首つりの呪い
「暑いなぁ」
額の汗を拭いながら、永尾裕二は言った。真夏の日というのに、スーツをビシッと決めて、ネクタイを締めれば、誰だって汗が吹き出てくる。
「ふう、まいったなあ…」
岡村哲也も同じように、汗を拭った。
永尾は岡村の二年先輩にあたり、二人で住宅の補修営業で一軒一軒訪問しては、セールスを重ねていた。
「先輩、今日も厳しいですね」
二人は八軒の家を訪ねたが、すべて門前払い同様だった。
「ああ、早くカモを見つけないと、また課長のカミナリをくらうぞ」
永尾が憂鬱そうに言った。
「でも人を騙すようなことをやって、金儲けをするなんて、何となく気が引けますよ」
岡村が気弱そうに言った。
「それも仕事だ。そうしないとコッチがオマンマの食い上げになっちまう」
永尾は恨めしそうに太陽を見上げた。
「先輩、この家にしましょうか?相当ガタがきているようですし、この家だったらうまくいきそうですよ」
岡村が一軒の古びた家を指差した。
「そうだな。中々いい感じの家だ。営業するのには丁度よさそうだ」
表札には山根淑子という名前が書かれていた。
トントン、トントンと軽く玄関の戸を叩きながら、永尾は大きな声で言った。
「ごめん下さい。住宅の調査にやってきました。山根さん、山根さん」
二三度呼ぶと、家の中からしわがれたような女の声が返ってきた。
永尾と岡村は目を合わせると、にんまりと笑った。今まで二人は、年寄り相手の営業は必ず成功させていた。
「はい、はい、どなたですか?」
人のよさそうなお婆さんが玄関の戸を開けた。
「あ、おばあちゃん、暑いですね」
永尾は人懐っこそうな笑顔を満面に浮かべながら言った。
「あんたらはどなたかね?」
人を疑うことを知らない淑子は、外で汗を流している永尾の顔を見て、気の毒に思った。
「冷たい麦茶でも飲んで行くかね?」
淑子は無防備に二人を玄関口に座らせると、奥に行って、冷たい麦茶を持って戻ってきた。
「おばあちゃんは優しいですね。まるで死んだおばあちゃんのようで…」
永尾はうれしそうに言うと、感激したようにハンカチを目にあてた。
「まあ、あんたのおばあさんは死んでしまったのかえ?」
「ええ、そうなんです。だからおばあちゃんのように優しくされると、つい思い出してしまって…」
永尾の悲しそうな表情を見ると、淑子も思わず同情してしまう。
「おばあちゃんはこの家で一人暮らしですか?」
「そうよ」
「一人だと大変でしょ。力仕事とか、何か僕にできることがあったら、遠慮しないで言って下さいね」
永尾は優しそうな声を出して言った。
「ありがとう、その時は頼むわね」
淑子は人の親切を素直に喜んだ。
「ところでこの家は建てられてから、どの位経っていますか?」
「そうね、もう三十年くらい経つかしら」
「結構年数が経っていますね。一度土台とか天井裏とかを調べてみた方がいいですよ。いつ地震が起きて倒れるか分かりませんからね」
永尾は不安そうな顔をして家を見回した。
「そうかしらね」
淑子も同じように見回した。
「一度見てみましょうか?」
そう言うと、二人は立ち上がって、上着を脱いで、天井と床に手分けして調べ始めた。
ゴンゴンと金槌で叩く音が、ひっきりなしに上と下から聞こえてきた。
一時間後、永尾は淑子に言った。
「おばあちゃん、相当ガタがきていましたよ。アチコチ調べて、修理するのに手間取って…」
永尾は汗を拭きながら、微笑んだ。
「そう、それはご苦労様」
淑子は感謝の気持ちでいっぱいになった。
「おばあちゃんに喜んでもらえてよかった。私たちも仕事のやりがいがあります」
永尾はそう言いながら、淑子に書類を渡した。
