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斜め上から見た美しい世界〜間違ったのは誰?正しいタスケル出来たのは誰?  作者: RiderLisa


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47話 きっと素敵な音がするはずだ

幸せで豊かな【月の中】で暮らしている


うさぎとかぐやは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た、現代も大昔も不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!


地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい! 


ふたりは、サンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。


月といえばお饅頭!

神様に許可をもらって、地球旅行へ出発しました。


ルンルンでタスケルするのです!


タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで、

大切な人を助けるとはどういうことなのか?   


かぐやとうさぎは、自らの過去と向き合い、地球で磨かれ、深みのある存在へと成長していく。

「きんとうん…っていう名前なんですね」


「そうよ!すっごく便利なの」


桃子を抱っこした岩田さんと、かぐやの三人は觔斗雲に乗って空を移動していました。


少し重いせいか、いつものスムーズさはありません。

それでもあっという間に林を越え、桃太郎の家へ続く深い森の上を飛んでいます。


「かぐや様…あなたって…」


「えー?異国から来たのよ

そこでは結構、当たり前にある乗り物なの

それと〜

《様》は、やめてくれるかしら」


「すみません…では…かぐやひめ。

これは、あなたのところでは普通なんですか?」


「そうよ!

地球ここでもそのうち乗れるようになるわ!

雲では無いけど」


「そうなんですか…知らなかったです」


岩田さんは桃子が落ちないように、

しっかりと抱きしめています。


「桃ちゃん、良かったね!」

かぐやが微笑むと、いつも通りニコニコと

可愛らしく笑っています。


「岩田さんは赤ちゃんのいるお母さんなのよー

抱っこも安心だねぇ〜?

ねー?桃ちゃん」


桃子のお腹をくすぐると、キャ!と楽しそうに身体を動かしています。


「くすぐったいのかなーー?

可愛いねぇ」

ふと岩田さんを見ると、何故か俯いて黙り込んでいました。


「ねぇ、どーしたの?」


「……いえ」


「大丈夫?具合いでも悪いの?」


「……大丈夫です、ありがとうございます」


岩田さんは視線を移し、

自分を見つめてくるニコニコした赤ちゃんを、大切そうに包み込んでいます。


「桃子ちゃんはよく笑う子ですよね」


「そうねーとっても元気よね!

でも泣くときも凄いわよね」


「ふふふっ、確かにそうですね」


觔斗雲の分厚い雲は、いつもより横に広がっていて、スペースには余裕があります。

簡単に下に落ちたりはしませんが、動き回ろうとする赤ちゃんをギュッと抱きしめて、危険のないように大切に扱っていることが伝わってきます。


かぐやは下をよーく観察しました。

森に人がいないことを確認すると、少しずつ降下し始めました。


「お兄ちゃんにすぐ会えるからね?」

岩田さんが話しかけると、会話をしているようにタイミングよく「だぁー!」と返事をしていました。


かぐやは、森の中をキョロキョロ見回して觔斗雲を森の道へ降ろしていきます。


桃太郎のことが心配ですが、ここで焦っては危ないので、慎重に雲の操作をしました。


操作…といっても、行きたい方向を決めて少し力を込めるだけなのですが。


「よしっ

よ〜し…いいよー」


雲に乗って、こんなに安全に気を配ったのは初めてです。


「よし!着いたよー!」


フワッと軽く地面に接地すると、全く揺れない着陸に自分で感動しました。

すごいですー!と、岩田さんから拍手を受けていると

桃子も真似をして手を合わせています。


「えへへっ

ありがとう!

ここから少し歩いたらすぐ着くわよ」


三人は桃太郎の里親の家へ急ぎました。


うさぎとタヌちゃんたちがいないか、振り返って確認したり、声が聞こえないか耳を澄ませてみましたが、

森の中は鳥の鳴き声しかしませんでした。


「うさぎさんとタヌちゃんさんは、もう着いていますかね」

岩田さんも気になっているのか、辺りを見回しています。


「さすがにまだ来てないみたいね」

もしかしたら、桃太郎はリアル森のカフェにいたのかもしれない。

絶対にどこかにいるはずです。


道を見守っているお地蔵さんを通り過ぎると、

桃太郎の里親の家が見えてきました。


周りには畑が点在していますが、人は見当たりません。

今日は快晴で、本当に気分のいいお天気だというのに

辺りはシーンッと静まり返っているのです。


ことちゃんときくちゃんが走り回っていた、あの村のような活気は全くなく、不気味な雰囲気を感じました。

初めてここを訪れたとき、正直あまり興味がなかったので、ちゃんと観察していませんでしたが、やはり

おいねさんたちの住む村と違って、生気のない感じが漂っているのです。


「行きましょ!

