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テスト  作者: ワニ
エリア5『死の街』
26/42

『ノア』

とある世界で人々を危機から救い、本来の世界の形を取り戻した英雄たちの1人。

しかし、彼の活躍を知るものは世界中のどこを探しても居ないことだろう。

...彼と共に歩んだ仲間を除いては。


不思議な力を操るノアは、初めはただの寂れた街角に住まう青年に過ぎなかった。

いや、もしかしたら"ただの"では無かったのかもしれない。

彼は異変によって生じる「具現化された心」に溺れることなく、自己や他者を守るための力として振るうことが出来たのである。

ノアの住む世界では、とある異変が発生してから、「怪異」と称される怪物が跋扈するようになっていた。怪異達が前述の「具現化される心」が暴走した姿だと判明するのも後の話である。

ある時、ノアは自らの手で能力を解放し、怪異を退けることに成功した。それがノアの戦いの始まりでもあった。


「すごい!自力で一人で怪異を倒しちゃうなんて」

「...私は貴方のような人をずっと探していた」


ーーーーーーーーーーーーーー


「改めて自己紹介するわ。

私はシエル。この施設の管理者であり、怪異に対抗するための組織、『異変対策チーム』のリーダーでもあります。」


ノアが最初に出会った仲間は、「シエル」という名前の女性であった。初対面時は怪しくはあったが、常に前向きで、どこか暖かみを感じる者である。

シエルは続ける。


「でも、まだチームのメンバーは私たちを含めて2人しか居ないんだけどね...。

まあ、見ての通り空っぽでしょう?まさに箱だっけって感じね。ふふ」


「、、、、、ズコーーー!!!!!」


これに関してはあまりにも拍子抜けであったが。


ノアは彼女と協力し、異変を解決する術を探り始めた。異変の真相を明らかにし、怪異が発生しない元通りの生活を取り戻すことも、ノアの願いの1つであったからだ。


しかし、実際には怪異に対抗するなど無謀もいい所であった。当時、怪異といえば出現の法則すら明らかになっておらず、超常的な存在として恐れられていたからである。ましてや、異変の真相を解明するなど、まさに雲を掴むような話である。


だが、ノアたちの真実を突き止めたいという願いが潰えることはなかった。それが幸をなしたのかは分からないが、その行動に動かされる者が現れ始めた。


「私と、...あとお姉ちゃんも一緒に連れて行って欲しいの......」

「お前達は...私を生かしてくれるんだな。」

「政府の連中を止められるのなら、俺は喜んで手を貸そう。」

「俺は.........本当の事を確かめたい。今この世界で何が起こっているのかを。あんたらと同じだろ?」


いつしか、志を共にした多くの仲間も生まれた。皆の力を合わせ、ノアたちは怪異の元締めを倒し、世界の異変を食い止められる。

...はずだった。


しかし、失敗した。元凶と思しき巨大な怪異を鎮圧しても、一行に事態が収まる様子は無かった。ノア達はまだ異変の真相を微塵も理解していなかったのだ。


異変の解決は完全に行き詰まってしまった。


「今私達の力で怪異の発生を食い止める方法は...これしかない。」

行き詰まった所に行動を起こしたのはシエルだった。

彼女は怪異によって異空間に迷い込んだ際に、怪異の発生原因が人々の心であることを確信したという。


その後に彼女が及んだのは、なんと施設に残されていたかつての研究内容と、何人かの仲間の能力を併用し、

全世界の人間、約80億人の魂、もとい心を研究所に封印することで怪異の発生を一時的に停止するという凄まじい強行手段である。


「ごめんなさい、ノア。」

「みんなが眠っている間に、私が必ず方法を見つけます。

だから.........

貴方は少しの間休んでて。」



ノア、及び1部のメンバーは反対したが、半ば強制的に力を封印されてしまい、一時的に大半の記憶を失ってしまった。


これによりメンバーの関係にも亀裂が生じ、仲間全員がバラバラとなり、全てが崩れたかと思われた。


だけど。それでも。ノア達は終わらなかった。

記憶の殆どを忘れてもなお、失いたくなかった何かがあったのだろう。

世界を元通りにして、自らの居場所へと帰るという願いが消えることはなかった。


記憶を失った後、ノアは

異空間で「アイリス」という少女に出会った。

メンバーの中での見覚えはなかったが、彼女もまた、記憶を失い彷徨っていた人間の一人であった。


ノアとアイリスによる、新たに始まった長い冒険の末に、

ノア達は次第に力や記憶を取り戻していった。


取り戻した力を使い、ノア達は

シエルを含むかつてのメンバーの説得(これは物理的な意味合いも含む)を試み、見事にそれを成功させた。


そしてどういう訳か

異変対策チームは元通りに、そして元より何倍も強固な絆と力を持って蘇った。

一度決裂し、異空間で遭難し、離れ離れになったのにも関わらず。


復活した異変対策チームの長い冒険の末に、

ノア達はとある人間と対峙する。

その者はこう話した。


「ごきげんよう。」

「...」

「私は途方もない時間、どうすれば人々を救うことができるのかを考えてきた。」

「君達は異変が発生する前の世界がどうなっていたか、覚えているかい?」

「人間は皆苦痛を感じていた。血を流し、争い、力を手に入れなければ生き物は生きられない。それでも人間はその裏で現実に絶望し、平穏を望んでいる。」

「私はこの世界を変える方法を模索し続けていたが、答えを見つけることは出来なかったよ。」

「でもその代わりに思いついたんだ。君達にその答えを見つけて貰おうとね。」


まさか。


「生き物は...身も心も全てが

現実に縛られることなく...『自由』になるべきだと思うんだ。」


ある意味狂人ともとれる者だった。


その者は、人々の心を異世界から操り、空想と現実の境目を無くし、己の欲を暴走させた怪異を生み出した超本人だったのだ。


ノア達は、異変の真相を目の当たりにした。


「さあ、君達も"元"の世界に戻りなよ。誰よりも正直に動いていた時の君達はいつよりも美しかったよ...」


まっぴら御免被る。


ノア達は"世界"を操る程の強大な力を前に大苦戦を強いられたが、遂に異変の元凶を打ち破った。


「...」

「おぞましいな。 」

「僕にも、お前達のような強い心があれば...

こんな結果にはならなかったのかもしれないね...。」

「負けを認めよう。」


ノア達は人々が暴走することの無い元の...


...いや、元よりも少し暖かい世界を取り戻すことに成功したのである。

そして、この世界と、そして仲間をずっと大切にすると決めた。



「...この世界も、今も多くの人々がガンダーラによって苦しんでいるかもしれない。」

「この世界を放っておくことは出来ないよ。」


時は現在。


ノア達が別世界に遭難し、圧倒的な脅威に蹂躙されるのは初めてでは無い。魔龍グレイドはその限りではなかったが、

不思議なことに、きっと今回も大丈夫だという気がしてきた。

私達はいつだって諦めないのだから。


ーーーーーーーーーーーーーー


目の前の魔龍の強さに絶望し、諦めた者も数少なくはない。

しかし、目の前のこの若者は、彼の大切なものを取り返すため決して諦めることはなかった。

『魔龍』にとって、ノアもまた数少ない天敵のうちの一人なのである。


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