14話:ヤエン村に到着すると
それから程なくして。
俺たちが乗っていた馬車は今日の泊まる村であるヤエン村へと到着した。
「アレン様、到着致しました。ここがヤエン村になります。……って、あれ?」
「ん? どうした、シュルツ?」
するとその時、馬車の御者であるシュルツはヤエン村を見渡しながらキョトンとした声を出してきた。
「いえ、今日のヤエン村は何だか人が少ないように感じまして。それに活気もないような気もしまして……」
「ふぅん? まぁそう言われてみれば何となく人が少ないようにも見えるな……」
「そうですね。それにシュルツの言う通り活気がない雰囲気もヒシヒシと伝わってきますね」
俺とエレノアは馬車から降りてすぐにヤエン村の様子を見ていった。すると確かにシュルツの言う通り村人の数が少ないように見えた。それに活気も全然ないようだ。
「俺たちは初めてヤエン村に来たから普段の状態を全く知らないんだけど、もしかして普段はもっと賑わっている感じなのか?」
「はい、そうですね。いつもなら多くの村人で賑わっている村だったはずなのですが……どうしてこんなにも活気が無くなっているんでしょうかね?」
「なるほど、いつもは賑わっている村なのですね。それじゃあもしかしたらこの村で何か不測の事態でも起きたのかもしれませんね、兄さま」
「そうだな。それじゃあちょっとだけ調査をしてみる事にするか。ということで……あ、すいません、そこの御方、少しよろしいでしょうか?」
「え……あ、は、はい……なんでしょうか?」
俺はそう言って近くにいた村人に声をかけてみた。すると村人は何だか怯えてる様子だった。これは本当に何かあったようだな。
「えっと、すいません。このヤエン村は普段よりも人が少ないように感じるのですが、何か問題でも起きたんですかね?」
「えっ……あ、も、もしかして旅の御方ですか……?」
「はい、そうです。私はマルフェン街から来ましたアレン・クロフォールと申します」
「同じく義妹のエレノア・クロフォールと申します。そして私たちは男爵家であるクロフォール家の者ですので、何かこの村で問題が起きているようでしたら幾らでも相談に乗りますよ」
「え……えぇっ!? ア、アナタ方は貴族様方なんですか!? あ、あぁ、た、助けてください貴族様……! ど、どうか我々の家族を……!」
―― ガシッ!
俺たちが貴族だと知るや否や村人は俺の両手をガシっと握りしめながら、悲痛な表情になってそんな事を言ってきた。
「お、落ち着いてください。一体どうされたんですか?」
「あ、あぁ、はい、すいません……取り乱してしまいました。ほ、本当に申し訳ありません……で、ですが……どうか私たちの話をどうか聞いてもらえませんか?」
「えぇ、もちろんです。俺たちで良ければ話なんて幾らでも聞きますよ」
「あ、ありがとうございます……! そ、それでは私からではなく、村長に話をして頂きたいので……まずは村長の住んでいる家に案内をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、もちろん大丈夫ですよ」
「あぁ、ありがとうございます……! そ、それでは今すぐに向かいましょう! 私の後ろについてきてください……!」
という事で俺達はその村人の案内によって、ヤエン村の村長の住んでいる家に向かう事になった。
◇◇◇◇
それから数分後。
俺たちは村長の家に招き入れられた。そして村長からこのヤエン村で起きた事件の詳細を聞かされていった。
「……なるほど。賊によってこのヤエン村が襲われたという事ですか」
「はい、そうなんです。金目の物は全て奪われてしまい、さらに村の若い衆も奴隷として高く売れると言って攫っていったのです……それで私の孫たちも攫われてしまい……賊共に酷い目に遭わされていないか心配で心配で……うぅ……」
村長の話を聞いていくと、どうやら昨日この村に賊が襲いに来たらしく、金目の品や若い人たちを奪っていったらしい。なんとも辛い話だな。
そしてその賊共はヤエン村のすぐ近くの森の中にある洞窟をアジトにしていて、そこに攫った人間たちをそこに収監しているらしい。という事は攫われた人たちはまだ奴隷商人に引き渡されてないので、今ならまだ助けるのは可能という事だ。
「で、ですからどうか……お願いします貴族様……! どうか貴族様のお力でこの村に軍隊や兵士、冒険者など屈強な者たちの派遣をお願いできませんでしょうか……! 金目の物は全て奪われてしまい、謝礼金をお支払いする事が一切出来ないこの状況でこんなお願いをするのはあまりにも失礼なのは重々承知していますが……それでもどうかこの村の若い者たちを救って頂けませんか……!」
「お、お願いします、どうか助けてください、貴族様……!」
村長とその隣にいた村人は俺に向かって深々と頭を下げながら、そんなお願いをしてきた。
「なるほど。わかりました。そういう事なら俺が力を貸します。という事でエレノア。すまないけど、明日王都に到着するのはちょっと無理になるかもしれないよ」
「ふふ、そんなの謝る事ではありませんよ。むしろ村人たちを助けると言わなかったら、私は兄さまの事を全力でこらって叱る所でしたからね」
エレノアは可愛らしく片腕を上げながら俺を叱りつけるポーズを取ってきた。非常に可愛らしい仕草だった。やっぱりウチの義妹は最高に可愛いな。
「はは、そっか。それならエレノアに怒られずに済みそうで良かったよ」
「えぇ。まぁでも私は兄さまが村の人たちを見捨てるなんて全く思っていませんでしたけどね。だって兄さまは昔から困ってる人たちを助ける正義の味方ですからね」
「正義の味方か。別にそんな高尚な者になったつもりはないけど……でもエレノアにそう言われたら頑張るしかないな。よし、それじゃあ今から敵のアジトに行ってみる事にするよ。確かこのヤエン村近くの森の中の洞窟が賊共のアジトなんですよね?」
「え……って、えぇっ!? き、貴族様ご本人が賊のアジトを確認しに行かれるんですか!? そ、それは流石に危険過ぎじゃありませんか!?」
「いえいえ、心配には及びません。いつもクソヤバ老人……じゃなくて。俺は武術の師匠と毎日厳しいトレーニングを積んできましたから。だからそれなりに腕には自信があるんです。でももしもの事があるとマズいから、シュルツは今すぐに近くの街に向かって冒険者ギルドに冒険者の要請依頼を出してきて貰えるか?」
「りょ、了解しました! それでは今すぐに近隣の街に向かいます!」
「兄さま。それでは私はどうしましょうか? 私も兄さまと一緒に森の中に向かいましょうか?」
「いや、エレノアはこの村で待機していてくれ。それでもしかしたら攫われた若い人たちに怪我人もいるかもしれないから、今のうちに回復薬を沢山調合しておいてくれると助かるよ」
「わかりました。それくらいならお安い御用です。薬の調合器具は一通り全て持ってきておりますので、それでは兄さまが帰ってくるまでに回復薬を大量に用意してお待ちしておりますね」
「ありがとう、エレノア。回復薬の件よろしく頼む。それじゃあちょっくら森の中に行ってみるよ」
「えぇ、行ってらっしゃいませ、兄さま。どうかご武運を」
「おうよ」
そう言って俺はエレノアと別れていき、森の中にある賊共のアジトに向かっていった。