きっと家の中にいるはずよ」

かぐやは遠慮なく、勇ましい足取りで家に近付いていきます。


「かぐやひめ」


「なに?」


「…武器はありますか?」


「は?」


「武器です。そんなに酷い里親なら

こちらも何か用意して行かないと」


「そっか…そうね…

でも、何も持ってないわ」

この辺りの嫌な雰囲気に加えて、桃太郎の里親は子供を殴るような人たちなので、警戒するのは地球の人間なら当然です。


「あのほうきはどうでしょう?」


「そうね」


少し離れた桃太郎の家の戸口に、ほうきが立て掛けてありました。


「わたしがほうきを持ちます。

かぐやひめは桃子ちゃんをお願いします。

いざというときは、きんとうんで逃げてくださいね」


岩田さんの顔は、緊張で強張っていました。


「うん、分かったわ」

でもたぶん大丈夫よ、という言葉は飲み込みます。


ふたりは戸口まで近付いて行くと、桃子の抱っこを交代しました。

岩田さんは音を立てないように、ゆっくりと歩きながら、右手にはほうきを握っています。

その指は力が入っていて、ギリギリッと音が聞こえてきそうでした。


相変わらず、家の中からは何も聞こえてきません。


扉の取っ手に指をかけ、ゆっくり横に引いていくのを見守っていると、タイミング悪く桃子が声を上げてしまいます。


「だぁー!!!」


「きゃあ!」

ドキッ!!!と、心臓が跳び上がり

かぐやも思わず声を上げてしまいます。


岩田さんが、かぐやの方を見て「下がって!」と言うと、一気に扉を開けました。


すると、桃太郎が板の間で

上半身を起こした状態でこちらを見ていました。

横になって眠っていたのかもしれません。


「桃子…?」


「だぁ〜」


「ももこーーーー!!!!」

桃太郎はすぐに起き上がって、こちらに走ってきました。

抱っこを代わると、「よかった…よかった…」と泣き出しました。


桃太郎がうさぎとお昼寝しているときに、桃子をお散歩に連れ出していたことを思い出しました。


色々なことがありすぎて忘れていたのです。

今まで、妹がどこに行ったのか分からずに

独りきりで不安だったはずです。


「桃太郎、遅くなって本当にごめんね。

心配したよね」


「うん…

心配だった…けど良いんだよ

無事で良かった…」


桃太郎は、妹に頬ずりしながら言いました。


「ももこ…ごめんね

ごめんね

死んじゃえよ、なんて言ってごめん

本当にごめん

兄ちゃん悪い子だった」


かぐやはハッとしました。


あの森の中で聴いた言葉、

「ジンジャエール」という独り言の正体は

《死んじゃえよ》だったのです。


「ほんとに死んじゃったのかもって…

考えたら不安だったよ

怖かったよ…

兄ちゃんが悪いこと言ったから

桃子もう帰ってこないって思ってた

不安だった

怖かったよ

ごめんね

ごめんね」


桃子はキョトンとした顔で、泣いている兄の顔を見つめていました。


「桃太郎…

私、お散歩に行くって言わなかったよね

ごめんなさい。

私が間違ったのよ

桃太郎のせいじゃないわ

遅くなってごめんね」


「謝らないでいいよ。

あのとき、疲れてて眠くて…

桃子に何処かに行って欲しいって思ってたんだ。

泣いてばかりで、ウルセーナってほんとに思ってたんだ」


「そうだったの…

そういうときもあるよ」


「でも

いなくなって寂しかった」

桃太郎は、妹に頬をくっつけて涙を流しながら

微笑んでいました。

「良かった…良かった…

桃子生きててよかった」


かぐやは胸がキュッとなりました。


《死んじゃえよ》の言葉は嘘だった


桃太郎は桃子を敵だと思っているのかも…と心配していましたが、それは違いました。


