『最終決戦!vs魔龍グレイド』
瀕死にも関わらず世界を怯えさせるグレイドの咆哮がこの死の街に響き渡る。光の剣を、神器の盾を、魔法の杖をそれぞれ構え…勇者たちのこの長きにも渡る死の街での戦いは、ついに最終局面へと突入する。
「ッ!!」
グレイドはノアへと向かって死の吐息を放つ。死の吐息は地響きを起こしながらノアへと迫るが…
「そりゃ、っす…!」
アルマが死の吐息とノアとの間に割り込み、彼の自慢の盾で死の吐息を防いでみせる。しかし、それだけで終わりではない。
「グォォ!!」
「ぬお!?」
死の吐息を防いでみせたアルマに対してグレイドはボロボロの翼で一気に距離を詰め、ダイヤすらも簡単に切り裂くことのできるツメでアルマに攻撃する。一発目は防げたが、その衝撃でアルマは体制を崩された。その隙をついてグレイドは彼を切り裂こうとするものの…
「俺のことも忘れないでほしいな!」
「…!」
今度は逆にノアがアルマを守り、光の剣によってアルマの命を蝕む凶悪なツメは防がれる。しかし、それがなんだというのだ。
「くっ…!」
大きく弱体化したとはいえ、それでもグレイドは本気のバーディアよりも強い。すぐに大地が割れ、ノアが少しずつ地面に食い込んでいく。だが、グレイドは何かを察知しその場から離れる。
その直後大量の光球がグレイドがいた地点を襲い、あと一歩遅れていたらグレイドはその光球をまともに喰らっていたことだろう。そしてその光の魔法を行使したのはもちろん…
「さて、フィナーレと行きましょうか…!」
そう、ケープを脱ぎ捨てて本気となったルビーである。彼女は普段は滅多にケープを脱ぎ捨て本気を出したりしないのだが…
どうやら瀕死であっても目の前の魔龍には死力を尽くさないと勝てないと判断したようである。もちろんその判断は正しい。
「グ…ァァ!!」
その場から一旦退いたグレイドはすぐに再び攻撃体制へと戻る。グレイドは紫色の死の吐息とはまた違うバーニングブレスを上空へ向かって放つ。
そしてそれはすぐに火炎の雨と化して勇者たちへと降り注ぐ。掠れば火傷、直撃すれば火傷以上。しかし、それは火の魔法の使い手が黙っていない。
「猫舌だから困るわ、ぬるいくらいがちょうどいいものよ」
「そうか?俺はアツアツの料理が好きだけどな…!」
ルビーが火の魔法による温度調整で猛火の雨をできるだけ無力化し、それでも消えずに降り注ぐ火炎はノアが全て剣で捌いてみせる。
もちろん猛火の雨で全滅してくれたらそれが一番楽ではあるが、グレイドの本来の狙いはそこではない。グレイドは猛火の雨の対処に集中し隙だらけとなったノアとルビーを葬るため翼を広げ距離を詰める。だが…
「させないっすよー!!」
「…ッ!?」
グレイドの横っ腹に盾を構えた球による突進が直撃し、グレイドは完全に不意を突かれて吹っ飛ばされるが、すぐに受け身の体制となりそれをしでかした犯人を睨む。
もちろんその犯人はアルマ。球の姿で一気に加速し、火の雨をすべて避け切った上でグレイドに対して突進をしてみせたのだ。
「ぐっ…!?」
「グォ!!」
グレイドは口から邪魔な血をアルマへと向かって吐き出すことによってアルマの視界を妨害し、アルマを一気に吹っ飛ばすことで距離をとって次なる一手を考える。
ぶっつけ本番だからできるかわからないが、あの聖龍の攻撃を参考にしてみるとしよう。
「あ、あれは!?」
「あの騎士と同じで学習能力も高いのね…!」
ノアとルビーはグレイドがしようとしている攻撃に対して驚愕するが、最も驚愕したのはアルマだった。
「あれ、メギドラさんの攻撃とそっくりじゃないっすか!?」
そう、グレイドはメギドラがしていた攻撃…『小さな太陽』と全く同じ性質の光弾を生み出していた。まあ最も、威力の方は本家とは比べ物にならないほど弱いのだが。
ただし、グレイドはメギドラと違ってそれぞれの手に一つずつ光弾を生成していた。この攻撃に名前をつけるなら、『小さな月』とでも言っておこうか。
神々しくも邪悪である二つの『小さな月』は一人に狙いを定め、追尾する。
この三人の中で狙うなら一人しかいない。それはもちろん、ルビーだ。ノアとアルマも限りないくらい厄介だが…ルビーがいなければ攻撃手段に乏しい彼らではジリ貧に陥るだろう。そしてもちろん、ノアやアルマが『小さな月』からルビーを守ることも考慮し…
「ルビーさん!ぐっ…!避けちゃダメっす、防いで!」
「ちっ…!」
グレイドはそれぞれの動きを封じさせる。アルマの方はグレイド自身が直々に相手し、ノアには死の吐息をぶつけ回避に専念させる。
よって、ルビーを守る者はこの場には誰一人いない。
「メギドラを見習っただけあってこれは中々手強いわね…!」
ルビーは自分に近づいてくる『小さな月』に大量の光球をぶつけ少しでも威力を弱らせて、すぐに杖から光の薙刀へと切り替え『小さな月』と正面衝突する。そしてなんと、驚くことにルビーは『小さな月』をかき消してみせた。
しかし、お忘れではなかろうか。
「しまっ…!」
『小さな月』は二つルビーへと襲いかかってきていたことを。なんとか光の薙刀で二つ目の光弾に対して防御体制を取ることには成功するが、『小さな月』はルビーに直撃した。
「ルビーさ…ぐぁ!!」
「全く隙がないな!!」
アルマはグレイドとの力比べに負け、ツメによる攻撃を喰らってしまう。アルマに対しての攻撃が成功すると同時にグレイドは紅の砲弾を生成し、それをノアへとぶつけた。
ただし、ノアは間一髪のところで避けることに成功したようだ。辺りに紅の砲弾による爆発音が鳴り響く。
ノアとアルマは一度後方へと退き、グレイドから距離を取る。だがその隙をグレイドが見逃すはずもなく、死の吐息が彼らに直撃した。
「アルマ、ニンゲン…大丈夫かしら」
「俺は大丈夫だが…アルマの方はどうだ…」
「まだまだ僕もやれるっす…!」
ルビーは手足と胸元から血が流れ、ノアは腕に深くない傷を負い、アルマはグレイドによって切り裂かれた胴体の傷が目立つ。
全員、痩せ我慢であるがそれで問題ない。
そして、グレイドは…否、グレイドだけでなく勇者たちも気づいていないのだが。
一時的にアルマはゲーム時代の全盛期に少しずつ迫り、ノアは弱体化が少しずつ軽くなり、ルビーは本来自分が出せる力を6割とするなら今では7割、8割と本来自分が出せる以上の力を少しずつ出せるようになっていた。彼らは、少しずつ、少しずつ絶対強者としての力に迫っていたのだ。
魔龍と勇者たちの戦いは、まだ続くのであった。




