40話 解決策
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで
うさぎとかぐやは、
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、深みのある存在へと成長していく。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
岩田さんは、
頭を深く下げて謝り続けています。
「良いのよ」
「…う…、打ち首では無いのですか?」
「…………あぁ (地球のお家芸のアレね)
そんなことしないわ」
岩田さんは身体を起こすと、
「え"!!!?
ぎゃあぁぁ!!!」
顔を上げた途端、急に叫び出しました。
「ひゃあ!デカいこえ!」
「たったったっタヌキ!!!!??」
かぐやの背中から、チラチラ様子を覗っていたタヌちゃんの顔が見えてしまったようです。
「あぁ〜友達なのよ、驚かないで」
「えぇぇ!?でっでも!!」
逆に、タヌちゃんを見て
「きゃは!!」と可愛い声をあげている桃子は、
身を乗り出して手を伸ばしました。
「だっ駄目ですよ!!桃子ちゃん!!」
「ひぃぃぃ…
かぐやひめぇぇ」
タヌちゃんは、かぐやの背中にピッタリくっついて
隠れてしまいました。
「タヌちゃん大丈夫よ
岩田さん、ちょっと冷静になってくれる?
この子は私の友達なのよ」
「はっはぃ…
ええ…
あなたがそう言うのなら…
その……
高貴な方はタヌキとお友達になるのですか?」
「私は、高貴な人ではないわ。
ただの通りすがりの異国から来た人って感じ。
あとタヌキじゃなくて、タヌちゃんよ」
「は…はい。
すみませんタヌちゃんさん」
岩田さんは丁寧に謝りました。
タヌちゃんは顔をヒョコっと出して
「…ダ、ダ、ダイジョブです!!」と言いました。
かぐやは手を回して、うさぎよりも硬いゴワゴワした背中をトントンしました。
「いろんなことが起きるわよね」
「だぁーーーー!」
またしても、
タイミングのいい赤ちゃんが、元気よくお返事しました。
かぐやとタヌちゃんは声を出して笑いました。
ふと見ると、岩田さんはひとり申し訳なさそうに、悲しい表情をしています。
「………。」
ついに、俯いてしょんぼりしてしまいました。
「どうしたの?大丈夫?」
「本当にすみませんでした…。
ご心配おかけして…
桃子ちゃんの足や背中の発疹が気になって……」
「良いのよ。
おいねさんに聴いたわ、桃ちゃんの為にお祓いしてくれたんでしょ?」
「おいねちゃんに?そうでしたか…
それでここが」
「うん、その前には、ことちゃんときくちゃんに会ってね。おいねさんのこと教えてくれたのよ」
「そうでしたか…本当に良かったです。
よくあの子たちから、おいねちゃんの事を聞き出せましたね」
「?
普通に教えてくれたわよ」
「あの子たちは、とってもお転婆で手がつけられないんです。
根は良い子なのですが。
いつも、おいねちゃんに叱られているんですよ。」
「へーー…
そーなの?すっごく良い子たちだったわよ〜
どっちかと言うと大人のほうが変だったけど?
おいねさんは良い人だったけど」
「え…?そうですか?」
「うん。
赤ちゃんを抱っこした桂女を見なかった?って聞いているのに、全然伝わらないの。
ヒィ!とか、はいぃ!!しか言わないのよ?」
それを聞いて、岩田さんは笑い出しました。
「?
どしたの?」
「いぇ…ふふふっ
すみません
桂女が持っているのは桶であって、
赤ん坊では無い…と思ったのでしょうね。
それに、かぐや様はどうしても高貴な方に見えてしまいますから、粗相のないように緊張していたのかもしれません。」
「うーーーん…
それもあるかもしれないけど?
でも、姫って皆あんな感じなんだ〜って、悪口言ってくる村人もいたのよ!」
「それは…まぁ、なんてこと」
「そう!ムカつくでしょ!?」
岩田さんは、上品に笑いながら頷いていました。
「あそこのひとたち
おもいこみがつよいんですょ」
タヌちゃんが背中にくっついたまま言いました。
「え?そうなんだ」
「はい…
タヌちゃんをみると、ばかされる!って
ころされそうになったこともあります…」
「タヌちゃんも馬鹿にされたの?」
「化かされるってことですね。
確かに…ごめんなさい、わたしもそう思っていました。
狸は人を騙すと言い伝えられています。
なるべく近寄らないように…と。」
「ええ!!そうなの!?」
「たしかにタヌちゃんは
たぬきねいり しますよ。
そのうち
ほんとーに ねちゃいますけど…」
「可愛い〜」
かぐやと岩田さんは揃って微笑みました。
「かっ…かわいくはナイですょ…
タヌちゃん
ほんとうに ばけられますし」
「えー!?そうなの!?