地球は大変(タイヘン)なところだから、疲れてしまうときがあるのです。

間違った言葉を言ってしまうときもある

混乱(コンラン)してしまうときもあるのです。


それでも

桃太郎は妹を大切に想っていた


死なないでほしいのに、死んじゃえよと言ってしまうくらい、追い詰められていただけ。


二人に幸せになってほしい

豊かなところで、ずっと素敵な時間を過ごしてほしい


何をしてあげられるでしょうか?


かぐやは自分がいなくなっても、桃太郎とタヌちゃんが友達になれば、きっと楽しい毎日を送れるはず…と思っていました。


しかし、それでは根本的な解決になっていないのです。

このままでは同じことの繰り返しかもしれない…

かぐやはそう感じました。


意地悪な里親と暮らし、大人の役割を引き受ける限り、また同じことが起きるんじゃないか…?


この先また苦しくなったときに、妹に死んでほしいと思ってしまうかもしれない。

《死んじゃえよ》の状況が、繰り返されるかもしれない…

すごく心配でした。


この兄妹には、もっと助けが必要なのです。


「桃太郎くん…今はひとりなの?」

それまで黙っていた岩田さんが口を開きました。


「え…?あ…えっと………。

一応…」


「いつ里親たちは戻ってくるの?」


「……………えっと

もう戻ってきてる…とも言えるけど。

……でも、大丈夫です」


「…どういうこと?」

岩田さんは怪訝な顔をしていました。


「信じられない話だと思うから…」


「桃太郎なにかあったの?」

かぐやは、つい横から早口で声を掛けてしまいました。


「おかしいと思われるかもしれないけど…

姫になら話してもいいかな」


桃太郎は、妹が宙吊りになって叩かれた日のことを話し始めました。


夜でも月の光で明るかったこと

かぐやとうさぎを思い出して気分が良かったこと

里親が戻ってから起こったこと…


「爺さん、婆さんは鬼だった。

なにもできなくて

怖くて

兄ちゃんなのに」


岩田さんは悲しそうな顔で何度も頷き、真剣に耳を傾けていました。寄り添っているのが伝わってきます。


一人だけ穏やかな表情の桃子は、とてもそんな目に遭ったようには見えませんでした。


「そしたら…突然、現れたんだ…」


かぐやは桃太郎の言葉を待ちながら、思い出しました。

早朝、リアル森のカフェに行くと

桃太郎と桃子が身を寄せあって眠っていた日がありました。

その前日の夜に起きたことなのかもしれないと、かぐやは感じていました。


「その人は…

その……

仏様だったんだ!!!

姿も見たから絶対そうだよ!

見間違いなんかじゃないからね!」


桃太郎は大声で、必死に説明しました。

桃子と里親たちの声が突然しなくなったこと

仏様と話したこと


順を追って話してくれました。


「仏様を見たんだ

声は小さくて、やさしい声だったよ

身体が光ってて

おでこに…たぶん月のマークがあった」


「桃太郎くん、大丈夫ですよ

嘘なんて思っていないからね?」


「ありがとう…」


「大丈夫ですよ」


「仏様は、爺さん婆さんに言ったんだ

ノミからやり直せって

ほら………

あの中にいるよ」


桃太郎が指差した方向には、水や穀物を蓄えるための

大きなかめが置いてあります。


「え…?あの中って…?どういうこと?」

かぐやは驚いて、その瓶に近付きました。


「ノミになったんだ」


少し離れたところから瓶の中を覗き込みましたが、

中は真っ暗で何も見えません。


「仏様は…瓶に栓をしなかったんだ」


「仏様は寛大ですね」

岩田さんは慈悲深い表情で、けれどもキッパリと言いました。

「助けてと叫んでも、誰にも聞こえない場所で、

これからはノミとして経験を積むんですよ」


「でも…!!栓をしないと!

