17話 自分よりもっとタイヘンな子たち
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで
うさぎとかぐやは
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、深みのある存在へと成長していく。
かぐやは觔斗雲に乗って、徐々にスピードを落とし下降していきます。
リアル森のカフェから少し離れたところで、スッと停止しました。
誰にも見られないように、木がたくさんある場所を選んでフワッと着地しました。
「人なんていた事ないけど…
一応、目立たないようにしなくちゃ
急ぐわよぉ」
かぐやは、森の中のデコボコした土の上に月のネックレスを置きました。
その上に、フカフカふわふわ浮いている觔斗雲を移動させ、力を込めて思いきり押します。
「おりゃぁ!!」
両手で頑張って押しました。
觔斗雲を収納する事が出来る、魔法のネックレスなのに
「そこはアナログなんかい!」と、かぐやはこれまでに何度も思いました。
しかし、月では急ぐ必要がないのでそこまで不便と感じなかったのです。
今回はとくに上手く入りません。
怪力なかぐやでも、なかなか収納できず
また【焦り】が強くなってきました。
「早く桃太郎とぉ〜
桃ちゃんのところに行ってぇぇ
着替えを渡したいのにぃぃ!!
もぉ!!!」
更に、グイグイッ!!と觔斗雲を押しました。
それでも
なかなか上手くいかず、
かぐやは、心臓や頭の中が、ジワジワジワジワ小さくなっていくような…締め付けられる感じがしました。
例えるなら、かぐやが服屋さんでお手伝いをしている時に、近くで偉大な月の神様がじーっと見ているときのような………
普段の自分でいられなくなるような…
早くそこから抜け出したくなる感覚でした。
『神様、はやくどこかに行ってほしいなぁ…』
実はいつもそう思っていました。
さすがにうさぎにも言ったことはありません。
神様は顔をグルグルと回して
沢山の月の住人を独りで見守っている
愛の深い神様ですが、かぐやは隣にいられるとソワソワして落ち着かないのです。
「ほんっとにぃい!!
なにこれ!?
……はやく入れぇ!!!!!!!!!!!」
最後の一押しで、やっと觔斗雲はネックレスに収納されました。
「………タイヘンすぎじゃない?」
眉間にシワを寄せた、地球特有のヘンテコな顔で汗を拭いました。
「走らなきゃ…
はぁ~
……………
もーーーーー
タイヘンだ!!!」
かぐやが更にヘトヘトになる頃、
リアル森のカフェに到着しました。
ここに着く少し前から、桃子の泣き声が聞こえています。
かぐやは、
テーブルから少し離れた木々の中で
桃太郎が立ち尽くしているのを見つけました。
うさぎの姿は見当たりません。
おまんじゅうの配達に行ったのでしょうか?
泣いている桃子を抱っこしながら、桃太郎はブツブツと何か呟いていたのです。
月の住人は目がいいので、よく見えました。
【ウルセーナ】と繰り返し言っていました。
「ももたろーーーぅ!ももちゃーん!
遅くなってごめんねぇ!!」
かぐやは、
大きく明るい声で呼び掛けました。
「オンギャァァァアア!!!!」
桃子の強烈な泣き声は、かぐやが隣に来ても止まりませんでした。
「あ、姫……
…いつからいたの?」
「今だよ!今着いたところだよ!
桃ちゃんお腹空いたかな」
桃太郎の表情はとても暗く、目の下が黒くなっていました。
地球特有の疲れたサインだと、動画で観たことがあります。
桃子は、そんなことはお構いなしに
オンギャァァァアア!!!!と、大きな声で泣き続けています。
「………桃ちゃんどうしたのかな?
なんでだろうね?」
かぐやは首を傾げました。
ふたりの話し声が聞こえなくなるくらい、
大きな声で泣き叫ぶ赤ちゃんを見て、心底不思議だったのです。
「抱っこしてもいいかしら?」
かぐやはふたりに近付きました。
桃子は、相変わらず顔を真っ赤にして泣き続けています。
(ほんとにオンギャアって聴こえるわ…)
月の赤ちゃんは、こんなに泣くことがありません。
子守りをして、貢献したときのことを思い出しました。
(月のカメ赤ちゃんもユニコーンの赤ちゃんも
ニコニコしてたわよね。
なんで人間の赤ちゃんってこんなに泣くのかしら?
もしかして………
地球に来て後悔してるとか?!)
「……。
桃ちゃん!
かわいいねぇ!!」
かぐやは、気を取り直して
左右にゆっくりと揺れながら
「もーもーちゃぁん♡」と楽しく声を掛けました。
泣いていた桃子は、フッと目を開けました。
「かぐやだよーん♡」
「ふぇ…」と、返事をした桃子をギュッと抱き締めました。
泣き叫んでいた赤ちゃんは、やっと落ち着いたのです。
かぐやは、左右にゆっくりと揺れるのを続けながら
思いました。
(そういえばウルセーナって
地球の映画で、敵が主人公に言う言葉だったはずよ。
桃太郎…やっぱりサイコウのカナシイなんだね
コンランしてるのよ
だって本当にタイヘンなんだもの。)
桃太郎の後ろ姿をみて思いました。
(サイコウのカナシイよ…
そんな言葉を赤ちゃんに言ってしまうんだから…)
かぐやは胸が苦しくなりました。
これ以上、何をしてあげたら良いのか分からなくて
ふたりを本当に可哀想だと感じたのです。