「えっ、これは何かね?」
淑子がメガネを取り出した。
「こ、これは…」
淑子は百万円と記入された請求書を見て呆然とした。
「本当は百五十万円請求しないとダメなんだけど、おばあちゃんは優しくていい人だから、五十万円も値引きをしてしまいました。会社から怒られるけど、おばあちゃんのためだったら、そのくらいは平気ですよ」
永尾は平然とそう言ってのけた。
「あんた、そんなことを言っても、こんなお金払えるわけがない」
淑子は年金暮らしで、毎日が生きていくので精一杯だった。急に百万と言われても、到底払えるものではなかった。
「それは困りますよ。私たちにただ働きをさせたいのですか?ひどいなあ、おばあちゃんがそんなにむごくてあくどいことをするなんて、絶対しないと信じていたのに…」
永尾が悲しそうな顔をした。
淑子は何も言えなくなって、ぶるぶると震えていた。
「あんたら、人を騙すようなことをしおって…」
「人を騙すなんて、人聞きの悪いことを言わないで下さい。僕はおばあちゃんが喜んでくれると思って、親切でやったのに…」
永尾は精一杯の悲しそうな顔をしてみせた。
「まあ、おばあちゃん、すぐにとは言わないから、今月末までに百万円を用意しておいて下さいね。そうしないと、僕たちがそれを払わされるんですよ」
岡村が言葉は丁寧だが、凄みをみせた目で睨みつけた。
「そんなことを言われても…」
淑子は絶望のどん底に突き落とされたような気分だった。
「頼むよ、おばあちゃん」
永野は淑子の肩をトントンと軽く叩くと、出て行こうとした。その後姿に向かって、淑子は声を振り絞るように叫んだ。
「ちょっと待って!あんたらがどうしても百万円を取立てに来るなら、首を吊って死んでやる。それで一生化けて出てやるから、よく覚えておけ!」
永野は淑子の言葉など気にすることもなく、営業がうまくいったことに満足感を覚えていた。
二人が外に出ると、お互いに手を合わせて成功の声を上げた。
「先輩やりましたね」
岡村がうれしそうに言った。
「ああ、うまくいってよかった。これで今月の営業成績もメドがついたな」
永尾は安堵したように言った。
「でもあのばあさん、金を払えるのですかね。相当怒っていたようだけど…」
岡村が心配そうに言った。
「気にしない、気にしない、そんなことを気にしていたら、こんな仕事をやっていられないよ。あのばばあがどうなろうと、こっちの知ったことか。金さえもらえばそれでいいんだよ」
永野が平然と言った。
「今月もあと一軒獲得を目指してがんばろうぜ。それにしても今日は暑いなあ」
永尾は額の汗を拭って、上を見上げた。
月末、永尾と岡村は淑子の家に向かった。
「今日は大丈夫ですかね」
岡村が軽い調子で言った。
「昨日あれだけ強く脅したから、今日は大丈夫だろ。しっかり百万円、用意して待ってるさ」
永尾は薄ら笑いをしながら言った。
「しかし首を吊って、化けて出てやるって、また叫んでいましたよ」
「あんなの、あの婆さんの口癖さ。行く度に言われるじゃないか。気にしない、気にしない、何と言われようと、金をもらうまではしっかりと取立てをさせてもらおう」
「そうですね。仕方ないけど、これが僕たちの仕事ですからね」
「そういうこと」
淑子の家に着くと、岡村は玄関の戸を叩いた。
「おかしいなあ…先輩、出てきませんよ」
岡村が首を傾げた。
「どうせ、居留守でも使ってるんだろ」
永尾はそう言うと、岡村を横に押しやって、力を入れて戸をドンドンと何度も叩いた。
「山根さん、山根さん」
大きな声で呼んでも返事が返ってこなかった。
「ちくしょう、どこかに行きやがったかな?」
