18話:全く、私という義妹がいるのに(エレノア視点)
「ぐがっ……がはっ……!?」
―― バタンッ!!
「ア、アレン様!? どうなさったのですか!?」
兄さまは飲み物を口に含んだ瞬間に大きく叫んでから、テーブルの上に頭を突っ伏してしまった。
そして村長さまは倒れこんでしまった兄さまに向かってビックリとした声でそう言ってきた。とても心配しているようだ。
「あら、兄さま。どうなさったのですか?」
私は心配している村長さまを安心させるためにも、すぐに兄さまの身体の確認を始めていった。
「ふむふむ。あぁ、なるほど。どうやら兄さまは深い眠りについているようですね。おそらく今日の賊退治に疲れ果ててしまったのでしょう」
「え? ほ、本当ですか? それにしては何だか絶叫に似た悲鳴声がアレン様の口から聞こえてきた気が……」
「いえ、気のせいですわ。村長さま。兄さまの顔に近づいてみてください。とても気持ちよさそうに寝息を立てていますよ?」
「え? あ、ほ、本当だ」
「すぅ……すぅ……」
村長さまは兄さまの顔に近づいていき、兄さまのすやすやという寝息を聞いて納得していった。
「それなら良かったです。急にアレン様が悲鳴を上げたのかと思ってビックリしてしまいましたが、ただ眠っているだけなら安心しました」
「えぇ、そうですね。という事で怪我や病気になってしまった訳ではないので村長さまもご心配なさらず大丈夫ですよ。ですが兄さまは賊退治でお疲れのようですし、そろそろ温かい布団で寝かせてあげたいので、宴会の途中ではありますが、我々は一足先に宿屋に帰らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、もちろんです! それでは今すぐにお二方を宿屋にお連れ致しますね! この村の一番の高級宿を案内させて頂きますので、今日は一日ゆっくりとお休みになってください!」
「まぁ、それはとても嬉しいです。ありがとうございます。そして兄さまは既に就寝なされてしまったので、申し訳ありませんが、先ほどの夜伽の件に関しましては……」
「あぁ、はい、もちろんそれは中止という事で大丈夫です。お疲れのアレン様をこれ以上身体を酷使させるのは申し訳ないですしね。ですので本日はゆっくりとお休みください。それでは本日の泊まって頂く宿屋に案内しますね。どうぞこちらです」
「はい、ありがとうございます」
という事でそれからすぐに、私と眠っている兄さまは、村長の案内によって村にある宿屋に連れて行ってもらった。
◇◇◇◇
それからしばらくして。
―― ガチャッ
「こちらが本日の宿泊部屋となります。エレノア様のご所望でツインのお部屋を用意しましたが、今は部屋の空きも沢山ありますので、シングルのお部屋を二つ用意できますよ?」
「あぁ、このツインの部屋で大丈夫です。私達は兄妹ですので同じ部屋で共に寝泊まりするのが普通ですから。お気遣い頂き本当にありがとうございます」
「そうですか。わかりました。それでは本日はこの部屋でごゆっくりとおくつろぎください。それでは失礼致します」
―― バタン……
そう言って宿屋の主人は部屋から出ていった。
こうして今はベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている兄さまと、そのベッドの前に立っている私の二人きりだ。
「ふふ、もしもの時のために作った“強制麻痺薬”がこんな所で役に立つなんて……ふふ、常に持っておいて良かったですね……ふふ……」
私はそう言いながら胸ポケットに潜ませていた小瓶を取り出した。中には無色無臭の液体が入っている。
これは私が独自に作り出した薬で、効能は1滴でも体内に入れたら瞬間的に気を失う劇薬だ。1滴でも飲ませたら半日は確実に目を覚まさない。
子供の頃から怪我を何度もしていた兄さまのために、怪我を治すための治療薬の研究をずっとしていたんだけど、その副産物で生み出したのがこの“強制麻痺薬”だ。
いつか兄さまの事を傷付ける悪党と出会った時に使おうかなって思って常に懐に入れてたんだ。そしたらまさか悪党ではなく兄さまに使う事になるなんてね……。
「でも兄さまが悪いんですよ? 私という最愛の義妹がいるにも関わらず、他の女どもに目を奪われるだなんて……しかもそんな女どもと夜伽をしようとするなんて……そんなの絶対に許されない背徳行為ですからね……」
―― スルスル……スルスル……
私はそう言いながら兄さまにゆっくりと近づいていき、兄さまの服を一枚ずつ脱がしていった。あの女どもにペタペタと触られて兄さまの服は汚れてしまったからだ。この服はもう要らないから全て処分してしまおう。
