15話 鬼から解放されても…
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです!
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会い、地球で過ごす日々のなかで
うさぎとかぐやは
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、深みのある存在へと成長していく。
桃太郎は、妹を抱っこしてゆっくりと歩き出しました。
真っ暗な夜道が月の光に照らされて、
目の前の道だけ明るく感じました。
まるで導かれているようです。
仏様に言われた通り
かぐやとうさぎがいる、いつもの森へ向かっていますが…
こんな時間に森の中にいるはずもありません。
しかし、
兄妹は他に行くところがありませんでした。
(着いたら、あの大きな石の上に桃子を寝かせよう
土の上より綺麗だよね
そういえば…
あの大きな石…
あんな大きな石を女の子とうさぎで運べるのかなぁ…?)
桃太郎は、かぐやの顔も思い出しました。
何も聞かれたくなさそうな、気まずそうな
表情でした。
ふたりがどうやって石を運んだのか?
あれこれ考えていると、頬は緩み自然と笑顔になっていきました。
使い込んだ草履の前坪が、足の親指と人差し指の間の皮膚に食い込んで痛くなってきましたが
それでも、
いつも以上に軽い足取りで、目的地まで
どんどん前に進んだのです。
普段なら到着する少し前に
かぐやたちの優しい気配を感じる事ができますが…
今はそれがありません。
遂に、
いつもお饅頭を食べている場所に辿り着きましたが、真夜中の森のなかは『しん………』と静まり返っています。
「いるわけないよね」
少しホッとして
すっかり眠ってしまった妹を石のテーブルの上に寝かせました。
疲れていた桃太郎は、自分も妹の隣で横になろうとしましたが…
あの言葉を思い出しました。
『踏み潰しちゃいけないよ』
「そうだった…」
桃太郎は、仕方なく石のテーブルから降りて、土の上に横になりました。
土間で寝たこともあったので、慣れっこでしたが…
月の光に照らされて、
すぐ近くに得体のしれない虫がいることに気づきました。
桃太郎は無言で身体を払ってから
桃子が眠る石のテーブルの上に座ると
「もう一つ石があれば良かったのにな…」と
呟きました。
座る以外、何も思いつかなかったのです。
桃太郎の身体は、
今さら寒さを感じ取ったようにガクガクと震え出していました。
沢の水で体を擦ったり、髪の毛を濡らしてお浄めしたからだけではありません。
妹と眠って暖を取ることすら制限する
【必要のない助言】に従い、心を縛ってしまったせいなのかもしれません。
まだ子供の桃太郎には、そんなことは分かりませんでした。
「今うさぎがいたら
抱きついて一緒に眠りたいな……
すごく暖かそうだもん」
実際には絶対しないことを想像して、独り言を言いました。
目を閉じて
うさぎのことを思い出すと
ホワァ…と、少しだけ温かくなった気がしました。
両膝を抱え、顔をくっつけて小さくなって座ります。
「うさぎになれたら寒くないのになぁ…もぅ」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
夜が明けたリアル森のカフェで、
かぐやの明るい大きい声が響きました。
「桃太郎!?どうしたの!?大丈夫!?」
結局、
桃太郎は桃子の隣で眠ってしまったようです。
石のテーブルの上で、ゆっくり身体を起こしました。
「ねぇ…
何があったの?
大丈夫?」
うさぎは、首を傾げて心配そうに聴きました。
すると、
かぐやはまた大きな声で言いました。
「なんで髪と服濡れてるの?!
ちゃんとドライヤーしないとー!
風邪ひいちゃうよ!!
………………あっ」
「かぐや!エジソンはまだ生まれてないんだよ!!!………あっ」
うさぎも大きな声で言いました。
「?」
桃太郎は、意味不明なやりとりをしている
元気なふたりを眺めていました。
「えへへ~あたし寝ボケてたかなぁー?
…着替え持ってきてあげるよ!」
かぐやは、テヘヘ…と苦笑いすると
走ってどこかに行ってしまいました。
「時代に合った服にしてよー!」
うさぎは、振り返らないかぐやに声を掛けました。
そして、すぐに桃子と桃太郎を交互に見つめました。
「あっ……えっと…」
何度もチラチラと上から下まで見つめて
「………大丈夫なの?」と再度、桃太郎に尋ねました。
「うん、平気だよ」
「そっか……
僕に何か出来ることある?
あっ!!!!これでも僕ね
実は人生経験が豊かなうさぎなんだよー
……人生じゃなくて
うさ生か!
違ううさぎだったこともあるんだよ!
だから何でも話してね!」
うさぎは胸を張って
珍しく真剣な顔で、桃太郎を見つめて言いました。
「大丈夫」
桃太郎はすぐに答えました。
「………そっか。
じゃあ………
えっと……………
うーん………………
おまんじゅう食べる?」
うさぎは、眉を最大限下げて
困ったように
ヘンテコに笑いました。
「うん
そろそろ妹のお腹が空く頃かも」
うさぎは
おまんじゅうを取りに行くと言って
すぐそばの草の茂みでガサゴソ…ガサゴソと
音を立てて準備をしているようでした。
桃太郎は鬼から解放されたにも関わらず、
あまり眠ることが出来ませんでした。
ボーッとして、
テーブルの上に腰掛けていると
隣で眠っていた、桃子の寝息が聞こえてきました。
スヤスヤ
スヤスヤ……
気持ちよさそうに眠っています。
かぐやとうさぎの大きな声がしていても
目を覚さなかったのです。
「兄ちゃんはすぐに目が覚めたんだよ
桃子はよく呑気に眠っていられるね」
と桃太郎は言いました。




