『ガルゼドール』
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「クラゴア、ハクジャ、ガルゼドール、バーディア。それらがこの街の幹部の名前で合ってるなの?そして支配者の方は……チィ、どこから雑兵が…またやられたなの…!」
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「やれやれ、まさかオルタナクラブがこんな短期間でやられるとは思わなかったよ」
地をまるで舞かのように美しく這い地平線を移動する粘液、彼女の名前はガルゼドール。この街の支配者に仕える幹部『四ノ厄災』の一人でもある。あらゆる攻撃を無効化し、万物を破壊する最強の破壊力の持ち主であり、見た目が弱そうだからと侮ることなかれ。
油断した者はあっという間に高速で飲み込まれあの世行きだ。実際、この死の街を徘徊するオルタナクラブを討伐した猛者三人を殺してきたし。
「グレイドさまは意外と甘いところがあるからね…おっと、勘違いしないでくれよ?別にボクはあの人を批判しているわけじゃない、むしろ褒めてるんだ。グレイドさま自体はそんなこと考えてないつもりだろうけど、本当は仲間想いだし敵にすら慈悲を送る聖人なんだよ。そういうところがかっこいいし誰よりも最強である理由なのはよくわかるね。あの人こそが世界の支配者にふさわしいんだよ。まあそんなことせず、ギャンビッターなんか踏み台にすればいいところ真面目に慕ってるのも愛しいよね。雑兵の君たちもそう思うだろ?」
長々と独り言を発しながらもガルゼドールはこの街の巡回を続ける。ガルゼドールは防御、攻撃だけでなく移動速度もピカイチ。遊撃役として誰よりも最適なのだ。そして雑兵に異常がないか監視をする役割もこのガルゼドールが担っている。
どうやらこの街のモノセラノイドにエリア3幹部…つまり裏切り者の配下のモノセラノイドが混じっていたようだ。戦闘データの収集などはされたとみていい。エリア3幹部の技術力は凄まじいと聞く、放置しておけば何をしてくるかわからない。
実際エリア3に向かったザルドアも音信不通…現在エリア5とエリア3は冷戦状態にある。だが、近々エリア3に本格的な襲撃をしかけるつもりだ。ギャンビッターには怒られるだろうが、龍の巣をエリア3に広げて全勢力で一気に強襲するというわけだ。
「だけど意外とクリフサイドやそれに準ずる者たちの抵抗も激しい。この街だけでもオルタナクラブが消失、ザルドアは行方不明、特級戦闘員も7体中2体損失…エリア1なんて聞くところによれば陥落したそうじゃないか。四ノ厄災やシャドウロイド艦隊に特に損害はないとはいえ、一筋縄では行かなそうだね」
無敵の布陣に思えるガンダーラ軍、だがこちらもこちらでかなり追い詰められている。ツボハットだけでなく調査報告書によればアダンキーたちもクリフサイドに寝返った恐れがあるらしい。あとは第三勢力も中々多い。脱走してしまったイトイフェルたちに、聞くところによれば調和域と呼ばれる謎の空間から呼ばれし存在も確認されているとか。そして…
「貴様がガルゼドールだな?さぁ、我らのために死んでもら…」
「あ、噂をすればなんとやら。邪魔だよ」
そう、目の前のコレも第三勢力に値する。クリフサイドガンダーラ問わず襲いかかる魂を集める謎の集団。ガルゼドールは毒液を高速で発射し、その地獄の粘液はあっさりと体を貫き、不幸にもその挑戦者はあっさりと絶命してしまった。
「全く、一体どうなってるんだか…ボクもしっかりしないとね。全ては、グレイドさまのために」
彼女、ガルゼドールは死の街の支配者であるグレイドに絶対的な忠誠を誓うスライムである…しかし、一体なぜ彼女はここまでの忠誠を誓うようになったのだろうか。まずはそれを知っておく必要があるだろう。
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「ころして」
「ダメだよーアハハ!お前さん、反応が面白いんだよね〜!俺のペットとしてちょうどいいの!」
「ごぼ、ごべぇ…」
ガルゼドールの住まう世界は温暖であり、本来は絶対零度に見舞われることなんてなかったはずだった。しかし、目の前の『氷帝』サーガルが世界に侵略してから世界は大きく変わってしまった。
世界は吹雪に襲われ、ほとんどの英雄はサーガルに立ち向かったものの返り討ちに遭い、ガルゼドールの同族たちはみな死んだ。ガルゼドールは幸運にも…この場合は不幸にもと言うべきだろうか。弱点であることに変わりはないとはいえ、氷にある程度耐性があったため生き延びてしまった。
