『氷の歩む血濡れた道』
「とはいっても、まずはどうするかなの…」
「…!」
「テキヲホソク!」
「ムム!」
「うるせーなの」
死の街の探索を本格的に始めたリヴァは、襲いかかってきたガード、アイアンハチドリヘイ、テムテムズを片手間に凍らせながら今後の方針で悩む。ただ、この街の支配者がいる場所はわかる…おそらく、街の中央部だ。この街の至る所には紅く禍々しい塊がこびりついており、そしてそれが集中しているのは中央部だ。だが…
「…」
「ジ…ジジ」
「ム…ァ」
「ま、情報もなしにいきなり幹部に殴り込みなんてバカのすることなの」
戦力差は明確、圧倒的にこちらが窮地に立たされている。少しでもこちらが優位に立つためには敵の戦力や動向などの情報を把握しておかなければならないだろう。それすらもなしで対等にここの強者たちと渡り合えるか…答えは否、である。
「なんとか手探りでやってくとするなの…」
あっという間に氷によって機能不全となってしまった雑兵を一瞥した後、リヴァはため息をつく。厳しい道のりであるが、仕方ない。そのためにも、まずは…
「ハイジョ!」
「ガオッ!!」
「不意打ちとはいただけないなのね」
物陰に隠れて機械を伺っていたモノ・セラノイドとメンイーターが飛び出し、リヴァの首を刎ねようと襲いかかる。雷の牙がまずリヴァを噛み砕こうとするが…
「へーんしん」
「!?」
「ジ!?」
突如リヴァの姿がおどろおどろしい首長竜の姿へと変わり、二人の刺客は驚愕する。そしてリヴァを噛み砕こうとしたメンイーターは逆に竜と化したリヴァに噛み砕かれ、声にもならない悲鳴を上げながらメンイーターは生命活動を停止した。さて、モノ・セラノイドの方は…
「お前は生捕りなの」
突如モノ・セラノイドの付近に出現した四本の細い氷の柱が愚機に襲いかかり、その四つの刃はモノ・セラノイドの四肢を弾き飛ばした。これだけだとまだ不十分なので、リヴァはすぐさま身軽な人型の形態となりモノ・セラノイドに接近。
そしてモノ・セラノイドが技を使うために重要である回路を内側から氷漬けにして機能を停止させる。さて、これで…
「まあ本当はちゃんと言語話せるやつを拷問した方がいいんだけど…これでも情報を炙り出すことは多少可能なはずなの」
このモノ・セラノイドもこの街の幹部からプログラムされているはず。そして指令を出すための微弱な電波から敵の動向を把握…
だが、リヴァは甘かった。この街の支配者はそれも想定済みだったのだ。突如、モノ・セラノイドが発火を始めた。
「む!?———そう来たか、なの」
このモノ・セラノイドを利用して逆探知をしてやろうと考えていたリヴァはすぐさま踏み切りを爆ぜてその場から離脱。リヴァがそのモノ・セラノイドから30mぐらい離れたところだろうか。
モノ・セラノイド…否、モノ・セラノイドだったものが大きく爆発した。原型をとどめていたメンイーターやガードなどの残骸を全て粉々にし、近くにあった民家も吹き飛ばした。
「こりゃまずいなの…!」
爆発から逃れられたといってもうこれで安全なわけではない。おそらく、この爆発音を聞いた他の雑兵たちがこの場所へとワラワラとやってくることだろう。リヴァは速やかにその場から離れ、身を潜めた。
そして案の定大量の雑兵たちが爆発の地点へと向かっており、一歩遅かったら彼らとの交戦は免れなかったことだろう。しかし…
「モノ・セラノイドがダメならおそらく他の雑兵や量産機兵から情報を抜き取ることも同じように不可能。こりゃどうするべきなの…?」
これによりわかったことは………死の街の支配者は、あまりにも強大で、狡猾で、油断の隙もないということがわかっただけなのであった。
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「‥ァ」
「シカリ…」
「やれやれ。ここまで数が多いと嫌になるなの」
あれから数時間後。リヴァは迫りくる大量の雑兵たちを、全て返り討ちにしながら探索を続けていた。1体1体も決して弱くはないしむしろ強い方…ではあるがあくまで世間一般からの認識がソレなだけで、リヴァなどの猛者からしたら別に大した脅威などにはならない。
辺りに氷塊が散乱する中、リヴァはその場から立ち去ろうとしたが…
「ギェ!」
一人だけ、ある者が生き残っていた。そう、彼の名はテツバット。エリア3を支配しようと企む「テツオウ」の部下である。テツバットは別に弱いし無視でもいい。しかし…彼は懐から『テツマリン』を取り出した。『テツマリン』とは願いを現実にする奇跡のカケラ…と
呼ばれているが、真偽は不明である。さて…
「ゲギャ!!」
テツバットは『テツマリン』を翳し、みるみるうちに彼の姿が光に包まれていく。それは、世界からの喝采であり、祝福…
「待たねーなの」
リヴァの放った氷がテツバットの胴体を串刺しにし、哀れな愚者は何が起こったかすらもわからないまま意識が暗転。地に倒れ、呼吸を乱しながらそのまま絶命してしまった。
この魑魅魍魎が蔓延る魔界で、ふざけたやつが生き残られるわけがなかった。
リヴァは今度こそ一仕事を終え、その場から離れた。
『死の街』を身を隠し細心の注意を払いつつ探索し始めてかなりの時間が経過。収穫はゼロではなく、一つだけ手に入れられた情報がある。それは…
「この街をうろついてるのはただの雑兵だけじゃなく『特級戦闘員』という輩も彷徨いてる…とはわかったなの」
特級戦闘員。それは、数多の雑兵を引き連れながらこの死の街を徘徊し、侵入者を排除する役割を持つ一般兵よりもワンランク上の存在…と推測。リヴァも彼らのうちの一人と交戦、名前は…「ドラグル」といったか。仮面を被った青髪のガンマンと戦ったのだ。
もちろん特級戦闘員は一般兵とは比べ物にならないほど強い。しかし、歴戦の猛者であれば単独でもまず負けることはないだろう。
だからこそ、おかしい。
「あまりにも弱すぎ。特級戦闘員よりさらに上の地位がまだあるはずなの」
死の街の支配者の幹部があれほど貧弱なわけがない。まあ、残りの特級戦闘員が強者なのかもしれないが…おそらく、特級戦闘員よりもさらに強い者が控えているとみた。
本当はドラグルを拷問してそれについて聞き出したかったのが、生捕りとなると中々厳しく…最善の行動はしたつもりであったが、拷問を始める前に自害されてしまった。絶好のチャンスであったが故に惜しいが、今はそんなことを気にしてられない。
「残りの特級戦闘員を拷問して、情報を聞き出す。これしかないなの」
特級戦闘員を生け捕りにし、拷問してこの『死の街』に関する情報を少しでも聞きだす。ひとまずの目標はこれである…しかし、特級戦闘員にも数に限りがある。ドラグルのように他の特級戦闘員にも自害を許してしまっては今度こそ打つ手がなくなる、それだけは避けねばならない。
氷の魔女は、死の街での暗躍を続けるのだった。




