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10話:あれから七年が過ぎた頃

 あれから7年の歳月が経った。俺は17歳に成長した。


 俺はこの7年間で沢山勉強してきたし、貴族としての立ち振る舞いも沢山覚えていった。


 もちろん勉強はとても大変だったけど、でも別に勉強で苦に思ったり辛いと思った事は一度たりともなかった。だって……。


「はぁ、はぁ……げほっ、がほっ……し、死ぬって……! こ、こんな大きな丸太を担いで腕立て伏せをし続けろだなんて……俺死ぬって……!!」

「ふふ、大丈夫ですよ。人はそんな簡単には死にません。まぁでもキリも良い事ですし本日のトレーニングはこれで終わりにしましょうか。お疲れさまです、坊ちゃま」

「はぁ、はぁ……た、助かった……はぁ、はぁ……うぐはっ……!」


―― バタンッ……!!


 だってセバスによる地獄のスパルタ式トレーニングの方が遥かに苦痛だったからな……!!


 という事であれから7年経った今でも俺は毎日セバスによる地獄のスパルタ式トレーニングを受けていた。


 ちなみに今日のトレーニング内容は強い身体を手に入れるために大木を担いで延々と腕立て伏せをするという恐ろしい内容だった。


(はぁ、はぁ……もはやスパルタを通り越して拷問に近いレベルのトレーニングだろこれ……!!)


 俺は地面に倒れ込みながらそんな事を思っていった。こんな地獄の拷問トレーニングを7年も続けて来た事をまず褒めて欲しいわ……。


 まぁでもこんな地獄のトレーニングのおかげで俺の身体はとても引き締まっていて、筋肉も相当に付いていた。


 しかもかなり痩せた事で顔付きもシュっとしてスマートになり、割とカッコ良い感じにもなっていた。そんな訳であの頃の丸々と太っていた俺の面影は一切無くなっていた。


 まぁでもシュっとしてスマートになれたのは嬉しい事だけど、でもやっぱり毎日地獄のトレーニングを受けるのは辛すぎるものがあるって……。


「はぁ、はぁ……というか俺は一体いつまでこの地獄のトレーニングを受けなきゃいけないんだよ……はぁ、はぁ……」

「……ふふ、今日もお疲れ様です。兄さま」

「はぁ、はぁ……うん? って、あぁ、エレノアか。お疲れさん……はぁ、はぁ……」


 そしてトレーニングが終わってからすぐに義妹のエレノアが俺に声をかけてきてくれた。手にはタオルを持ってきてくれている。


 エレノアも俺と同じく17歳に成長した。子供だった頃のエレノアはとても可愛らしい感じだったけど、今ではサラサラの黒髪ロングヘアが特徴的なとても美しい女性に成長している。


 きっとあと数年もすればゲームに登場した絶世の美女のエレノアになるだろう。アニキとしてはここまで闇落ちせずに心優しい女性に成長した事をとても嬉しく思う。まぁでも……。

 

「えぇ。お疲れさまです。それでは本日も兄さまの身体を私が拭かせて頂きますね」

「はぁ、はぁ……い、いや、いつも言ってるんだけどさ……エレノアに身体を拭かれるのって結構恥ずかしいからそろそろ止めて欲しいんだけど……」


 まぁでも何と言いうか……エレノアはとても心優しい女性に成長しているんだけど、でも心優しいレベルがちょっと異常に高すぎるんだよな……。


 この七年間、エレノアは俺のトレーニングに毎回付いて来るし、トレーニングが終わるまで何時間もずっと直立不動のまま俺の事をじっと見つめているし、トレーニングが終わったらすぐに駆け寄って俺の汗を拭こうとする。


 それに俺のトレーニング中の飲み物とか軽食の用意とかも全てエレノアがしてくれているし、しかも栄養バランスを考えて全てエレノアが手作りで用意してるんだ。こんなにも至れり尽くせりの状況がずっと続いているんだ。


 まぁそりゃあ最初期の仲が悪かった頃と比べたら今の方が遥かに良い関係だというのはわかるけど、でもそれでもちょっと献身的過ぎるというか、なんというか……。


「? 何で恥ずかしいのですか? 私達は兄妹なのですから、そんな恥ずかしがる必要などないでしょう? さぁさぁ、早く拭かなければ風邪を引いてしまいますよ? ですから早く上着を脱いでください、兄さま」

「あ、あぁ、わかったよ……」


 という事で俺はエレノアの指示に従って上着を脱いでいき背中をエレノアに見せていった。


「えっと、それじゃあよろしく頼むよ」

「えぇ、お任せください。それでは……よいしょ……よいしょ……ふふ、お痒い所はございませんか?」

「あ、あぁ、ちょうど良いよ……でもさ、これって普通に考えたら義妹にやらせる事じゃないだろ……? だからこれからは手が空いてるメイドにでもやらせるからエレノアはもう俺の世話なんかしなくて――」

「……メイド?」


―― ピシッ……


 俺がそんな事を口に出した瞬間に辺りの空気が凍っていった……気がした。


「え? エレノア……?」

「……ふふ。兄さまには私という女がいるのに、それなのに兄さまは私以外の女に身体の世話をさせるつもりですか……?」


 エレノアは真っ黒な瞳でじっと俺を見つめながらそんな事を尋ねてきた。エレノアは優しい口調だし、口元も微笑んでいるのに……それなのに何だかうっすらと恐怖を感じてしまった。


「え……い、いや、何だか“女に身体の世話”っていうと違うニュアンスになる気がするんだけど……それにエレノアは俺の女ではなくて義妹といった方が正しいというか……」

「……ふふ、兄さま?」

「あ、い、いえ。その……何でもありません。エレノアに身体を拭いてもらえて嬉しいです。だからこれからも是非ともエレノアに身体を拭いてもらいたいです……」

「……ふふ、最初からそう言ってくれれば良いんですよ。えぇ、わかりました。それではこれからも毎日兄さまのお身体を拭かせて頂きますね?」

「あ、あぁ、よろしく頼むよ……」


 という事で俺はその後もエレノアの手によって懇切丁寧に俺の身体を隅々まで拭かれていった。


 流石に同い年の女の子にこんなにも身体の隅々まで拭かれるなんて滅茶苦茶に恥ずかしいんだけど……まぁでもエレノアがやりたいっていうならこれ以上は止められないよなぁ……。

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