38話 どうせ地獄なら
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで
うさぎとかぐやは、
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、深みのある存在へと成長していく。
「一緒に行こう
きっと上手くいくよ」
かぐやは手を伸ばしました。
タヌちゃんは、更に表情を曇らせプルプルと小刻みに震え出しました。
「ここから、でていくのですか?」
「うん」
「タヌちゃんとおひめさまで?」
「そうだよ、一緒に行こう」
「う…う…でも…
でも……
そんなことしていいんでしょうか…」
タヌちゃんは戦々恐々として、怯えた声を出しています。
「ずっとここで泣いてるほうがいいの?」
「いや
いやです!!」
「じゃあ、行こう。
ここにいても地獄じゃない?
どうせ地獄なら
やってみたいことやってみよう
きっと上手くいくよ」
「うぅぅぅ…
でもでも…
こわいです…」
タヌちゃんは目に涙をためて、唇を噛んでいました。
「大丈夫だよ
怖いままで。
一緒に行こう」
「うっ…、うっ…」
タヌちゃんは最後の一押しで、
うわぁぁん!!と大声で泣き出しました。
かぐやに抱きついて
悲しそうに
けれど喜びを噛みしめるように
大声で泣きました。
「ずっと一人で頑張ったよね」
「うわぁぁん!!!!
…ひっく…ひっく」
かぐやは、タヌちゃんを抱っこして
よしよしと背中を擦りました。
青い池に描かれる、雨粒のまぁるい円たちは
いつの間にか消えていました。
風がある訳でもないのに、水面が揺れて光が反射し
多方向にキラキラと輝いていました。
視線を、更に先に向けると神社へ続く一本道にも
光が差し込んでいました。
かぐやは、
「きっと上手くいくよ」と言いました。
「…ここから ながめる おツキさまも
すきでした
でも
おひめさまといっしょなら!!
ここをさよならします」
「うん、そうしよう!」
かぐやは微笑んで
「きっと楽しくなるよ!」と言いました。
「はい!」
タヌちゃんは涙を拭って、キラキラした目でかぐやを見つめました。
「タヌちゃん、はじめてトモダチができました!」
「友達だね!」
タヌちゃんの小さな手を握ると
涙で湿っていました。
かぐやには、
更にその先のことは分かりません。
月に連れていくことはルール違反ですし、
タヌちゃんとずっと一緒にいることはできないのです。
それを今伝えてしまうと、
タヌちゃんは一生地獄から動かない気がしました。
自分のしていることは間違っている
無責任な気もしたのです。
それでも、タヌちゃんがココで生き続けるのは
幸せじゃない。
とにかく、この場所から動けるようにしてあげたいと感じたのです。
かぐやは、月という異国から来たことをまだ伝えないことに決めました。
「タヌちゃん、私神社に行きたいのよ
年配の女性もいると思うけど大丈夫?」
「ひっ…
えぇ…
なんとか。
かくれていますので…ダイジョブです!」
「じゃあ行こっか!」
「おひめさま
これ、さしあげます!」
「え、いいの?」
タヌちゃんはお手製の膝掛けを、かぐやに渡しました。
そして、ニコニコとしながら先を歩き出しました。
「かたに かけて つかってください!おひめさま!
ひえますから!」
「あっ
私ね、かぐやっていうの」
「かぐやさまですかぁ〜ステキなおなまえです!」
「かぐやでいいわよ」
「えー…
それはちょっと……
うーーーん
なにがいいでしょうか」
「だから、かぐやだって」
「じゃあ!!《かぐやひめ》ってどーですか?
タヌちゃんもよびやすいです!」
「…………………………いいじゃん」
ヒャハハハ〜!!!という
ふたりの楽しそうな笑い声がタヌキ池に響いて
水面が揺れています。
木々の隙間から、タヌちゃんが大好きな月が
キラキラと輝き始めました。
けれど、
かぐや姫とタヌキが出会った特別な一日、
空を見上げることはありませんでした。




