地底少女やまとたけみ 【シナリオ形式】
■解説
萌系少年漫画、24ページ。
コウタリミックスの金河南さんが、コウタリミックスのメンバーBBSで描いた「ドリルっ娘&謎のモグラ人類」の絵に触発され、思い付きで一気に書いた物語です。構想期間:約6時間(笑)、執筆時間:約4時間(笑)。そこからちょっと加筆修整しましたけれど、こんな原作を作画してくれる数寄者の絵師さんは、はたしているのだらうか……。(^^;
■主な登場人物
竹実:山門竹実。左腕に義手のかわりにドリルを着けられてしまった少女。
松枝:山門松枝。竹実の姉で、マッドサイエンティスト。常に白衣姿。
梅芽:山門梅芽。竹実の妹。
河内:河内正成。竹実の先輩で、ちょっとワイルド系の美形。
紀伊:紀伊孫一。竹実の同級生。
クラスメートたち:
モグラ人類:とりあえず敵。(ぉ)
刑事:ステレオタイプのお約束スタイルな、見るからに刑事っぽい刑事。
レポーター:TVのレポーター。
[01]
□
マンションのようなビル。
□
それが不自然に傾く。
□
どーん、と派手な音を立てて倒れる。
声「なんだなんだ!?」「手抜き工事!?」
□ 白(またはベタ)のコマ。
声「違う……モグラ人類だぁ!!」
[02]
□ 扉絵。
T「地底少女 やまとたけみ」
[03]
□
倒れた建物の周囲に鑑識課員たちと、刑事。
TVの画面の隅に「朝のニュース」の文字。そしてレポーターが。
レポーター「警察の調べによると、基礎の下に多数のトンネルが掘られており、
このところ続いているモグラ人類のテロという見方が……」
□ 廊下。
扉をノックする梅芽。
梅芽「竹ねーちゃん、遅刻するよ!!」
竹実の声「やだやだ、ぜったい学校行きたくない~ッ!!」
□
梅見の後ろから松枝、
松枝「ちょっとどきなさい、梅芽」
梅芽「あ、松ねーちゃん……」
□ 竹実の部屋。
強引に剥ぎ取ろうとする松枝と、必死に布団に潜る竹実
松枝「竹実! 今日こそ学校行くのよ」
竹実「やだっ、今日も絶対に行かない!」
松枝「扶養家族の身でワガママ言うんじゃない」
□ (小コマ)
布団の中でギンッ!と眼をむく竹実。
[04]
□
竹実、ヴィィィ!と回転するドリルを突き出す。松枝、あやうく躱して
松枝「うわっ、キケンが危なっ!」
竹実「だ、誰が……」
□
竹実「誰が、こんなもん付けて私を学校行けない体にしたのよ~!」
うぃんうぃん廻るドリルの手を抱えるように、号泣。
□
松枝「しかたないでしょう?」「交通事故で、左手は完全に潰されちゃったんだから」
□
竹実「普通の義手にしてくれればいいでしょ!」書き文字:「乃木式義手とか」
松枝「それじゃ、研究材料にならないの」書き文字:「明治時代の義手?」
□
竹実「けっ……」
引きつり笑い。
竹実「研究材料、って……お姉ちゃん、私を?」
[05]
□
松枝「その代わり治療費を私の研究費で落とせるわけよ」「それとも、ロボット義手に
換えてあんたが払う? 何百万円になるかわかんないけど……」
□ 家の外
竹実、登校姿で泣きながら飛び出していく。
竹実「うわぁん、こんな家、出てってやる~!」
梅芽「いってらっしゃーい」
松枝「興奮するとドリルが廻るから気をつけてね~!」
□ 校門前
立ち尽くす竹実。
竹実「…って、つい習慣で学校に来ちゃったけど……」「でも、こんな手
かかえてみんなの前になんて……どうしよう?」
□
と、いきなり竹実の後ろから肩を叩く手