やってみてよ!」
「え"え"!!!!?」
タヌちゃんと岩田さんは、揃って驚いた声を上げました。
「だっだめですよ…ここ じんじゃですよ?」
「え?駄目なの?」
「いっ一応…神聖なところですから。」
岩田さんは控えめに抗議しています。
「へー知らなかったわ
じゃぁ
タヌちゃん、また今度化けて見せてね!」
「は…はぃ」
そろそろ、参りましょう。
岩田さんの声掛けで、神社の階段を下りました。
来た道を戻っていく途中、
桃子の「うぅ〜」とか「だぁー」とか…
可愛い声を聞いていると、ジワジワと晴れやかな気分が胸に広がっていきました。
本当によかった…
チラッと抱っこされている赤ちゃんを見ると、
自分の指を一生懸命「ハムハムッ」としゃぶっています。
再会してから、終始ご機嫌なのです。
いろいろと口に出すと、
岩田さんが気にするかもしれないので
心のなかで、無事でいてくれた喜びを
感じることにしました。
ジワッと涙が滲んでも、少し我慢すると
涙は無くなっていきました。
感動は、徐々に一段落して安心に変わっていきます。
すると、次は月へ帰らなければいけないことを思い出しました。
特に、タヌちゃんにどう説明すればいいのか考えました。
一緒には帰れません。
けれど、タヌちゃんをひとりぼっちにするのも、まだ早い気がしたのです。
隠れてビクビクしているのを見ると、大丈夫かと心配になってしまいます。
タヌちゃんを岩田さんにお願いするのは………?
一緒にいる人が存在するのは、心強いけれど
狸にあまり良いイメージが無かった人に協力してもらうのは、少し不安を感じます。
きくちゃんやことちゃんは?
うさぎを見た反応から、あの子たちはタヌちゃんとも仲良くしてくれるはずです。
しかし、二人の親はどうでしょうか…?
特にきくちゃんの父親は、呪いうさぎと騒いで
お饅頭を配っていたうさぎを追い掛け回すような
大人なのです。
タヌちゃん自身も、村人たちに殺されかけたと言っています。
かぐやは解決策が全く思い浮かばずに
少し焦りが出てきました。
桃太郎と桃子のことも心配です。
うさぎが言うように、自分たちが地球に戻ってくるまでの間、二人には友達が必要だと感じます。
あの里親に育てられている兄妹に、何をしてあげられるでしょうか?
タヌちゃんと桃太郎と桃子
三人…
いや二人と一匹……………
「あーーー!!!!!
そっか!!!そうよ!」
「ひゃあ!デカいこえ!」
「どっどうしたんですか!?」
タヌちゃんと岩田さんは、大きい声にビクッと反応しました。
「ごっごめんね!
つい!
ちょっと、考え事してただけよ…」
かぐやはひとりで目を輝かせていました。
《桃太郎とタヌちゃんが友達になればいい!!!!!》
今までにない、超ミラクルな名案です!
桃太郎はうさぎのことが大好きで、
あの村人たちのように、呪いうさぎ!なんて言葉は
一度も言っていません。
きっと、狸に対しても変な思い込みはありません。
タヌちゃんと一緒なら、桃太郎も嬉しいはずです。
リアル森のカフェにタヌちゃんが住んでいるイメージがフワッと湧いてきました。
あの石のテーブルのうえに
果物を並べて、楽しく過ごしている姿が目に浮かぶようです。
それは地獄ではなくて、最高の天国で過ごすリニューアルしたタヌちゃんです!
かぐやは一気にワクワクしてきました。
タヌちゃんも、桃太郎と桃子に会える時間を大切に思ってくれるはず。
やっぱり
神社は凄いと感じました。
どうしたらいいのか全く分からないところから
一番素敵な解決策が思い浮かぶのだから。
ニヤニヤを隠せないくらい、素敵なアイディアなのです!
「かぐやひめ…?わらってます?」
相変わらず、背中にくっついているタヌちゃんは、
かぐやの肩から身を乗り出して、ニヤニヤ顔を覗き込んできました。
「なんでもな〜い」
「え〜なんですかー?
あー
タヌちゃんも たまに
おもいだしわらいしますよ〜」
この名案を伝えるのは、桃太郎のところに戻ってからのお楽しみです。
「ねぇねぇ ひめひめ〜
あるひ
タヌちゃん カブをとってきたんです。
でも
つぎのひ
あれー?ないー?
ってさがしてて。
もしかして
じぶんでたべたのかなぁ?って
おもったんです。
アハハ〜
でも!そんなはずないですよね。
やっぱり!
たべてなかったんです!
ちかくに いぬの あしあとをみつけたんです!
だから
そのいぬっころの あしあとをたどって
おいかけて
みつけだして
それこそ ばかして
とりかえしたんです!
たべもののうらみは こわいんですよー
アハハ〜
ねてるあいだに とるなんて
ゆるせないですよねー
それから
いぬのこと にがてなんですよねぇ」
タヌちゃんのマシンガントークが、空気のように自然なBGMに感じます。
かぐやはホワホワほくほくと幸せを味わっていたのです…
解決法が見つかってホッとしたのか、眠くなってきました。
あの大きな鳥居の近くに戻ってくる間、
タヌちゃんは『カブと言えば〜…』と続きを語っていました。
野菜や果物のことをアレコレ教えてくれているのです。
かぐやは貴重な話を、劇中歌のように聞いていました。
鳥居のすぐ近くまで来ると、
近くの白い砂に混じって、
質感の違う白色がフワフワッと動くのを見つけました。
あれは…
見たことあるフカフカです。
「ねぇ!?
まさか、うさぎなの!!!!?」
かぐやは一気に眠気が吹き飛びました。
「ひぃぃいいいい!!!!!うさぎぃぃ!!???」
タヌちゃんは驚いて、かぐやの背中から飛び上がって
転げ落ちました。




