『勇者たちの進軍』
「見える範囲だと敵は一体だけ……そんなことはないな。おそらく他にもまだいそうだ」
「ころころ〜」
「基本的にアレらは集団行動してるし…まあ一体だけというのはありえないわね」
ノア、ルビー、アルマの三人がこの街の攻略を始め1時間が経過。そして彼らは今、物陰から敵の様子を伺っている。敵はモノ・セラノイド一体だけだが…そんなことはない。おそらく、飛び出したら隠れてるのがうじゃうじゃ出てくることであろう。
しかし回り道をしようにも…この道が最短ルートであり、そして回り道をしたところでその道が安全とも限らない。ならば、ここは…
「強行突破だ!!」
「突っ込むっすー!!」
ノアとアルマは敵陣へと突っ込んだ。考える時間も惜しい、ここはまず殲滅を図るとしよう。
「遅い」
「ジ…!?」
まずモノ・セラノイドをノアが光の剣で突き刺す。この一時間でノアもだいぶコツを掴んだらしく、光の剣はモノ・セラノイドの回路の集結部に深く突き刺さり、そして活動を停止する…だが、モノ・セラノイドもタダでは終わらない。
近くの仲間たちに信号を送り、その不届き者たちを殺すように発信する。そしてそれは、仲間たちへとすぐに伝わった。
「ウゴゴゴゴ!」
「ギガガガ」
「シンニュウシャヲホソク!」
大量の量産機兵…否、機械だけでなくタカのような生命体や大きな銅のアリなどがノアとアルマの命を奪おうと一直線に襲いかかる。
まあ、そうだろうな。
ノアとアルマは後方へと向かって合図を送り、そして物陰から光がキラリと顔を覗かせ、大量の光球が雑兵たちへと襲いかかる。
「そのくらいお見通しよ」
この光魔法の行使者はもちろん、サンライトプリズム王国の女王…ルビーである。光の球は次々と雑兵たちに直撃し、オルタナリースから水が漏れ、侵晶衛星やタカは撃ち落とされ、銅のアリは前足を大きく欠損する。
「どりゃりゃ!!」
「これはどうだ!」
「ジ…ジジ…」
「電波障害発生…」
アルマが突進で次々と量産機兵を粉砕していき、ノアが光の剣でどんどん異世界の魔物たちを切り裂いていく。あっという間に辺りは肉片と残骸だらけとなる。
「シトメル…!」
「シカリ…」
「コロセ!」
「あらあら、そんなにお急ぎで何を?」
激怒し襲いかかる大量の雑兵たちをルビーは光の薙刀で返り討ちにする。その薙刀の華麗なる斬撃に飲み込まれ、次々と量産機兵は活動を停止する。死角から不意を突いてルビーを攻撃しようとする愚者が二人いたが、それは…
「さーせないっす!」
「仮にもレディーに手を出すなんて非常識だな」
鋭利な剣と鈍重な盾が回り込み、それぞれを破壊してみせる。残骸が宙を舞い地面に積み重なっていく。
別の世界ではオーガと呼ばれ恐れられていた種族たちが彼らの前に立ちはだかるが…
「!?」
「まあこのくらいなら普通に防げるっすね」
その質素ながらも強烈な破壊力を持つ拳による一撃は盾によって難なく防がれ、受け流されてしまう。さらにそこを…
「これでどうだ」
ノアがオーガの頸動脈を光の剣で切り裂き、生命活動を続ける上で必須である血管を失った鬼は地に倒れて絶命する。
「その翼はお飾りかしら」
本来エリア2にてよく発見されるボンバイドたちがルビーへ向かって爆弾をぶつけようとするも、迫りくる大量の光球によってなすすべなく墜落していき本来自身の攻撃手段である爆弾で自爆していく。
だが、迫っているのはボンバイドだけでない。ガードと呼ばれる剣士の機械がルビーへと迫るも…
「!?」
ルビーが魔法の杖を光の薙刀に変形させ、そしてガードを迎え撃つ。ガードとルビーの互いの剣と薙刀は拮抗し…合わない。あっという間にガードは力勝負に負け、ルビーの光の薙刀が体を貫通する。
「どーりゃりゃりゃりゃー!!」
アルマは俗に言う…「まるまりふぉーむ」へと姿を変え、次々に量産機兵たちを粉砕していく。量産機兵は防御をすることも叶わず、次々と胴体に風穴を開けられていく。
「さて、こいつで最後か?」
最後に残ったオルタナリースの腹部へとノアは剣を突き刺し、そしてそのオルタナリースは地へと倒れる。どうやら…これで全員倒せたらしい。
勇者たちは進軍を再開し、その肉片と残骸だらけの深緑の地面を後にする。まだまだこれしきで彼らを止めることはできない。