声「よっ、山門じゃないか」
ドッキーン! と、口から「しんぞー」と書かれた心臓が飛び出す竹実。
[06]
□
竹実「河内先輩!」
河内「交通事故で入院したって聞いたけど、もう大丈夫なの?」
□
竹実、いっしょうけんめい左手を隠しながら赤い顔で慌てて
竹実「はっ、はい! もうピンピンですっ!」
□
河内、竹実と並んで歩きながら
河内「よかった。まあ山門は頑丈なのが何よりの取り柄だけどな」
竹実「あっ、先輩、ひどーい!」
□
河内、竹実の頭に手を置いて
河内「でも女の子なんだから。後に残るような怪我をしないよう、気を付けてくれよ?」
[07]
□
立ち止まり、ぽーっ、とした赤い顔で、ドリルを胸に当て、先に行く河内を見送っ
てしまう竹実。ドリルが、うぃんうぃんと動いている。
きーん、こーん、かーん、こーん……とチャイム。(心理描写を兼ねる)
□ 教室。
左手を隠してる竹実の廻りに、クラスメートが集まり質問責め。
級友「山門さん事故だって?」「ぶつかった時ってどんな感じ?」「病院てやっぱケー
タイ禁止なの?」「痛かった? ねえ、痛かった?」「ナースとHした?」
泣きそうな顔の竹実。
□
竹実、目をつぶって下を向いてしまう。
竹実(心の声)「なんとしても、ドリルだけは隠し通さなきゃ……」
□
紀伊「やめろよお前ら、かわいそうだろ」
竹実、紀伊に気づく。
□
紀伊、目を逸らしながら
紀伊「交通事故は経験がある……山門の辛さは俺もわかるつもりだよ」
□
竹実、呆然と
竹実「紀伊くん……」
点描が飛びちょっといい雰囲気になってきたところで……
[08]
□
ドシッ! と音がして大きな振動。
驚く竹実と紀伊。
声「地震!?」
□
松枝「モグラ人類ね。どうやら、学校の地下を掘っている様子……」
竹実「お姉ちゃん!」「どうしてここに……」
□
紀伊「山門のお姉さん、今朝のニュースみたいにこの学校も倒壊しちゃうんですか?」
松枝「ひとつだけ対策はある」
松枝の目がキラッと光る。
□
松枝、竹実を指差し
松枝「山門竹実! あなたが地中に潜って闘うのよ!」
竹実「ええっ!?」
松枝「その左腕のドリルで」
[09]
□
ざわっ!
級友たち「ド、ドリルだ!」「ドリル少女だ!」「完全に時代遅れのドリル萌えだッ!!」
書き文字:「なつかしのマッド○イエンス・ラブ!?」
竹実「うわーん! 速攻でバレちゃったぁ!!」
竹実、どるるるるっ、と廻るドリルを抱えて号泣。
□
河内、竹実の後ろから現れて
河内「山門、こうなったら君だけが頼りだ」
竹実、泣き止んで振り向き
竹実「河内先輩……」
□
河内、爽やかな笑顔で
河内「闘ってくれるか?」
□
竹実、目がキラキラして
竹実「は、はい……先輩のためなら!」
ドリルと右手を口元に当てながら
□
紀伊、面白くなさそうな顔。
[10]
□ 校庭
竹実、頭にインカム(通話装置)をつけて、ドリルで土を掘り返し、顔も土まみれで
大きな穴を掘りながら。
竹実「とはいうものの……」「いったい、どうやって闘えば……」
□
ぼこっと、竹実の目の前の盛り上がった土から顔を出したもの3つ。(モグラ人類)
□
竹実「はっ!?」「モ、モグラ人類!?」
驚いて、モグラ人類と見詰め合い。
□
モグラ人類「うわあっ、ドリル少女だ!」「いまどきドリル萌え!? だっせ~!」
モグラ人類、大爆笑。
□
竹実(半泣き)「わ、笑うなぁ~ッ!!」書き文字:気にしてるんだからぁっ!
