11話 口癖と前世
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです。
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会いで、
うさぎとかぐやは
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、成長していく。
第11話です。
フィルムは相変わらず、ジリジリジリジリ………と独特な音を立てていました。
今のうさぎは、森の中で
身動き一つせず
二本足でじっと立っていました。
目を閉じ
深く呼吸しながら
続きの映像が流れてくるのを待ちました。
違ううさぎだったときの古いストーリーは
とても息苦しい。
とても【大変】で
【悲しい】
それは楽しくありません。
全然
素敵でもないのです。
スーーーー
ハーーーーーー
スーーーーーーーーー
ハーーーーーーーーーーーーー
それでも
続きを知りたくて
さっきよりも深く深く
呼吸を繰り返しました。
スーーーー
ハーーーーーー
スーーーーーーーーー
ハーーーーーーーーーーーーー
うさぎの中に再び、
古い映像がジワジワと濃くなっていきました。
うさぎは、木を集めました。
葉っぱもたくさん集めました。
時間は掛かりましたが
山盛りになる程たくさん集めました。
そして
火を着けるため
舞錐を探しました。
しかし、なかなか見つかりませんでした。
どうして見つからないの?
絶対あったはず!
こんなに狭い家で失くすわけがないのに!
舞錐には足がついている!
うさぎは怒りました。
おじいさんが聴いたら笑ってくれるはず……
ちらっと横たわっているおじいさんを見ると
スウ………スゥ………
と弱い弱い寝息を立てていました。
舞錐があれば、うさぎでも火をつけられるのに!
そのときのうさぎは思ったのです。
早くしなきゃ!!!
舞錐を探していたら、家の中で火打ち石を見つけました。
お爺さんは、いつも舞錐を使っていましたが
ごく稀に石をカチンカチンして
火を起こしていました。
その姿を覚えていたうさぎは、
運が良い!!と思ったのです。
これでカチンカチンしたら火が着くはず!
しばらくカチンカチンしたら
本当に、うさぎでも火を起こすことができたのです。
今のうさぎが考えると
なんだか少しおかしいなぁと思いました。
そのときのうさぎが生きた時代は、
室町時代よりも
平安時代よりも
古い時代だと思われます。
貧乏で病弱なお爺さんが火打石をどうやって手にいれたのだろう?
火打石は、高級品だった気がしたのです。
今のうさぎは少し気になりましたが、今は考えないことにしました。
レトロな日本について勉強不足かもしれないので、
今度【ツキ(月)ペディア】で調べてみよう!と思いました。
考え事に走ると
違ううさぎだったときの古いストーリーは、途切れてしまいます。
また続きが流れてくるように
今のうさぎは深い呼吸に集中しました。
スーーー
ハーーーー
スーーーーー
ハーーーーーー
集めた木や葉っぱが、パチパチッ…と燃え始めました。
チリチリ…とも聞こえます。
いろんな火の音がうさぎの耳に流れてきました。
さっそくうさぎは、おじいさんの床の間へ向かい
いつも通りブーブーと鳴きました。
おじいさんはフカフカの背中を撫でてくれました。
おじいさん!
もう大丈夫だからね!
そのときのうさぎは、
おじいさんのヨレた着物をかじって引っ張りました。
おじいさんは、どうしたんだ?
と優しく言いました。
ブーブーー!
ずっと優しくしてくれたおじいさんに恩を返すため
がんばって着物を引っ張りました。
ブーーー!!!
後ろ足で大きくダンッ!!!!と床を鳴らしました。
おじいさんは、うさぎの様子をみて
どうしたんだ?
と、やっと身体を起こしました。
うさぎは、戸口まで走り
そこでまた
ブーーー!
ブーーー!と鳴きました。
ただごとではないと思ったおじいさんは
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくりと立ち上がりました。
うさぎやー
あまり動かさんでくれ
と言いながら、
ゆっくり
ゆっくり
歩きました。
うさぎは、何度もふり返り
おじいさんを見つめました。
大丈夫だからね!
お爺さん。
ゆっくり歩くお爺さんを、しばらく待ちました。
うさぎやー
お爺さんの小さい、やさしい声が聴こえます。
足の速いうさぎから見ると
おじいさんの速度はスローモーションのようでした。
そのときのうさぎは、
少し進んでは振り返り
少し進んでは振り返り
弱っていて可哀想なお爺さんが、
転ばないように
じっと見守りました。
やっと
お爺さんとうさぎは、
焚き火の少し前に着きました。
はじめはとても小さく弱々しかった火が
条件が揃ったのか
とても大きな炎になっていました。
それは少し意外でした。
それでもうさぎは、ブーブーとおじいさんに向かって鳴きました。
おじいさん…もう大丈夫だからね……。
その場で小さくグルグルと回り、
最後の挨拶をしました。
そして…
うさぎは
燃え盛る炎の中に飛び込んだのです!!!
ボワボワ!!!!と燃え盛る炎は
うさぎが飛び込んでも消えることなく
予想に反して
大きくブワッッ!!!!!!!!!!!と燃え上がりました。
そのときのうさぎは、
おじいさんの飢えを満たす為
自らを犠牲にし、
食料になることを選んだのです。
炎に飛び込み
愛の恩返しを果たしました。
そのときのうさぎには、その方法しか思いつかなかったのです。
しかし
うさぎが最期に感じたのは、
後悔でした。
自分が燃える音を聴きながら
悶え
苦しんだのです。
月の兎になる前の、苦しい思い出でした。
これまで無意識に言ってきた口癖が、
今のうさぎの頭の中で繰り返しリピートされました…
『あっ僕のことは食べないでね!』