そしてそれからすぐに私は兄さまの全身を清潔な布で拭いていった。兄さまの身体に村の女どもの香水の匂いが付いてしまったからだ。こんな匂いはすぐに消してしまわなければならない。
という事で私は綺麗な布で兄さまの頭の上から足のつま先まで全身くまなく拭いていった。もちろん兄さまの大事な部分も懇切丁寧に拭いていった。
「兄さまの身体に付けるのは私の匂いだけで十分ですからね。それにしてもいつも見ていますが、兄さまの身体は本当に逞しくて素敵ですね……でもこの身体を私以外の女どもに見せるなんて……そんなのは絶対に駄目なんですよ、兄さま……?」
私は全身無垢の状態になった兄さまの胸元を触りながらそう呟いていった。兄さまの身体は全て私のモノだ。だから私以外に見せるなんて到底許される訳はない。
そしてそれはもちろん私も同じだ。私の身体も兄さまのモノだし、心も全て兄さまのモノだ。
だから私は兄さまのために全てを捧げられる。心も身体も全てだ。美味しいご飯が食べたければ私がいつでも作るし、お金が欲しければどんな手段を使ってでも私が用意する。兄さまの欲しいモノは全て私が買い与えるし、嫌いな者がいるようなら私が即座に排除する。
そしてもちろん夜の相手が欲しいのであれば私がいつでも相手になるし、赤ちゃんが欲しいのなら私がいつだって産んであげる。この私の身体は兄さまのためにあるんだ。兄さまなら私の身体をいつでも好きに使ってくれて構わないんだ。
だから兄さまには私以外の女なんて必要はないんだ。兄さまには私さえいれば十分なんだ。
それなのに兄さまは私以外のに他の女どもに子種をばらまこうとするなんて……そんなのは到底許される行為ではないですよ?? こんなの不貞行為だと言われても仕方ない事ですからね、兄さま……?
―― ぎゅっ……
「すぅ……すぅ……ん、ぐが……は……」
私はそれから兄さまの首元に手を当てていきながら、やさしく……やさしく……すっごぉくやさしく……兄さまの首をぎゅってしていった……。
すると兄さまはちょっとだけ苦しそうな声を出していった。ふふ、兄さまの苦しそうな声も素敵……。
「ふふ、まぁでもわかってますよ。兄さまは優しいから……だから村長さまにあんな事を頼まれたら兄さまは断れませんよね……」
私はそう言ってからすぐに兄さまの首元をぎゅっとするのは止めていった。不貞行為をするようなら私は兄さまを……しますけど、でも兄さまは不貞行為をしたくてした訳じゃないですもの。
村長さまに男衆がいないから女性達の夜伽をお願いしたいなんて言われたら、優しい兄さまは断れる訳がない。村長さまが困っていたら兄さまは助けなきゃって思うに決まってます。だって兄さまは誰よりも純粋な心を持つ凄く優しい殿方なんですから。
だけどもしも村長の頼みを聞いて村の女どもと夜伽をしてしまったら、そんなの最愛の義妹である私を悲しませるのはわかっていたので、どうにかして村の女どもとの夜伽を断ろうと思って兄さまはあたふたとしていたんですよね? えぇ、もちろん私には全てわかっておりましたよ。兄さま。
だからそんな本当は断りたくても断れなった兄さまのために、私は“強制麻痺薬”を兄さまに使用して強制的に気絶させたというわけだ。
あのままだと兄さまはやりたくもないのに私以外の女どもと延々に夜伽を強いられる事になっていた。やりたくもない女どもと延々と夜伽をさせられるなんてそんなの兄さまにとって苦痛でしかないはずだもの。
だから私が断りたがっていた兄さまの事を薬を使って救ってあげたんだ。ふふ、本当に強制麻痺薬を持ってきておいて良かったわ……。
「……ふふ、さてと。それじゃあ私も眠くなってきましたし……そろそろ寝る準備をしていきましょうかね……」
私はそう言って眠る準備を始めていった。まぁ眠る準備なんてやる事は一つしかないのだけど。
―― スルスル……スルスル……ストン……
すぐに自分の着ていた服を脱いでいき綺麗にたたんでいった。もちろん下着も全て脱いだ。兄さまと同じく全身無垢の状態となった。
「ふふ、それじゃあ兄さま。今日はこのまま一緒に……温め合いましょうね……」
―― ぎゅぅっ……
私はそう言いながら兄さまの眠っているベッドの中に入っていき、兄さまの背中に両手を回していきながらぎゅっと抱きしめていった。兄さまの身体からはキツい香水の匂いは無くなり、私の大好きな兄さまの匂いに戻っていた。
「ふふ、とても安心できる素敵な匂いです……兄さま……」
私はそう呟きながらさらにピタっと身体をくっ付けていった。お互いに無垢な状態なのでお互いの体温でどんどんと温まっていった。
そしてポカポカと温かくなっていった私は、そのまま兄さまと朝まで一緒のベッドで深く抱きしめ合いながら眠りについていった。




