44話 一般的なイカれた狸
幸せで豊かな【月の中】で暮らしている
うさぎとかぐやは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た、現代も大昔も不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりは、サンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
神様に許可をもらって、地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで、
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
かぐやとうさぎは、自らの過去と向き合い、地球で磨かれ、深みのある存在へと成長していく。
「まっまってくださいよぉー」
フカフカのうさぎは、どんどん先へ進んで
あっという間に小さくなってしまいました。
木の少ない林の中なので、白色はかなり目立っていますが…
「ねぇー!!……ちょっとぉーーー!!」
それでも、一切の遠慮なく先へ行ってしまうので
見失ってしまいそうでした。
「はぁ…
はぁ…
ほんとに…しんじられません…
これだからうさぎは…」
林の中は見通しがよく、人間がいないことはすぐに確認できます。
狸は一旦止まって、呼吸を整えることにしました。
「はぁ…
はぁ…
あー…もう!
はぁ…
やっぱり…うさぎはうさぎですね…
おいついたら うしろからけっとばしてやる
それから…
けを むしって…
ぶっとばしてやる!!!!」
狸だって速いんだぞ
今はちょっとポッチャリで遅くなっちゃうけど…
くそぉ…
狸だって…
すごいんだからな…
下を向いて、ゼーゼーハーハーしていると
うさぎが猛スピードで戻ってきました。
「大丈夫〜?」
かぐや姫の親友は、ほんとうに心配そうな表情で
こちらを見ながら声を掛けてきました。
「…すこしは、たぬきにあわせてくださいよ!!」
イライラしているので、キツイ口調で言い捨てました。
これだから、うさぎは!!
「ごめん、ごめん。どうしても周りのこと見えなくなっちゃって」
うさぎは狸を気遣っているのか?隣に並び立ち止まっています。
「……はぁ
ところで…きになってたんですけどぉ…
ももたろうくんって、どんなコですか?」
実際のところ興味はありませんでしたが、かぐやひめの友達なので一応聞いておくことにしました。
「うー…ん
妹の面倒みてる良いお兄ちゃん…かな」
「ふむふむ」
「うん…
で、助けてほしいって言わないんだよ」
うさぎは、さっきよりもずっとゆっくりの速度で前へ進み始めました。
「どーいうことですかぁ?」
「何聞いても、大丈夫としか言わないんだ
全然大丈夫そうじゃないんだけどね。」
「へーー…かぐやひめみたいですね」
「え?…………そんなことないよ」
「そんなことありますよ」
「全然似てないし…どこが?」
「かぐやひめ、《いいのよ》って、よくいいますよねー
よくないときも、いってますよ」
「え…そうかな」
「はい、そうですよー」
チラッとうさぎを見ると、眉間にシワを寄せて考え込んでいました。
ふん…なにが親友だ。
全然かぐや姫のこと分かっていないじゃないか!
コイツは、かぐや姫の親友に相応しくないかも!
やっぱり、うさぎはうさぎだから。
「タヌちゃんは、よく見てるね!凄いよ!」
「……いや、べつに。」
「タヌちゃんは、かぐやのこと大好きだよね!」
「それは!もちろん!!
かぐやひめは、サイコーです!!
たぬきをみても、にげるどころか
カワイイ~っていってくれました!!
ほんっとうにステキなひとです!!」
ふと見ると、うさぎは狸の話をニコニコしながら
聞いていました。
なんなんだよ…
調子狂うなぁ…
「そっそれに!」
「それにー?」
「タヌちゃんのこと…トモダチって…
いってくれました」
「うん!そうだね!友達だよね!」
「………はい。はじめてできたトモダチなんです」
「え?そうなんだ!」
「はい…たぬきは、きらわれていますから」
「そーなの?そんなことないでしょー」
こいつ…
本心なのか?
このうさぎの反応は、かぐや姫とよく似ていました。
本当に狸のことを何とも思っていないみたいなのです。
狸と言えば…邪悪という設定を本当に知らないように見えます。
そんなまさか…
もぐらでさえ知っているのに。
「あっあのねー僕らの住んでいるところでは
狸の神様がいるって言われているよ!」
「はぁ!?
そんなわけないですよ!!」
「ほんとだよー
まぁあんまり詳しくは……アレだけど。
神通力を持つ狸が、神様として祀られている神社もあるんだ!」
「……たぬきが
かみさまのチカラをもってる…?」
「変幻自在の神通力さ!かっこいいよね!!」
こいつ…
正気なのか?
狸はとてもズル賢いのです…騙すことはあっても、騙されることなんてありません。
このうさぎ、とても嘘をついているようには見えません。
なんというか…やっぱり…
かぐや姫と同じものを持っていると感じてしまうのです。
認めたくないけれど
狸には無いものです。
うさぎは、機嫌の良さそうな顔をして
スイスイと走っていました。
駆け抜ける姿は、颯爽としていて
白い美しい毛並みは、ツヤツヤと光り輝いているようです。
狸がずんぐりむっくり、格好の悪い走り方で進んでいるのに対して、うさぎは本当に絵になるようなカッコよさでした。
羨ましい
ほんとうに。
なにもかも。
あのカチカチ山のトンデモない爺さん婆さんでさえ、
どこかのうさぎを可愛がっていた。
人参やらカブやら用意して、
フカフカの毛並みを撫でていたのを見たことがあるのです。
狸には、近くに来るなと石を投げつけてくるというのに。
誰も喜びやしない
狸なんて価値がないんだから
ゴワゴワした手触りの悪い、狸の毛なんて誰も喜ばない
邪悪だの狡猾だの言われ
終いには、たぬき汁にしてやる!と命の危険に
さらされる。
ツヤツヤさらさらの毛並みも
よく聞こえる耳も
速く走れる足も
狸には無いんだから
美しい心もね…
「タヌちゃん?」
「え?あぁ…アハハ…」
狸はうさぎと違うんだから…仕方ない
そういう運命なんだから。
ちょっと待って!と、うさぎは急に立ち止まりました。
耳をピン!!と立てて、音を聞いています。
「人の声が聞こえる
大人の男…」
なんか聞いたことあるな…と、目を閉じて集中しています。
狸には何も聞こえません。
この辺りは、さっきよりも木の数が増えていましたが、いつもの見慣れた林であって、人なんてどこにもいないのです。
「かなり離れているけど、何となく胸騒ぎがする。
………タヌちゃん、急ごう」
「はい」
全くもって胸騒ぎなどしない狸は、使いものにならないな…。
いや…うさぎが優秀すぎるのか。
なんだってこうも違うのか。
少しくらい狸が勝っているところあるだろう…
どこか少しくらい
ふたりは林の中をキョロキョロしながら
走りました。
例えば、その木の陰から
猟銃を持った人間が現れて、うさぎを撃ち殺したら面白い
そうしたら…
狸は石にでも化けて
やり過ごそう
これは狸にしか出来ない芸だ。
そりゃ狐の化ける能力も凄いけれど。
それから、ご所望なら狸がうさぎにトドメをさしましょう
背中を燃やしてやっても良いかもしれない
そしたらフカフカがヂリヂリッ!!と燃えて、
狸の毛みたいにゴワゴワの硬い毛になるかもしれない!
爆笑!!
なんつって。
冗談
冗談
全く…これだから狸は…
ふふふ
だから嫌われるんだよ。
一旦、地獄にでも行かないと
治らないんだよ
狸の頭は、イカれてるんですから…
うさぎの次くらいに。