永尾が首を傾げながら、ドアに手をかけてみると、思わずスッと開いた。
「何だ、開いているじゃないか」
ドアの隙間から顔を中に入れて、大きな声で叫んだ。
「ばあさん、早く金を払えよ」
耳をすましてみたが、中からは何の返事も物音も聞こえなかった。妙に静まり返ったような雰囲気に、永尾はイヤな予感を覚えた。
「岡村、上がって、中の様子をちょっと見て来い」
永尾が顎で合図して、岡村を部屋の中へ行かせた。
「ギャー」
岡村の悲鳴が聞こえてきた。
永尾がすぐに部屋へ上がり込んでみると、そこにはうらめしそうに首を吊って睨んでいる淑子がぶら下がっていた。
「ちくしょう、本当に死にやがったか。死ぬ前に金を払え!」
永尾は死体の前で毒づいた。
「先輩、やはり警察を呼んだ方がいいですよね?へたに疑われるのも困りますしね」
岡村は言いようのしれない恐怖を覚えて、小刻みに震えていた。今まで取り立てで、泣き叫ばれたことは沢山あったが、首を吊って死なれたのは初めてだった。
それに引き換え、永尾は死体を前にしても、一向に動じる気配がなかった。いつもと同じように、死人にまで悪態をついていた。
「ちくしょう、ちぇっ」
永尾は警察に電話をして、住所を知らせた。
すぐにパトカーがやって来ると、刑事や鑑識が部屋の隅々まで調べた。
永尾と岡村は長時間に渡って取調べを受けたが、結局自殺として処理されることになった。
永尾は警察署を出ると、ぼやくように言った。
「ちぇ、ひどい目にあったな。一杯飲んで行こうぜ」
永尾は岡村を誘って、屋台のおでん屋で一杯やることにした。
「おやじ、酒、それにチクワとコンニャク」
永尾が言うと、横から岡村も同じように注文した。
「でも先輩、あの婆さんがまさかホントに首を吊るとは思いませんでしたね。まいったなあ…」
岡村が酒をグイッと飲み干した。
「まったくだ。死なれると金の回収がやっかいだな。財産でもあれば別だけど、百万ぽっちで首を吊るくらいだから、期待できないなあ」
永尾は溜息混じりに言った。
「先輩、あの婆さんの言ったことを覚えていますか?一生化けて出てやる、と形相を変えて言っていましたけど、あの首を吊っている顔を見たら、何だか怖くなってきましたよ。怨念というか、執念というか、そんなものを感じましたよ」
岡村は身震いして、酒をもう一杯飲み干した。
「気にするな。あんな婆さんの一人が死んだくらいで、どうってことない。化けて出るなら出てみやがれ、きっちりと金を払ってもらうからな」
永尾は強気なところを見せていたが、内心では淑子の首を吊った顔に怯えていた。その恨みが全身に宿って、永尾を睨み付けている姿が目に焼き付いて離れなかった。
「さすが先輩ですね。怖いもの知らずで、死人からでも取り立てますか?」
岡村は感心したように永尾を見た。
それからは二人ともお互いに淑子の話を避けるように、二度とその名前を口から出すことはなかった。淑子の名前が出てくると、漠然と首を吊っていた姿が浮かび、気が滅入ってくるのだった。酒を飲みながら、冗談を言い合ったりして笑ったが、心の底から笑っているのではないことはお互いに分かっていた。
二人はほどよく飲んで、いい気分になったところで別れた。
永尾が部屋の前で鍵を取り出して、開けようとするのだが、中々うまく鍵穴に入らない。ようやくドアを開け、部屋の中へ一歩足を踏み入れようとした瞬間、永尾の目に人の足のようなものがボヤッと見えた。少しずつ目を上に移して行くと、そこには恨めしそうな目をして首を吊った淑子の顔があった。
「ひゃあー」
永尾は思わず悲鳴を上げて、部屋を飛び出して行った。
ぶるぶると震えながら、一晩中街中をさまよい続けた。
