力な幽体となって苦しかった。
そんな時、悪魔の囁きを聞いてしまった。
──…黒き闇…暗黒の書に…魔道書【ナイトメア】に触れなさい…
悪夢の始まりだった。
言われるまま、僕は魔道書を探して表紙に触れた。
自分でも気付かぬうちに、記憶の改竄、心が闇に蝕まれた。結果…
『──…ふ、ふふ……あは、ははっ…あっはははははーッ…!!
裏切り者。裏切り者。そう…僕は裏切り者!
祖国も、サンプロミネンスも、家族も、姫様も…!全部…ぜーんぶ、ぜぇええええ…んぶッ!なにもかも見捨てた裏切った!!
こんな卑怯者…誰も許してくれないよね…ふふっ…あのお人好しなタンジャリーン様も姫様でさえも…だぁれも許してくれないよ…?
ははっ…だったら?死ぬ?あぁ、もうすでに死んでるんだった…あははっ…可笑しいよねぇー!?』
何かが音を立てて壊れ始めた。流れない筈の涙が溢れる度に、もう何も感じない筈の足が床を踏む感覚が強くなる度に…それはひびが入り、ついに完全に壊れた。
『──…僕は裏切り者。国を捨てた裏切り者。裏切り者の影の王・シャドウ。
裏切り者なら、裏切り者らしく最後まで裏切ってやろうじゃないか。
僕はもう…誇り高き騎士でもナイトシェイドの王子でもないんだから…』
ダ レ カ タ ス ケ テ──
シャドウ「…」
フレア「…いつまでも、こんなことをしてても無意味なのは分かっていた。
分かっていた…頭では分かっていた筈なんだ…でも心がついていかなかった…あんなことになるなんて、考えてなかったから…」
シャドウ「…ひとつだけ、未来のことを伝えておきますね」
フレア「えっ…」
シャドウ「…その優しさがあるから、こうして姫様にまた会えた。…救われたんですよ僕は。
そりゃ…性格は全然違って天然で、力もコントロール仕切れないのが殆どで、何かと危なっかしくて…」
フレア「…酷いな」
シャドウ「…だけど、敵対してる僕を暗闇から助けようとしてくれた。どんなに酷い目に遇っても。
僕を光の下に連れ戻し…涙を流してくれたことも。全部、優しい心を持ってる姫様が未来で僕にしてくれることです。
…だから、もう、悔やまないでください。…この時代のシャドウは既に闇の中で何百年の時の眠りについてますが、きっと同じことを言うでしょう」
気が付くと、僕は姫様の手を握って跪いていた。
フレア「……シャドウ…」
シャドウ「……もう、時間が来てしまいました」
フレア「時間…?」
手を離し、すっと立ち上がる。
シャドウ「…お別れです」
フレア「!!……そうか」
もう…『僕』はけじめをつけないと。
だけど、『俺』に戻る前に──
シャドウ「…ありがとう。…『フレア』」
フレア「…!」
『──やっと来たねーぇ。ゲイル、スティーリア』
『ゲイル様。今日は姫様もご一緒なんですね』
『ああ。カーディと遊ぶんだってさ』
『…ねー、しゃどー』
『何ですか?』
『なんで“ひめさま”ってよぶの?
おにーさまや、かーでぃたちはなまえなのに』
『…そういえばそうだね』
『うーん…なんというか、その…』
『…じゃあね、しゃどー、いつか、“ふれあ”ってよんで?やくそくだよ』
『えっ…?』
『あははっ。ちゃんと言ってやりなよシャドウ』
『早いうちに言わないと、フレア様怒りますよー?』
『そ、そんなぁ…』
…遅くなったけれど、ちゃんと約束は果たしましたよ
フレア「…ここでその約束…ズルいぞ…」
シャドウ「…約束は、約束ですから」
フードを被って皆に背を向けた。シーヤに乗り、三人が待ってる場所に向かう。
…タンジャ様も後ろにいるけどね。
タンジャ「…どうだった、フレアと話して」
ファイ「…なんというか、楽になりました」
タンジャ「そう。なら良かった」
ファイ「…はい」
フレア「…」
カーディ「…フレア」
フレア「…カーディ」
カーディ「…驚いたな」
フレア「ああ…。でも、なんだか楽になったきがするんだ」
カーディ「…そうか」
アクア「…さて。話が一段落ついたところで、僕から話が…」
フレア「あ…」
カーディ「い、いや…まだ配りものが…」
アクア「いいから来てください。話がありますから」
二人「「……はい」」




