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13話:馬車に揺られながら義妹と話す

 それから数日後。


「俺達が住んでた街がもうあんなに小さくなっちゃったなぁ……」

「えぇ、そうですね。十七年間もずっと住んでいた私たちの故郷から離れる事になるのはやっぱり少しだけ悲しいですね」

「あぁ、そうだな。まぁでも留学は一年だけだし、俺達の故郷にはどうせすぐに帰ってこれるんだからそんなに悲観せずとも大丈夫だろ」


 という事で俺とエレノアは王都に向かう馬車に乗りながら、そんな会話をしていった。


 ちなみに俺たちが今まで住んでいた故郷の“マルフェン街”から王都には、馬車で移動すると二日はかかってしまうほどの長い距離がある。


 なので今日は王都に向かう道中にある“ヤエン村”という田舎村に行き、そこの村で一泊をする予定になっている。


 そしてヤエン村の宿屋で一晩を明かしてから、翌日の朝にまた馬車で王都に向かうという行程になっている。おそらく王都に到着するのは明日の夜になるだろう。


「そうですね。でも逆に言えばたったの一年間しか留学出来ないという事ですからね。ですからこの留学をちゃんと有意義なものにしましょうね。兄さま」

「そうだな。勉強したり貴族様たちと仲良く交流したり、俺に出来る事は色々とやっていくつもりだよ。それにしてもさ……エレノアの荷物はヤケに多くないか? スーツケースを一体幾つ持ってきてるんだ?」


 馬車に積まれてるエレノアの荷物を見ながらそう尋ねていった。俺の持ってきた荷物の三倍近くの量をエレノアは馬車に乗せていた。何でこんなにも荷物の差が生じてるんだろ?


「やっぱりアレか? エレノアは女子だし、そのスーツケースの中には衣服とかアクセサリとかでいっぱいになってるのか?」

「いえ、違いますよ。私が持ってきた荷物の中身はほぼ全て薬の調合用アイテムですよ。兄さまは普段よく怪我をされてましたから。ですから兄さまが王都でいつ怪我しても大丈夫なように、私もいつでも何処でも薬が作れるように調合用アイテムを一式持ってきたんですよ」

「あ、あぁ、そういう事か……」


 俺はいつもあのクソヤバ老人……じゃなくて、最凶すぎる老従者のセバスによる地獄のトレーニングを受けてたせいで毎日怪我を負っていた。それを治すためにエレノアは毎日薬の調合の勉強をひたすらにしてくれていたんだ。


 そのおかげもあって今のエレノアは薬の調合レベルは最強クラスといっても過言ではない程のスキルを持っていた。最近ではハイポーション薬とかハイマナポーション薬とかの高級薬も軽々と大量に作れるようになっているしな。おそらく自分で店を出したら大金持ちになれる程の優れた薬師になっていた。


 だからそういう面では非常に頼りになる義妹だった。まぁ逆に言うと俺は義妹にめっちゃ迷惑をかけてるどうしようもないアニキという事でもあるんだけどさ……。


「ふふ。ですから怪我をなさったらいつでも言ってください。私が兄さまのためにどんな薬でもいつでも何個でも調合して差し上げますからね!」

「あ、あぁ、それは助かるんだけど、でも俺は王都に行ってまで地獄のトレーニングを続けるつもりはないからな? だから今までのように毎日怪我するなんて事はないからな。というか今も尚ずっと思ってるんだけどさ……本当にエレノアは俺に付いてくる必要なんてあったのか?」

「……え? な、何を言ってるんですか兄さま……? 私に向かってそんな酷い事を仰るなんて……もしかして兄さまは私の事が嫌いなのですか……ぐすっ……」

「……えっ!?」


 俺がそう言った瞬間にエレノアは表情をかなり暗くしながらそう返事を返してきた。なので俺は大慌てで弁明をしていった。


「い、いや、嫌いな訳ないだろ! 俺にとってエレノアは大好きな義妹に決まってるだろ!」

「……そうですか。ふふ、それなら良かったです」

「あ、あぁ。でもさ、ぶっちゃけこんな中途半端な時期に王都に留学って結構面倒だろ? エレノアにはマルフェン街に沢山友達がいたんだし、無理して俺の留学に付き合わなくて良かったんだぞ? エレノアにとっても残りの学生生活は地元の学校で友達とワイワイと遊んで暮らした方が楽しかっただろ?」