翌日、永尾がふらふらになって、会社へ行くと、岡村も疲れきったような顔をしていた。
永尾が岡村の隣に座って、大きな溜息をついた。
岡村は呆然とした表情で永尾の顔を見た。
「先輩、助けて下さいよ」
岡村が永尾の腕に縋りついた。
「おまえも、見たのか?」
永尾は岡村の憔悴し切った顔を見た。岡村は目を大きく見開きながら、しきりに肯きながら言った。
「実は、昨日家に帰って、部屋に上がった途端、あの婆さんが首を吊っていた姿が見えたんですよ。ものすごくびっくりしましたよ。それでも電気をつけると、すぐに消えたから、見間違いだったと思い直して、ホッとしてベッドに入ったんです。しばらくすると妙な気配を感じて、何気なく目を開けると、またあの婆さんがベッドの横で首を吊ってる姿が浮かび上がってきたんです。もうたまらずに悲鳴をあげて、部屋から飛び出しました。それからは家に帰るに帰れず、一晩中外をウロウロする破目になりました。そのせいでもうグッタリですよ」
岡村は机の上に顔を突っ伏した。
「そうか、おまえもか。俺も帰った途端に見たよ。俺も一晩中街中をウロウロして時間をつぶしていた。今日はお前の家に泊めてもらおうと思っていたのだが、それもできないか…」
「先輩、ダメですよ。僕はもう帰りたくないです。今日か明日には、新しい部屋を見つけて、明るい内に引っ越そうと思っているくらいですよ」
「そうか…もし今日もあの婆さんが出てくるようだったら、俺もそうした方がいいのかもしれないなあ」
永尾は弱々しい声で呟いた。
「とにかく一度家に帰って、一眠りしてこよう。まさかこんな昼日中から出ることはないだろう。おい、岡村、おまえも一緒に来い」
永尾は強引に岡村を一緒に連れて行った。
永尾はドキドキしながら、部屋の前に立った。昨日の夜、ドアを開けた時の光景が脳裏に蘇った。
「おまえが開けてみろ」
永尾は岡村の背中を押した。
「えっ、僕が開けるのですか」
岡村は恐る恐るドアをゆっくりと開けて、中を覗いた。そこには普段と変らない部屋の様子があった。
ホッとした表情で、永尾に言った。
「大丈夫みたいです。何もいないようです」
「そうか」
永尾が部屋へ上がろうとした瞬間、淑子の首吊り姿が宙に浮かび上がった。
「ひゃあー」
永尾と岡村は同時に叫び声を上げて飛び出した。一階まで駆け下りると、息を切らしながら永尾が腹立たしそうに言った。
「一体、どうなってやがるんだ」
「先輩、僕はこれで失礼します。新しい部屋を見つけに行ってきます」
岡村はあたふたとその場を駆け出して行った。
永尾は行くあてもなく、ただ街をブラブラと歩き回っていた。
「今日はホテルにでも泊まって、ぐっすりと寝るか」
永尾は欠伸をしながら、ホテルに向かって歩き出した。
ホテルで部屋の鍵をもらうと、エレベータに乗って、十二階で降りた。部屋の番号をたどりながら、渡された鍵の部屋の前に立つと、背筋がゾクッとした。
永尾はイヤな予感を振り払うようにドアを開けて、中を覗いてみた。そこにはまたしても見慣れた婆さんの首吊り姿がぶら下がっていた。すぐにドアを勢いよく閉めると、エレベータで一階まで下りた。フロントに行って、部屋を変えてもらうように頼むと、従業員は怪訝そうな顔をしながらも、快く部屋を変えてくれた。
永尾は新しい鍵をもらって、十八階まで行った。一歩ずつ部屋に近づいて行くが、しいんと静まり返った廊下が不気味に思えてくる。
「今度は大丈夫だろう」
永尾は呟きながら、不安と恐怖が入り混じった気持ちで、ドアを開けた。
部屋の中では、やはり婆さんが首を吊っていた。急にその目が開いて、『冷たい麦茶でも飲んで行くかね』と永尾に話し掛けてきた。
