09話:ふふ、兄さま……(エレノア視点)
兄さまに助けて貰った日の夜……。
「あぁ、兄さま……」
私は自分のベッドに横たわりながら、兄さまの事を頭に思い浮かべてそうポツリと呟いていった。
私はお昼過ぎに起きた出来事を思い浮かべた。私が悪者たちに襲われそうになったあの時……私は自分の人生の終わりを覚悟した。
でもその時、私が悪者たちに襲われそうになったあの瞬間……兄さまが颯爽と駆けつけて私を守ってくれたんだ。
悪者たちに何度もボコボコに殴られても、絶対に倒れ込む事なく私の事をずっと守ってくれたんだ。こんなの……こんなの……。
「こんなの……凄くカッコ良すぎるわ……兄さま……」
私は兄さまを思い浮かべながらそう呟いていった。悪者たちに襲われそうになったあの時に……兄さまはどんなに傷ついても私の事をずっと守ってくれたんだ。私はそんな兄さまの事をとてもカッコ良くて素敵な殿方だと素直に思った。
そしてあんなにもカッコ良くて素敵な殿方は……おそらく世界中を旅したとしても絶対に出会える事はないだろうと思った。それくらいに本当にカッコ良かったんだ。
「でも私は……そんなカッコ良い兄さまの事を今までずっと嫌っていたんだ……」
だっていつも兄さまは私の頭を小突いたり馬鹿にしたりするんだもの。それに私の大切なアクセサリを壊したりもするから……だから兄さまは私の事が嫌いだと思ってた。だから私もそんな兄さまの事を嫌いに思っていたのに……それなのに……。
『エレノアの事は大好きに決まってるだろ。だからこそ大好きなエレノアのためなら俺は命を賭ける事が出来るのさ』
「……う……うぅっ……!」
―― バタバタッ!!
私はその言葉を思い出して顔を赤くしていき、そのままベッドの上で両足をバタバタとさせていった。
だって兄さまが私の事をそんな風に思って下さっていたなんて知らなかったんだもの……兄さまは私の事は今までずっと嫌いだと思ってたのに……。
でもその事についてはセバスがとても重要な事を教えてくれた。男の子というのは大好きな女の子に対してちょっかいをかけたりイジメたくなってしまうものなんだと。私は男の子がそういう事をする生物だなんて知らなかったから凄くビックリした。
でもセバスのその言葉のおかげで私は今までの兄さまの行動を深く理解する事が出来た。つまり兄さまが本当は私の事を嫌っている訳ではなく、本当は私の事を深く愛して下さっていたんだ。
ふふ、だから兄さまは毎日のように私の事をあんなにも激しくイジメてきていたんですね……。
「まさか兄さまが私の事を……ここまで深く愛してくださっていたなんてね……」
私は兄さまにこんなにも愛されていたなんて思いもしなかったので、ちょっとだけビックリとしたけど、でも兄さまの本心を深く理解する事が出来てとても嬉しい気持ちになった。
もちろん兄さまが“私の事を愛している”と言った言葉は口から出まかせを言った可能性もあるかもしれないけど……でもそれは絶対にあり得ないわ。
だって私が悪者たちに襲われそうになっている所を自身が身を呈して庇ってくれるなんて、こんなの私に対する深い愛情が無ければ無理に決まっている。
「ふふ、私の事を深く愛して下さっていなければ……あんなにも血みどろの状態になるまで私の事を守ってくださる訳がないものね……」
だから私は兄さまと先ほど会話をしていって、私に対して深い愛情を持ってくださっている事が伝わってきて凄く胸が打たれたんだ。
そしてこんなにもカッコ良くて優しい兄さまにここまで深く愛して頂けるなんて……こんなのとても嬉しい気持ちになるに決まっているわ……。
「ふふ、あんな深く愛の籠った告白を兄さまの方からして頂けるなんて……とても嬉しかったです……もちろん私も兄さまの事を深く愛しておりますよ……だって私たちは大切な兄妹なんですから……ですから私も兄さまを愛するのは当然です……私もこれから一生……兄さまの事をお慕いさせていただきますよ……ふふ、ふふふ……」
私はそう呟きながら先ほど兄さまから返して貰ったアクセサリをぎゅっと抱きしめていった。兄さまが私の事を深く愛して下さっているように……これからは私も兄さまの事を深く愛していきますわ……。
ですがもちろん私は貴族令嬢です……ですから私にもいつかは婚約者が出来てしまうと思います。いつかはどこかの由緒ある貴族家に嫁ぐ事になると思います……。
ですがこれから私に婚約者が出来ようとも……私のこの兄さまを愛する気持ちは一生変わりません。ですから安心してくださいね。私の心も身体も全てがこれから一生兄さまのモノなのですから。
ですからこれからどんな未来があろうとも……私の心も身体も全てを兄さま以外の殿方に明け渡すつもりはございませんよ。私の全ては兄さまに捧げますからね。ふふ、ですから兄さま……。
「ふふ、ですから……もしも深く愛するこの私から……少しでも離れようとしたら……絶対に許しませんからね……ふふ、ふふふ……」
ふふ、兄さま……。




