『魔龍グレイド』
最強であり知恵も回る無敵の魔龍だったが、破滅の未来が確定している哀れな魔龍でもあった。これより、そのことについて記す。
グレイドはタマゴから産まれた。しかし、グレイドが産まれる頃には親は既にもう生き絶えていたため…グレイドは親の愛情を全く知らない。狩りの方法なども教わらなかった。
だがグレイドは『神龍』として崇められるほどの絶大な力を持っている一族であっため、外敵から身を守ることについては何も問題なかったし…食糧の確保についても特に問題はなかった。その力は幼体の時点で獰猛な鬼族を二十体同時に相手して勝つほどである。
さて、グレイドは本来『神龍』として人々に崇められ、そして人間たちをサポートする役目があった。しかし…
グレイドは幼体の頃からずっと、ずーっと血塗られた生活をしてきた。様々な魔物はもちろんのこと…皮肉なことに、本来護るべき対象の人間も『神龍』の角が欲しいという理由で襲いかかってきた。まあ、全員返り討ちにしてやったが。だがそこでグレイドは間違えた考えに行き着いてしまう。
———こうして愚かな生命を滅ぼすことこそが、世界を浄化することに繋がるのだ、と。
グレイドは外敵から身を守ること、狩りの方法などは教わらずともわかっていた。だが、その考えだけは間違いであると教えてもらうべきだったというのに…それを教える者は誰一人いなかったのだ。
そして、魔物はともかく…何もグレイドの角を狙う悪人ばかりであったわけではない。むしろそういう悪人の方が圧倒的に少なかった。ただ…善人も善人で、誰一人グレイドをそういった悪人から守ろうとしなかった。
神龍様は尊き存在、自分たちが手を出していいものではない…というのは建前であり、あくまで自分たちは護られるべき対象であって…何故わざわざ自分たちが神龍を護らなければならないのかという気持ちもあったことだろう。そしてそれこそが彼らの身を滅ぼした。
グレイドは彼の故郷であり護るべきはずだった世界を全て破壊し尽くした。そしてその世界は赤き"巣"に汚染され、美しく幻想的だったその世界はもはや見る影もなくなってしまった。
そして、さらに世界の浄化を続けるため、グレイドはあらゆる世界を滅ぼし尽くすことになる。
「……」
「勇者、さま…たす…けて」
残念なことに、その勇者とやらは既に息絶えている。
「死にたくな」
「俺の家族に手を出さないでくれぇぇぇぇ!」
「パパ、たすけ」
ある世界でグレイドはかつて大魔王を打ち倒したとされる勇者たちを屠った。警戒していたものの、肩書きの割に全然大したことはなかった。勇者…否、愚者たちが絶望しながらその命に終止符を打つ様はグレイドに達成感を与えた。
あとは非力な人間や知能を持たない魔物ごと全てを滅ぼし、その広々とした世界に紅の巣がこびりつきやがて朽ちていった。
「惜しみなく核兵器を使え、今こそ世界で協力を!」
次は先ほどまでとは打って変わって近代兵器などが当たり前のようにある近未来の世界。そこではグレイドは核兵器などで撃たれまくったが、グレイドを倒し切るよりも先に核兵器の使いすぎで向こう側が自滅した。やはり生命体というのは愚かである。
その後も精霊の世界やお菓子の世界などなど…グレイドは様々な世界に強襲し、全てを滅ぼしていった。
しかしグレイドが『おろちばーす』に強襲した際、グレイドは思わぬ敗北を喰らうことになる。
「これ動画回しとけば再生数稼げたかもですね」
それは、自分と同等…いや、それ以上の力を持つ聖龍皇帝と相対してしまったのが原因である。しかしグレイドは人質戦法などを使うことによって本来格上である聖龍を苦しめていた。
だが、今までほとんど見抜かれることもなかった"巣"のカラクリを突破され、さらに備えていた『次元の切り裂き』も力技で突破された。そしてグレイドはついにメギドラに倒されてしまった。
しかし倒されて地面に這いつくばりギリギリ瀕死の状態でグレイドは生きていた。まあ、だからといってもう死ぬしかない状態ではあったが。だが、そんなときに一筋の光が現れる。
「ほほ、瀕死の龍族よ!我が貴様の命を救い賜て」
瀕死の魔龍の前に現れたのは当時はまだほとんど戦力も整ってないギャンビッターであった。そして、ギャンビッターはグレイドを治療してその命を救った。否、救われたのは命だけでない。
「グ…ォ?」
滅ぼし滅ぼされの人生を歩んできたグレイドだったが、初めてそのとき「滅ぼす」以外の選択を取られた。それはグレイドにとって初めての経験であり…その恩を、忘れることはない。
以後、グレイドはギャンビッターに絶対的な忠誠を誓い、彼の望む未来に少しでも貢献しようとする。
———だから、こそ。
「グォォォォォォォォォォォァァ!!!!」
瀕死の魔龍は、目の前の三人の勇者たちに決して負けてはならないのだ。
グレイドは限界を超えて彼らと相対する。
全ては親愛なる主君のために。