回転するドリルを振り回す。
モグラ人類、あわてて地中に引っ込む。
[11]
□
竹実「おねえちゃん、あいつらを追いかけるにはどうすればっ!?」
松枝の声(インカムから)「こうすれば?」
□
ドンッ! という音とともに服の背がやぶれて、ロケットエンジンが飛び出す。
竹実「えっ!?」
□ 地中。
土の色はアミトーン。
竹実、ものすごい勢いでトンネルを掘って下へ下へと突っ込んでいく。
竹実(大泣き)「きゃぁあぁあぁっ、何コレ!?」
松枝の声「こんなこともあろうかと着けておいたロケットブースター♪」
[12]
□
竹実、突き進みながら
竹実(泣き)「一体どんなことがあると予想してたのッ!?」
松枝の声「他にも、火炎放射器とか、射出捕獲ネットとか、毒ガスボンベとか」
(ここから先、土の色をさりげなくだんだんベタに近づけていってください(演出))
□
松江の声「自爆装置とか」
竹実(絶叫)「物騒なもの、つけるなぁっ!」
□ 教室
レーダーや通信装置が持ち込まれている。
松枝「なんて言ってるうちに、レーダーに敵影が……竹実、あんた囲まれてるわよ?」
竹実の声「ええっ!? 暗くて何も見えないよ!」
□ 地中。
掘り進む竹実の周囲はほぼ完全にベタ。
松枝の声「カンで闘いなさい」
竹実「ムチャいわないで!」
[13]
□ 地中
完全にベタのコマで、セリフだけ展開。(笑)
竹実「きゃあっ、来たぁっ!」
モグラ人類「ケケケ!」
□
声「嫌っ、やめて……こないで、こわい!」
声「お嬢さん、ここまで来たらもう逃げられないぜ、へっへっへ!」
声「嫌っ、嫌ぁ!」
□
声「こうなったら……攻撃は最大の防禦よ!」
声「うっ、いきなり何を……」「ひいっ!」「や、やめろぉ」
声「うりゃっ、うりゃっ!」
声「かはぁっ!」
□
声「ちょっ……やめっ、そんなとこっ!」
声「うるさい、くらえっ!」
うぃぃぃん!
声「ぎゃあっ、あぶねえ!」
□
声「うっ、くっ、うううっ! や、やめろ……っ」
声「どう? どう!? 参った? 参ったッ!? ハァハァ…」
声「ま、まだまだっ!」「負けずに反撃だッ!」
[14]
□
声「あんっ、そんなところ……硬いものが……!!」
声「へへへっ、もうドリルもガチガチだぜ!」
声「やめて、そんなの……硬すぎるぅ、ああん、駄目ぇ……」
声「そっち抑えろ!」「でもよく見えなくて」「お前モグラだろ!」
□
声「もうっ、許さない! 私のドリルでこうしちゃうんだから!」
うぃぃぃん! どるるる!
声「うわあああっ、そ、そんなところを! あああっ!」
声「そんなに深く掘ったら、掘ったらぁっ!」
□ 教室。
鼻血を抑えている紀伊。
紀伊「何が起こってるんだ、いったい……」
河内「暗くてよく見えないようだな」
松枝「よし、照明弾投下!」
□ 地下。
ぱあぁぁぁっ! と広がる光。
声「うわっ、ま、まぶしいっ!」「目が、目がぁっ!」
[15]
□ 真っ白。
今度はホワイトアウト。
声「くそう、目がくじけて何も見えない……」「敵はどこ!?」「声はすれども姿は
見えず、ほんとにあなたは屁のような……」「誰が屁よっ、失礼な!」
□
声「とにかくさっきの続きを……」「よし、この穴から……」「や、やめてっそんな
穴に!」「なんのっ、いくぞ、とりゃぁっ!」「きゃあっ、い、痛いっ! 乱暴に
しないで!」「うわっ、血が!」「上に、上に当たるっ!」「しかし、こんなページ
ばっかしだと作者は楽そうだな」
□
声「もう…こっちにも穴あけちゃうんだから!」うぃぃぃん、どるるる!「あっ、まず
いって! 弱いんだってば、そこは!」「いっちゃう、いっちゃうぞ! そんなこと
したら穴の中にいっちゃうぞ!?」「えっ!? だ、だめ! 中はガマンして!」「いや、
もうダメだ! いっちゃう!」「中はだめーっ!」
[16]
□
ドドッと陥没する学校の校舎。
声「ほら、穴の中に入っちゃった!!」
□ 地中に陥没した教室。
紀伊、窓から顔を出し、心配そうに
紀伊「山門! ひどいことされてないか!?」
[17]
□ 地下。
竹実(泥だらけの顔で)「あっ、紀伊くん!」
モグラ人類たち(血だらけでボロボロ)「ひどいことされてるのはこっちやがな!」