倒れたりしないか心配で…」


「…それも運命です。

ノミとして何ができるのか考えて生き抜くんです」


「生き返らない?」


「大丈夫ですよ。

そんな酷いことは、もう起こりません」


「どうして…分かるの?」


岩田さんは、口を開きかけたまま

桃太郎のことをしばらく見つめていました。


「人間には…

すごく辛いことが起きる時がありますよね」


「うん…」


「わたしにも、そういうときがあったんですよ

けれど…今は乗り越えて、幸せに生きています」


「なにがあったの?」


「………そうね

今も思い出すと凄く辛いけれど…

でも…

そうね…

話すべきですね

私は昔…

お母さんだったことがあるんです」


「……だった?」

桃太郎はすぐ違和感に気付きました。


「……私の娘は亡くなったんです」


「え!そんな………」

かぐやは驚いて声を上げると、

初めて岩田さんに会ったときのことを思い出しました。

そうだ、桃子と同じ年の子供がいると言う割には、

『娘をよく抱っこして《いた》』と、言葉は過去形だったのです。

桃子を見つめる優しい眼差し。

そして、初対面の赤ちゃんが心配で、お祓いをする為に神社にまで連れて行ってしまったのは、そういう悲しい事情があったからなのでしょう。


「たけっていう名前でね…

よく笑うんです。

とっても元気で、桃子ちゃんとよく似ていますよ。

前日まで普段通りだったのに、突然…

あの子はなにも悪いことなんてしていません。

だから…

竹なんて名前を付けたのが悪かったんじゃないか?

ほら、竹って凄く縁起がいいでしょ?

強い子になってほしいなんて、欲を出したからじゃないか?とか…

たくさん自分を責めました」


岩田さんは姿勢を崩すことなく、

軸のある、よく通る声で話してくれました。


「けれど、死のうと思ったことはありません。

あの子が成長したかった分、母であるわたしが成長しようと思ったんです。

それから…人が死ぬ日は決められていると信じるようになりました。

どんなにいい子でも突然亡くなってしまうことが起きるんだから。

でも、

その日までどう生きるかは決められますよね?

仏様にノミにさせられてしまうような生き方をするのか。

人を許し、時には許され、安心させてくれるかぐやひめのように生きるのか。

私はもう年ですが…

かぐやひめのように生きたいと思っているんですよ」


かぐやは予期せぬ褒め言葉に驚きました。


桃太郎を見ると、「分かりそうで分からない…でも大丈夫ってことだよね?」と岩田さんに尋ねていました。


「大丈夫よ

桃太郎くん

何度でも教えてあげるからね」

岩田さんは優しく伝えました。


《かぐやひめのように生きたい…》

村の子どもや若いお母さん達の為に、食べ物を配る

たくましい桂女が、自分のように生きたいと言ったのです。

そんなふうに褒められたのは初めてでした。


「桃太郎くん。

おばちゃんも勝手に桃子ちゃんを連れ回してしまったんですよ、ごめんなさいね。

でもね…かぐやひめは、わたしのことを責めなかったんです。

今の桃太郎くんみたいに、とっても優しく許してくれたんですよ。

そんなあなたにこれ以上、不幸なことなんて起きません」


岩田さんは、桃太郎の荒れてガサガサになった小さい手を取って言いました。


「よくこんなところで、ずっと頑張ってきましたね。

おばちゃんに助けさせて」


桃太郎は、それを聞いて、うわぁ~んと泣き声をあげました。

それまで溜めてきたものが一気に湧き上がるように

「つらかったよぉ

かなしかったよぉ」と大声で泣きました。


桃太郎は岩田さんに抱きついて泣きじゃくりました。


「怖かったね、もう大丈夫だからね」

桃太郎の背中を優しく擦ってあげている彼女の姿は、輝いて見えました。


地球にも神様はいたんだと分かったのです。


地球ここは、たしかにサイコウに大変タイヘンな場所です。

「助けて」が、かき消されてしまうような

救われないひとたちが住むところなのだから…。


けれど、

目の前には、混乱コンランする大人ではなく、

少年サイコウにカナシイを助ける、困難を乗り越え駆け抜けてきた立派な大人がいました。


きっと

うさぎがいたら言うでしょう


聞いたことがない

すごい素敵な音がすると。


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