「いえ、そんな事はありませんよ。私は兄さまと一緒ならどこであろうとも天国のような気持ちになりますから。だから大丈夫ですよ……たとえそこが地獄だとしても私は兄さまと一緒ならとても幸せですからね、ふふ……」

「い、いや地獄って……流石に地獄には行きたくないんだけど」

「ふふ、ただの例えですよ。という事で兄さま、王都に行けるなんて滅多にない事ですから、勉学に励んだり貴族様との交流に精を出すだけではなく……せっかくですから私たち兄妹二人きりで楽しく遊んだりもしていきましょうね?」

「ん? あぁ、それは確かにそうだな。王都なんて滅多に行くチャンスもないし、せっかくだから王都でも兄妹仲良く遊んでいこうな」

「はい。ふふ、兄さまと一緒に遊べるなんて……とても楽しみです……」


 エレノアは嬉しそうに微笑みながらそう呟いていった。もちろん俺も嬉しい気持ちだ。王都という大都会でエレノアと遊べるなんて今から凄くワクワクとするよ。


 それに王都といえばゲーム本編で一番訪れる事になる超有名スポットでもある。だからゲームの聖地巡礼が出来ると思うとワクワクだけではなくテンションも凄く上がってくるよな。


(というか王都に行ったら……もしかしたらゲーム本編で仲間になるキャラとも遭遇出来るんじゃないのかな!?)


 そう思うと何だかテンションがさらに高まってきた。だってこの世界にやってきて七年も経ってるのに俺は仲間キャラにはまだ一度も出会えてないんだからな。


 だからこれを機に仲間キャラと出会える可能性があると思ったらテンションも上がるに決まってる。しかも俺の最推しキャラは王都出身のはずだからワンチャン会える可能性あるよな……!


「……ははっ」

「どうしたんですか、兄さま? 急に笑みなんか浮かべて……何か楽しい事でも考えてるのですかね?」

「ははっ、まぁ、ちょっとな……」

「ん? ……あっ、わかりました。ひょっとして兄さま……婚約者について色々と考えていらっしゃったんじゃないですか?」

「え……って、えっ!? あ、い、いや、別にそういう訳じゃな……いや、ごめん、嘘だな。それもちょっとだけ考えてたわ……」


 俺はちょっとだけ恥ずかしい気持ちになりながらもエレノアにそう白状をしていった。まぁやっぱり俺だって男だからさ……だから貴族令嬢と仲良くなって婚約者になれたら嬉しいと思うのは当たり前の感情だ。


「あぁ、やっぱりそうだったんですね。兄さまの鼻の下が伸びているからそうではないかと思っていましたわ」

「そ、そんなに鼻の下が伸びてたのか……? ま、まぁでも仕方ないだろ、今まで女子との出会いなんて全然無かったしさ。だからちょっとだけそういう女子との交流にも期待するのは男としては当然の話だからな」

「えぇ、もちろんわかっております。ですからそこら辺については義妹であるこの私がしっかりと兄さまのサポートをさせて頂きますよ。兄さまが素敵な殿方だという事を学園の皆様に知って貰えるように全力でサポートしていきますから。ですから大船に乗ったつもりで安心してくださいね、兄さま」

「おう、ありがとうエレノア。昔からエレノアは頼りになる義妹だもんな。だから今回の留学でも凄く頼りにさせて貰うよ。って事で改めてこの留学中もよろしく頼むな、エレノア」

「えぇ、お任せください、兄さま。ふふ……ふふふ……」


 という事で俺は改めてエレノアに向かって、この一年間の留学中もよろしく頼むとお願いをしていった。


 そしてその後も俺たちは他愛無い話を続けながら、今日の宿屋があるヤエン村へと向かって行った。

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