『まずはごはんを食べてリラックス!』
「助けてくれてありがとう…俺はノア。よろしくな」
「ニンゲンが話しかけてこないで。不愉快よ」
「え?」
「ル"ビー"さん"!!!」
アルマは安全な場所へと意識を失ったノアを運び、そしてノアはついに意識を覚ました。綿密なダメージ調整が功をなしたのか、ノアは15分ほとで復活したのだった。さて、いきなり爆弾発言をかましたルビーにキレるアルマであるが…まあ、ひとまずそこは置いておくとしよう。とりあえず…
「僕はアルマで、こっちのウサギの女の子はルビーさんっす。ノアさん、よろしくっす!」
「よろしくな!」
こうして、晴れてノアがアルマたちの仲間に加わったというわけだ。ルビーのノアに対しての嫌悪感は深刻ではあるが…後々、なんとかなると信じてひとまずやるべきことをしよう。それは…
「料理するっす、美味しいご飯を食べるっすよ!」
「やっとね!!!」
「おお」
まずは美味しいごはんをたらふく食べて、リラックスと行こうではないか。
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洗脳ノアとの戦いもあり少々遅れてしまったが、まあよい。"第一回アルマの手料理クッキング"、開催である。
「第一回ってことはこれシリーズ化するのか??」
「好評だったらやるっす」
「ごはん楽しみねー!」
アルマたちは比較的安全な家に入り込み、そしてフライパンなどの調理器具があるのを確認。あとはガスも使えるが、なぜガスが使えるのだろうか。ちなみに蛇口を捻っても水は出てこなかった。ますます何故ガスだけ使えるのか疑問に思ってきたところだが、まあ細かいことを考えるのはやめにしよう。
「ルビーさん、食材の方はどうっすか」
「探してみたけどこれくらいしかなかったわ〜もうちょっと時間があればよかったんだけど」
「この街で食材調達できる時点でかなりすごいけどね」
ルビーが軽く調達してきた食材は主に野菜が多め。キャベツ2枚にじゃがいも、にんじん、たまねぎ、バターにベーコンが3枚ほど。そして醤油とコンソメ、塩、砂糖。あと言うまでもないが、水もある。
「んー、鍋は…あ、あったあった。これならいけるっすね」
アルマは棚を漁り、鍋を取り出す。この食材ならそうだな、無難にこんなのはいかがだろうか。アルマは鍋をコンロに置き、座って待っている二人にこう問いかける。
「野菜スープなんてどうっすか?一見地味っすけど…味は保証するっす」
「それでいいわよ〜」
「同じく」
二人はアルマの意見に賛同し、そう返事する。ルビーはお腹ぺこぺこでご飯が食べれるとわかってから機嫌がいいし、ノアもノアでかなり腹が空いているようだ。これは、気合いを入れて作らなければ。
アルマは命よりも大事な盾をこのときばかりは外し、大事に置いておく。事前にタマネギをボウルの中の水に浸しておき、そして包丁を手に取り料理開始である。
「————-かなり包丁さばきがいいな」
「そうね…アルマは意外と剣を使うのも得意だったりするのかしら?」
「そんなことないっすよーっと」
アルマはキャベツを包丁で2cmごとに拍子木切りにしていく。まな板と包丁が摩擦する音が次々と鳴り、その音は聞いてて心地よい。あっという間にキャベツを全て切り終えたアルマは次にベーコンを2cmごとに切っていく。2cmごとに切れば最も食べやすいサイズとなるので、それを意識していこう。
ベーコンはいわば洋風料理の鰹節。ベーコンそのものも美味しいが、ベーコンをスープの中に加えると出汁が出て全体的にも美味しくなるからおすすめなのだ。さて、ベーコンも切り終わったのでこいつも別皿に移しておく。
次は玉ねぎ、これも2cmごとに切っていく。さて、玉ねぎを切っていると目から涙が出てくるのはもちろんご存知だろう。これは、玉ねぎを切っていると細胞が壊れ、中のアミノ酸と酵素が作用して硫化アリルが発生するのが原因だ。アルマはそれを防ぐために、事前にタマネギを水に浸しておいた。
これで硫化アリルが水に溶けるので崔涙作用は弱まるが、あまり浸しすぎるとタマネギが水っぽくなるのでそこは注意。目安は10分ほどだ。さて、これでタマネギも切り終えた。
次はニンジンとジャガイモ。この二つは皮をむく必要があるので他と比べて多少面倒。まあまあ、やっていくとしよう。包丁でニンジンの皮を剥がしていき、そして端から斜めに包丁を入れて回しながら食べやすい大きさに切っていく。
ジャガイモも同様に、 皮をむき、端から斜めに包丁を入れて回しながら食べやすい大きさに切り、水にさらして水気を切る。ジャガイモは芽があると食中毒になってしまうのでそこだけは確認を忘れずに。
「さて、あとはもう鍋にぶち込んで完成っすね」
「いよいよね…!!!」
アルマは鍋にバターを入れて熱し、ベーコン、玉ねぎ、にんじんを加えて炒め、最後に残りの野菜を加えて玉ねぎがしんなりするまで中火で炒める。ルビーはついにこの世界に来てから初の暖かいごはんを食べれることに歓喜し、ノアはアルマの包丁捌きに見惚れていたのだか)
「包丁と剣は使い勝手は違うとはいえ、これは流石に…いや、気のせいか」
さて、そんなこんなでアルマの料理も完成したようだ。何やら誇らしげな顔をしている、それなりに自信作なのだろう。
「じゃーん!質素ながらも栄養満点美味しさ満点の野菜スープっす!熱いので気をつけながら召し上がれ」
具沢山の野菜スープがノアとルビーの二人に渡され、アルマ自身も席についた。それでは「いただきます」、である。
「あら〜これは中々…!」
「塩加減は完璧、そして…ベーコンの出汁もなかなかいいな」
どうやらルビーやノアも満足いただけたようだ。ちなみにアルマは猫舌なのでフーフーしながら頑張って食べているのだが…うむ、やはりうまい。さて、なかなかな出来ごたえだが…残念ながら、これからの話もしなくてはならない。
「スープをお楽しみのところ悪いっすけど…少しいいっすか」
「あら〜何かしら」
「む」
アルマは食事を楽しむルビーとノアに対して真剣な眼差しでこう告げた。
「みんなで情報交換をしたいっす。———大事なことも話すつもりっすので」