それが原因でガルゼドールはサーガルに目をつけられてしまい、ペットとして、奴隷として飼われることとなってしまった。サーガルは度々ガルゼドールに死なない程度に極寒を押し付け拷問し、地獄の苦しみに悲痛な声を上げるガルゼドールを見て愉しんでいた。その生活が10年。ガルゼドールは殺してほしいと何度も思っが、サーガルはそれは許さなかった。
しかし、30年後のある日。サーガルにとっての破滅を齎す大厄災、ガルゼドールにとっての運命のヒトがこの世界に来訪することとなる。
「グォ」
それがガンダーラ軍の戦力を補強するために現れた魔龍グレイドであった。グレイドはまずこの世界を覆う歪な吹雪を疎ましく思い、それすらも上回る圧倒的な灼熱で適当に追い払って世界に熱を取り戻した。だがそんなことをして『氷帝』が許すわけがない。ガルゼドールは『魔龍』グレイドと『氷帝』サーガルの一騎討ちを目撃することになる
「あれあれあれ〜?この俺に抗うつもり?ダメだよーそんなことして、命が」
「グァ」
勝負は一瞬にして決まった。サーガルがグレイドを嘲笑している隙にグレイドは渾身の打撃をサーガルの腹に当て、サーガルはあっという間に肉片となって辺りに散らばってしまった。一撃であり、もはや戦闘とすら言えるようなものでもなかった。
「…ッ」
結局ここにもめぼしいものはなかったとグレイドが去ろうとしたとき、グレイドの瞳に10年間に渡る拷問でついに命の灯火が消えかけていたガルゼドールが映った。
構わずグレイドは去ろうとしたが…グレイドの脳裏にかつて自分を助けた主君、ギャンビッターが思い浮かんだ。目の前のガルゼドールをかつての自分と照らし合わせてしまい、結局グレイドは彼女を助けることになる。
「や、やだ…」
やっと氷の悪夢から解放され死を迎えることができると安堵したガルゼドールは、こちらへとやってくるグレイドのことがサーガルと同様に自分に悪夢を齎す存在に見えた。自分は中途半端に命だけ繋ぎ止められ、またしてもおもちゃにされるのだと…
しかし、グレイドがしたのはまさしく予想外、であった。
「グォ」
ガルゼドールは瀕死の大重傷、そしておまけにグレイドは回復魔法を使うことができない…ならばどうするか。答えは一つ、自らの力の一部をガルゼドールに授けることだった。
グレイドが生成した淡い光がガルゼドールの中に入り込むと、途端にガルゼドールは途端に生命力を取り戻していく。これで問題はないだろうとグレイドが世界から去ろうとしたそのとき、自分でも無意識にガルゼドールは最強の英雄に声をかけていた。
「ボ、ボクはガルゼドールと言います。我儘ですが、ボクも連れていってもらえないでしょうか?」
かの魔龍は渋々であるがガルゼドールの同行を許し、彼女はガンダーラ軍に加入することとなる。最初はガルゼドールは特級戦闘員スタートであった。物理攻撃を全て無効化するスライム固有の性質はそれだけでも強力なのだ。
だが、グレイドにとっても予想外だったのはガルゼドールの成長スピード。
グレイドは生きるためだけの最低限の力としてガルゼドールに分け与えたのだが、ガルゼドールはその力をうまく使えるよう必死に努力した結果、もはやただの雑兵に収まることすら許されない戦闘力となってしまった。
全ては愛しい主君の期待に報いるため、ガルゼドールは最強の存在となったのだ。
今では四ノ厄災の1人であり、『守護騎士』バーディアと共にグレイドの両翼を務める存在。それが、ガルゼドールなのだ。
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さて、時は現代。ガルゼドールは街を巡回していたのだが…ハクジャが例のクリフサイドらしきものと交戦していると連絡が入ってきた。
この場で最もハクジャに近いのはガルゼドール、高速で街を渡りハクジャの元にかけつけようとしたそのときだった。突然氷柱がガルゼドールに襲いかかり、ガルゼドールはそれを避けた。その犯人を睨むと、そこには…
「四ノ厄災は何者かと交戦したらその場に近いもう一人が救援へとやってくる…そのシステム、利用させてもらったなの」
「…こりゃ、厄介なのに目をつけられてしまったみたいだ」
そこに佇んでいたのは氷結の魔女、リヴァであった。一方は想い人を取り返すため、もう一歩は想い人を守るための苛烈な戦闘が繰り広げられることとなったとここに宣言しよう。




