23話 友達が必要だ!
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで
うさぎとかぐやは、
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、深みのある存在へと成長していく。
うさぎは帰り道を走りながら、
かぐやとふたりで、日本の古典文学にハマっていたときの事を思い出していました。
ちょうど走っていたからでしょうか。
かぐやが、走れメロスの足の速さにひどく感嘆している姿を回想していたのです。
一方、その頃のうさぎは、地獄変を読んで心が激しく揺さぶられていました。
美しい感動とは違います。
地球の日本人が綴る、独特な暗い雰囲気…。
それまで指輪物語やチョコレート工場の秘密など…
冒険、希望と愛のある物語を愛読していたうさぎは、日本の闇深い文学――とくに芥川龍之介の堕ちてゆく地獄の世界に惹き込まれました。
「あくたがわりゅうのすけは、天才!」
その頃の薄っぺらいうさぎにも、問いを残したのだから。
良秀の娘のことが気になりました。
娘のカナシイ魂は、どこに行くの?
検索しようとして、
かぐやに「それは作り話なのよ、うさぎ」と、冷めた声で止められたことを思い出しました。
うさぎは走る速度を落としていきながら、
フワッとなにか心に引っ掛かるものを感じました。
「うーん…?
あ〜
図書館の本だったかな、返してないっけ…?
………。
それより明日なにをしたらいいかなぁ」
今は文学のことよりも、考えなければいけないことがありました。
深みのあるうさぎは、考えることが沢山あるのです!
明日は、地球で過ごす最後の一日。
「すぐ地球に戻ってこれると良いんだけど」
また嫌なことを思い出して、一気にうさぎの表情は曇りました。
「とりあえず、かぐやに月に戻ろうって話さなきゃね!!
それからそれから
おまんじゅうを桃太郎に二箱渡して…
それからそれから
どこかの村で一箱配って喜んでもらって…
それからそれから
…もし
かぐやがずっとキーキーしてたらどーする?
うーん
月でMoonシェイクを用意してあげたら
機嫌もすぐ直るよねー?
そのあと
またふたりでおまんじゅうを作らなきゃね!!」
かぐやのことを思い出していると
たとえキーキーしている姿でも、うさぎの気分は少し良くなっていることに気付きました。
親友の力かもしれません。
「あっ!そっか!!
桃太郎と桃子も、僕みたいに友達がいたらいいのかも!!」
キーキーするときは、うるさくて鬱陶しいけれど
大体すぐ仲直りして、ふたりで楽しく過ごしています。
親友の力です!
お菓子工場にお手伝いに行った日は、
作戦を練って、どうやってつまみ食いをするか?話し合いました。
ふたりでダラダラしたい日は、
なにもかも面倒くさいので、うまいスティックを半分個して食べるのです。
かぐやがm.uでお手伝いをする日は、必ず邪魔をしに行きます。
窓から覗いて、変な顔をして笑わせるのです。
「なにやってんのよ、馬鹿じゃない?」と、ツッコまれるまで続けるのが面白いのです。
もちろん、ふたりで別々の本を読んで、何も話さず
知的に静かに過ごしていたこともあります。
どんなときも、ふたり一緒なら何だか満たされていました。
「そうだよ!桃太郎には友達が必要だ!」
桃太郎に友達が出来れば、地球に戻ってくるのが
少し遅くなってしまっても大丈夫だと感じました。
「名案だ!!
明日、村で見つけなきゃね!」
うさぎは、また解決策が見つかって嬉しくなりました。
草むらを走りながら
うさぎ特有の可愛いジャンプをしました。
ダッシュ!
ジャンプ!
ダッシュ!
ジャンプ!
それから、首を振りながら猛ダッシュしました。
ビュン!ビュン!と走ると
メロスより速いかもしれません!
超!高速なのです。
メロスは本当は歩いていたとか、
低速だったとか…そんな考察もありますが…
うさぎにとって、そんなことはどうでもいいのです。
「もっと速く走るぞぉぉおおおーー!!」
ーーーーーー
ーーー
ーー
ー
あっという間に、景色は変わり
うさぎがリアル森のカフェに到着したとき
かぐやは座って、m.uの着物を畳んでいました。
隣では、段ボールの中で桃子がスヤスヤと眠っています。
かぐやはすぐにこちらに気付きました。
「あ!うさぎ!!もーーーー遅いわよー!!」
「ごめんごめん
配達だからさっ
でも、遅くなったお陰で良いことを思いついたんだ」
「もーーなんなのよぉ?」
「桃太郎に友達がいたらいいんじゃないかな?って思ったんだよね」
「……は?」
「だからー
友達だよ
僕たちみたいに。
そしたら地球で過ごすのが少しはタイヘンじゃなくなるよね?って思ったのさ」
「…そんなこと?」
「えっ」
「そんなの分かってるわよ!
だから今あたしたちが一緒にいるんでしょ。
それより!
なんで配達に行ったわけー?
今日は一緒に遊べると思ってたのに!!!!」
うさぎは、腕を前に出して手のひらをパーにした
『待って!!』のポーズを取りました。
かぐやがキーキー言うときに、『それは言わないで』の大袈裟な姿勢なのです。
「ちょっと!
かぐや
その前にさ
言わなきゃいけないことがあって…
もうおまんじゅう無くなるから、一旦月に帰らないといけないんだよね」
「はーーー!??もう!?」
「……うん」
「もーー!!!!!!
うさぎったら配りすぎなのよ!!ばか!!」
かぐやは、眉を吊り上げ、口をへの字にした
地球特有の恐ろしいヘンテコな顔で言いました。
「ちょっとちょっと……
桃ちゃん寝てるしさ、とりあえず声を落として!!」
うさぎは小声で叫びました。
続けて『そもそもおまんじゅうを配る為に来たんじゃん!?』と、言おうとして……やっぱりやめました。
「とにかく。申請書に書いちゃったし、一回帰らないと」
深みのあるうさぎらしく、賢く言いました。
かぐやなんて配達のこと何もやってないくせに…と思いましたが
地獄変に登場する妄想のうさキャラっぽく
思いやりのある対応をしてみせたのです。
エッヘン
この物語は、読む人それぞれの感じ方があると思っています。
もし何か受け取ったものがあれば、感想を教えてもらえたら嬉しいです。