「うああ」
思わず大きな叫び声を上げると、その場から駆け出した。
一階まで来ると、ソファに深く腰をかけて、溜息をついた。
「ふう、俺はどうかしている。今度は声がはっきりと聞こえたような気がした」
疲れ切って、軽く目を閉じると、まぶたの裏にも婆さんの首吊り姿が映るようになってきた。あわてて目を見開くと、ホテルの閑散としたロビーの風景が目に入ってきた。
永尾は携帯電話を取り出して、岡村にかけてみた。
「部屋は見つかったか?」
永尾は息も絶え絶えに訊いた。
「ええ、今やっと決めました。業者に無理を言って、今日中に部屋の荷物を運び出してもらうように手配しました。これで、あの婆さんから逃れられると思うと、ホッとします」
岡村の安堵した声が聞こえた。
「そうとは限らないぞ。俺は今ホテルにいるが、部屋に入ろうとしたら、あの婆さんが首を吊っているんだ、しかも麦茶を飲んで行け、と俺を誘っているんだ。どこへ行っても、どこまでも追いかけてきそうな気がしてきた。もう心身ともまいってしまった。今は目を閉じただけでも、あの婆さんが浮かんでくるから、眠ることもできなくなった」
「そんな…先輩、しっかりして下さいよ。いつも強気の先輩はどこに行ったのですか。気を確かに持って下さいよ」
「ああ、分かっている。おまえも気をつけろ。新しい部屋だからといって、あの婆さんがいないとは限らないぞ」
永尾は岡村にホテルの名前を教えて、電話を切った。
四時間後、相変わらずホテルのロビーでウトウトしていた永尾の目の前に、岡村が亡霊のような顔をして立っていた。
「やはり来たか」
岡村の顔を見ると、消え入りそうな声で言った。
「先輩、どうしましょう。先輩の言っていた通りになってしまいました。昼間は何ともなかった部屋が、荷物をすべて運び終わって、運送屋が帰った途端、振り向くとあの婆さんが現れて…」
岡村は唾を飲み込んで続けた。
「思わず飛び出して、ここまで来てしまいました。先輩の部屋は?」
永尾が鍵を渡しながら言った。
「これだ。おまえが行って、もう一度見てきてくれ、俺にはもうその元気は残っていない。あの婆さんの顔を見るのも、声を聞くのも、もう沢山だ」
岡村は受け取った鍵をしばらく見つめながら、ためらっていた。ぐったりとした永尾の顔を見ていると、そのまま死んでしまってもおかしくないくらい生気が感じられなかった。
「それじゃ、一度見に行ってきます」
岡村が弱々しく言うと、エレベータの方へ向かった。
十八階で降りると、鍵の番号を確かめながら、部屋の前に行った。
「ここか…」
岡村はその前で三度大きく深呼吸をしてから、思い切ってドアを開けた。中を見ると、目の前にやはりあの婆さんがぶら下がっていた。その場に腰を抜かしてしまって動けなくなった岡村に、大きく目を見開いて言った。『冷たい麦茶でも飲んで行くかね』
「うあああ」
岡村は廊下中に響き渡る叫び声を出しながら、そこから逃げ出した。
息を切らしながら、ロビーにいる永尾の横に腰を下ろした。
「いたか?」
永尾は横目でチラッと岡本を見て訊いた。
「い、いました」
「そうか」
「今度は目を開いて、お茶を飲んで行けと言われました。今まであんなことはなかったのに」
「そうか、俺と一緒だな」
「先輩、これからどうなるのでしょうか」
岡村が不安そうに言った。
「さあな、俺にも分からん。一生化けて出てやる、と言っていたからな」
二人はソファに腰掛けたまま、呆然としたように宙を見つめ続けた。
完
吉沢潤のブラックストーリーの中から「首つりの呪い」を投稿しました。
中々面白いので(?)、楽しんでいただければうれしいです。