「さんざんドリルでどつきまわされて、トンネルも穴だらけにされて! 血ィまで
出たぞ!」
□
紀伊「硬いとか痛いとかさっき……」
竹実「うん。この上のとこに硬い岩があって、それが当たって痛くて……」
紀伊の後ろから河内も顔を出す。
□
竹実「それはともかく……私たちの学校をこんなふうにするなんて、許せない!」
モグラ人類たち「そりゃあんたの所為でしょ。支えてた柱に穴あけたりするから」
□
モグラ人類たち「♪いーけないんだいけないんだ」「♪ド~リル女はいけないんだ」
□
竹実、ブチィィィッ! (髪形が変わる)
[18-19]
□ (見開き)
竹実、鬼のような形相でドリルを振り回し、火焔や毒ガス、ネットなども乱れ撃ち
しながら大暴れ。
竹実「好きでドリルなんか着けてんじゃないわよ!」
悲鳴を上げ逃げ惑うモグラ人類たち。踏んづけられてる者もいる。
□
青い顔で見ている、紀伊と河内。そして後ろ向いてレーダーを見ている松江。
どがしゃぐちゃばきどごおっ、という擬音、そして ぎゃーひぃーという悲鳴だけ
が響いてくる。
竹実の叫び「乙女のやつあたり、思い知れーッ!」
[20]
□
バブルイン。陥没した学校の廻りを、鑑識課員が調査中。
立ち尽くしてうっ、うっ、と泣いている竹実と、その前に立つ刑事。
(竹実の髪形は戻っている。)
刑事「すると君が、モグラ人類たちをやっつけたんだね?」
□
竹実、泣き崩れて両手を出し
竹実「ムシャクシャして、誰でもいいから殺してやりたいと思ったんです~ぅ!!」
刑事「あ、いや、別に君を逮捕するわけじゃ……」
□
縛られてるモグラ人類たち。
刑事「だいたい、お前らはなぜビルを崩そうとするのだ?」
モグラ人類「怨恨だ!」
□
モグラ人類たち「俺たちは、モグラと合成されて生まれてからずっと、観察や研究を
されてきた!」「薬入りの餌を食わされ、睡眠や交尾まで人間に観察されて」
「そんな奴隷的生活に耐えられず、研究所から脱走したのだ!」
[21]
□
竹実「あの……それって、もしかして……」(汗)
□
モグラ人類たち「ゆるすまじ!」「モグラ人間の鉄の意志で復讐してやる!」「魔女の
バァさんの大釜にたたきこんでやるぞ!」「山門松枝博士め!」
□
そぉっと逃げようとしていた松枝を、怒りの竹実がびしっと捕まえる。
竹実「おね~ちゃ~ん……!!」
□ ホワイトアウト。
書き文字:「ひぃぃぃぃ」「しかたないのよ、研究費がぁぁぁ」
[22]
□ 屋上。
金網にもたれて、すすり泣いている竹実。
竹実「わたし、普通の女の子になりたい……恋もしたいし、遊びたいっ……!」
□
紀伊「山門……」
竹実「来ないでっ!」
□
竹実「こんなドリル女……河内先輩にも嫌われちゃったわよね、きっと」
□
紀伊「仮に、先輩に嫌われたって……俺は嫌わないよ?」
竹実「!」
□
紀伊「見ようによっちゃ、ドリルだって可愛いじゃないか。それは山門の個性なん
だよ」「俺は、ドリルも含めて山門のこと……」
□
竹実(涙)「紀伊くん……」
[23]
□
静かに、でも固く抱きしめあう二人。
うぃぃぃん……と小さく音が響いているる
□
ウィィィン、ババババ! どるるるるるっ!
紀伊(顔が引きつり)「や、山門……俺の背中に……ドリルが、ドリルがぁっ!!」
竹実「あっ!」書き文字:「コーフンするとドリルが廻るっ!!」
[24]
□
モノローグ「こうして……」
□ トンネル工事現場。
穴を掘ったり瓦礫を運んだりしているモグラ人間たちと竹実。
竹実「がんばって、自分たちの食い扶持と、紀伊くんや私の病院代を稼ぐのよ!」
モグラ人類たち「♪ドーリルちゃんのためなら、えーんやこーら」
竹実「「ドリルちゃん」ちゃうわっ!!」
モノローグ「私たちは今日も世の中の役に立っています」
~ 完 ~
SpecialThanks:金河南 様
ウェブ漫画版『地底少女ヤマトタケミ』(作画:金河南)
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上記合作が生まれた合作サイト「コウタリミックス」
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