10話 サンタみたいに僕にも前世があったんだ。突然ですが、違ううさぎだったときのことを思い出しました。
幸せで豊かな【月の中】で暮らす、うさぎとかぐや。
ふたりは、MoonTube〈ムーンチューブ〉で見た
現代も大昔も、不便でコンランする場所【地球】の話に興味津々!
地球の子供たちは、タイヘンでカナシイらしい!
ふたりはサンタみたいにプレゼントを届けたらいいのでは?と思いつきました。
月といえばお饅頭!
うさぎとかぐやは、神様に許可をもらって地球旅行へ出発しました。
ルンルンでタスケルするのです。
タスケテを知らない地球の子供、桃太郎と幼い妹の桃子との出会いで、うさぎとかぐやは
大切な人を助けるとはどういうことなのか?
自らの過去と向き合い、成長していく。
第10話です。
うさぎはどんなに速く走っていても、周りの景色がよく見えています。
ーー前にも、この森を走ったことがある
地球に来るのは初めてなのにーー
違ううさぎだったときに、
この森の中を全速力で駆け抜けたことがある。
見たことがある。
そう感じたのです。
「そう
そうだ
絶対そうだよ」
うさぎは立ち止まり、辺りを見回しながら独り言を呟きました。
それは、見覚えがあるというデジャヴ的な感覚ではありません。
知っている、という感覚でした。
傑作を2回観る、そんな感じの確信なのかもしれない。
証拠はないけれど…うさぎには分かるのです。
すると、ほんとうに映画でも観ているかのように、
8ミリフィルムのような古い映像が、うさぎの中にじんわりと流れてきました。
ジリジリジリジリ………という、フィルム独特の音も聞こえます。
映像は、徐々に濃くなっていきました。
「これ…きっと。
あれだ…
地球にいるときに起こること
チャネリングだっけ」
うさぎは目を閉じて、呼吸を整えました。
息を殺すのとは違います。
吸って
吐いて……
スーー
ハーーー
繰り返し
スーーー
ハーーーー
意識して深く呼吸していると、違ううさぎだったときの古いストーリーが感情と一緒にジワジワと伝わってきました。
うさぎは抵抗なく受け入れました。
とても大切なことだと分かっていたからかもしれません。
その古い映像と音、
伝わってくる感情のストーリーに集中したのです。
たくさん
たくさん
走った
おじいさんのために走ったのだ
森の中を
おじいさんのために食べ物を探した。
たくさん
びゅん!
びゅん!っと!
…………でも
見つからなくて
僕は、畑からカブを盗むことに決めた。
それしか思いつかなかったのだ。
人間に見つかって、しつこく追いかけられた。
人間じゃない奴もしつこく付いてきたけれど
僕は、構わずカブをくわえて走った。
たくさんあるんだから良いじゃないか!
おじいさんに1つくらい分けてくれたって!!!!!!!!!
良いじゃないか!!!
キューーー!!!
キューーーー!!!
ギューーーーー!!!
言葉にならない高い声が響いた。
生まれ変わったら、お前らを喰ってやる!!!!!!!!!!!!!!!
ギュゥ゙ウ"ーーーーーー!!!!
ギュゥ゙ウ"ウ"ーーーーーーーーーーーー!!!!
腹の底から湧いてくる苦しい音だった。
僕は、うさぎだから
足だけは速かった
カブをくわえて、とにかく逃げたのだ。
後ろを振り返ったら
あいつらはいなくなっていた
けれど
罰が当たったのか、道に迷ってしまった
それでも覚えているおじいさんの温もりを辿って
ひたすら走った
うさぎは、鼻がきくはずなのに長い時間掛かってしまった
途中降った大雨に濡れ続け
風邪をひいてしまったせいだ
おじいさんの匂いがしなくなってしまった
身体が重くて
お腹が空いて
フラフラしていた
それでも沢山走って手と足から血が出た
限界になり
木の下で横になると、すぐに眠ってしまった。
朝方、
目が覚めると
カブを食べてしまっていた。
そんな…………
なんで………………
僕は、大馬鹿うさぎだからだ。
おじいさんもきっと怒るだろう…
けれど
おじいさんは、素敵な人だから
もしかしたら許してくれるかもしれない
まだ、希望がある
血だらけで走った
一体
どうやって家にたどり着いたのか。
ボロボロの愛おしい我が家に到着した時
扉が少しだけ開いていた。
その隙間に頭とフカフカの赤い手を突っ込んで
なんとか中へ入ると
おじいさんが、薄い藁の上に横たわっていた。
かろうじて息をしているような状態だった
見慣れている悲しい光景だった。
うさぎが話し掛けると
おじいさんは、いつものように頭を撫でてくれた。
うさぎの手足を見て、大丈夫か?と言った。
それから、よく頑張ったねと褒めてくれました。
うさぎは、カブが1個あったけれど
食べてしまったことを謝りました。
おじいさんは、自分もお腹が空いているはずなのに、
大丈夫だから気にするなと言いました。
それを聴いて、うさぎはずっと考えていたことを
その日のうちに実行したのです。




