43話 桃太郎のために
幸せで豊かな【月の中】で暮らしている
うさぎとかぐやは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た、現代も大昔も不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりは、サンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
神様に許可をもらって、地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで、
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
かぐやとうさぎは、自らの過去と向き合い、地球で磨かれ、深みのある存在へと成長していく。
チュン…
チュン……
チュン………
小鳥のさえずりが、少しずつ大きくなっていき…
規則的な鳴き声は、
ちょっと…
ちょっと……
ちょっと………
と聞こえました。
「なにぃ!!?」
かぐやは、小鳥の呼びかけに答えて、飛び起きました。
「え?」
隣で眠っていたタヌちゃんが返事をしてくれました。
「あっ…………あれ?
ごめんね」
朝になり、木々の間から朝日が差し込み
たぬき池は更に明るくなっていました。
「やっと起きた!
ふたりとも、おまんじゅう食べよう!
すぐ出発するよ!」
うさぎと岩田さん、そして桃子はこちらに視線を向けています。
「ふぁ〜
ちょっと待ってよ…
うさぎが寝たから私も寝ちゃったのよー?
タヌちゃん、大丈夫?疲れてない?」
「はい!ダイジョブです!たぬきは、ねおきがいいんです!」
一同は、おまんじゅうをササッと………とは、いかず。
よーーく噛んで食べました。
ふと見ると、タヌちゃんがほっぺにおまんじゅうを溜めて、モニュモニュ味わっています。
可愛くて頬をツンツンしました。
ニコニコと微笑むタヌちゃんに「美味しいね」と声を掛けます。
対するうさぎは、明らかに桃太郎のことで頭がいっぱいで、なにも食べずにソワソワと動き回っています。
「うさぎ、食べないの?」と声を掛けても、
右へ移動して足をタンッタンッタンッと鳴らし
耳を立てて「まだ、やっぱり聞こえないなぁ」と深刻そうな声で呟きます。
左へ移動して、足をタンッタンッタンッと鳴らし
「はぁ…綿棒持ってくればよかった…」と独り言を呟いていました。
それから、食べ終わるとすぐにタヌちゃんが歯磨き用の木の枝を渡してくれました。
みんなで歯磨きをしてから、たぬき池を出発しました。
あの村の中を、全員で歩いて通るわけにはいかない…との話になり、
林を真っ直ぐ突っ切って、とりあえずリアル森のカフェに行くか、もう一度村に桃太郎が到着していないか確認しに行くか…
今後の道順を話し合いながら前へ進みました。
「二手に分かれるほうがいい気がするわね」
「そうですね、では…私は村に立ち寄ってみましょうか?」
「僕は、リアル森のカフェにもう一度行ってみようかな」
「そうね…うーん………
うさぎの探していないところってどこ?」
「え!全部探したよ!本当にどこにもいなかったんだ」
「ももたろうくんのおウチもですかぁ?」
タヌちゃんが言いました。
「あっ」
うさぎはハッとしました。
「そっか…かぐや。
僕……あの里親と住んでる家
……行ってない」
「そうなの?!じゃあそこよ!…………あっ」
「なんだぁー
おウチにいるってことですかー」
かぐやとうさぎは黙り込みました。
「どーしたんですかぁ?
かぐやひめぇ
タヌちゃん、いいこといったでしょ?」
「………うん、でも」
「…………」
ふたりは忘れていたことを思い出し、光が見えたはずなのに、表情が明るくなることはありませんでした。
うさぎは苦しそうに
「そんな…
まさか…
ねぇかぐや。
だから音聞こえないとか言わないよね?」
と、言いました。
「どういう事ですか?」
それまで黙っていた岩田さんが心配そうに尋ねます。
「桃太郎が棒で叩かれていたのを見たことがあるのよ」
「えぇ!!!!!!???」
タヌちゃんは大声をあげました。
「里親にですか…?
そんな…なんて酷いこと」
「顔がぼっこり腫れて、しばらくアザになってた」
岩田さんはうさぎの言葉を聞くと
抱っこしている桃子の足をもう一度確認しました。
「もしかしたら…と思っていましたが
そうだったのね
急いだ方がいいですね」
みんなで、急ぎ足でたぬき池の森を抜けました。
そこから、
草が鬱蒼と生い茂る里道を走ると、あっという間に小さい看板が見えてきました。
かぐやは、前日の雨で濡れた苔に足を取られ、滑りそうになりながらも一生懸命進みました。
うさぎとタヌちゃんは、スイスイとかなり前を走っています。
かぐやは後ろを振り返り、桃子を抱っこした岩田さんが、遅れて追いかけてきているのを確認します。
しかし、このままでは距離が開きすぎるので一旦止まることにしました。
「ねぇ!!待って!!!」
前を走るうさぎに呼びかけると、うさぎとタヌちゃんはすぐに止まってくれました。
觔斗雲を使えば、かなり速く進めます。
また…ルール違反ですが、桃太郎の為
使うべきだと感じていました。
……無責任だと思われるでしょうか?
しかし、うさぎとタヌちゃんのスピードについていくのは無理があります。
「ねぇ、觔斗雲使おうと思うのよ
どうかな?
私たち遅いから、このままじゃいつ辿り着けるか分からないわ」
うさぎは一瞬迷った顔をしましたが、かぐやの決断を支持してくれました。
「うん!いいと思う」
すぐにネックレスを外して「岩田さん、タヌちゃん!細かいことは後で説明するわね!今はこれが必要なの!」かぐやは觔斗雲を取り出しました。
ブワァァン!!と小さいネックレスから、大きいフワフワの雲が飛び出してきました。
「うぎゃぁぁぁあああ!!!!」
驚愕するタヌちゃんの叫び声と、
「キャハハハ!!!!」赤ちゃんの可愛い笑い声が重なり……觔斗雲が里道に登場したのです。
「なっなっなっ!!クッ……クモ!?」
「そう!雲よ!」
「はぁ!?あなた……ナニモノなんですぅ!?
やっやっぱり、かみさまなんですね!?」
「んなわけないでしょ」
タヌちゃんはビックリして、ギャーギャーーと何かを言い続けています。
岩田さんは、大喜びの桃子を抱っこしながら
口をあんぐりと大きく開けていました。
「乗りながら説明するわ!タヌちゃんとうさぎは走ってね!」
「え…」
「うん!分かったよ!
ねぇ、かぐや、僕らリアル森のカフェに寄ってみる!もしかしたら桃太郎がいるかもしれないし」
「え?いま、ぼくらっていいました?」
「分かったわ!!!うさぎ!よろしくね!」
「うん!
タヌちゃん!行こう!」
「えええぇー!!?ふたりぃーー!?」
「そうだよ!ついて来て!!」
うさぎは光の速さの如く駆け抜け、
スタートダッシュを決めました。
「ふたりとも、また後でね!!!」
「かぐやひめも、おきをつけて〜
うわぁー
はやいよぉーまってぇぇぇえ!!」
タヌちゃんがタプタプお腹を揺らしながら、うさぎを追いかけて走り出しました。




