*プロローグ
ここは、関東にある私立尾世ヶ瀬学園。マンモス校という訳ではないが、多くの施設が整えられている。
高等部しかなく、ごく一般的な私立高校とシステムの中身は大して変わらない。
建物は十字の形をした、変わった造りとなっている。グラウンドはやや狭くそのため、野球部は無い。
代わりと言ってはなんだが文化系の部活が多くなかには、教師さえ謎とされているクラブもあるらしい。
ここら辺りから「どこが普通の学園なんだ」と思われるかもしれないけれど、至って普通の学び舎である。
男女共学で、自宅からの通学と寮のどちらかを選ぶ事が出来る。全体の学力は全国平均よりもやや上だ。
生徒の身なりは良く、それでいて意外と自由な校則に不満はどこからも出ない。
──そして、この学園に一人の男子生徒がいる。
名前は周防 匠。十七歳の高等部二年。学園では知らない者はいないと言われるほどの有名人だ。
彼が一人で学園の学力を上げていると言っても過言では無い。
IQは百二十を優に超えているという噂だが、その真実は解らない。どうしてだか、生徒のほとんどは彼の話を公ではあまりしたがらない。
もちろん、嫌われているとか素行が悪いとか、そういうものではなく。ただただ、彼の柔軟な性格によるものなのである。
かなり気まぐれなため、テストの点数には著しいばらつきがあり、好きな事には夢中になる。