『魔龍による蹂躙』
強大な『魔龍』にとって、目の前の三人は羽虫も同然。羽虫を振り払うのに全力を出す必要はない……というのは建前である。
可愛い部下かつ難攻不落のハクジャやガルゼドールを倒し、この死の街への進行を進めていた四人の勇者…まあ、その勇気は認めるが無謀な勇者というのは愚者も同然である。よって、これからは彼らのことを四人の愚者と記す。
さて、これ以上被害を出される前にグレイドはこの四人の愚者たちを処理したつもりだった。少なくとも、グレイドが見極めた彼らの力量ではあれらの攻撃に耐えられるはずはなかったのだ。
しかし一人減ったとはいえ…彼らは特級戦闘員たちやクラゴア、そして幹部級の強さを誇るバーディアすらも倒し、今こうして自分と相対している。
こんなことなら突如行方不明になったザルドアを探しに未来の海など行かず、自分も加勢して徹底的にやっておけばよかったとグレイドは後悔する。まあしかし、時すでに遅し。もしもの話だなんてずっとしてもいられない、先に考えることがある。
それは何故、彼らが生きているのかということだ。
何度も言うが、彼らの力量ではあの攻撃に耐えられるはずがなかった。しかし何故か彼らはこうして生きている。それも重傷を負ったわけではなく、自分と相対できるほどには元気も残っている。
————どういう、カラクリだ。
そういう特殊能力があるというのならぜひデータをとりそれを活用したい。そのためには彼らを生かしておく必要がある。多少のハンデとなるが、まあいいだろう。
それでは、改めて。
「グォォォォォォォ!!!!」
魔龍の凶悪なる咆哮が、世界を揺らす。
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龍により放たれたソレは、量産機兵どころかシャドウロイドすら軽く消し炭にできる砲弾。その数は百をも超え、こちらの命をえぐりとろうと強襲する。
「あまりにも規格外すぎるわ…!?」
ルビーは大量の光球を放ちそれらを相殺しようと試みるが…無駄なことである。弱小種族が、"龍"に勝てると自惚れてしまったのかというのか。
一瞬で紅き砲弾は光球を掻き消し、三人の命を狙う。
「守り切ってみせ…ぬおおおお!?」
相性有利とはいえバーディアとも互角の戦いを繰り広げていたアルマだったが、今回に関しては相手の格が違った。地面にぶつかり次々と衝撃波を起こす紅き砲弾たち。その余波といくつかの砲弾を防ごうと試みるも…
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
「私も加勢するわ…!」
「少しでもアルマの傷を癒さなければ…!」
アルマの盾はたとえ世界が壊れようとも壊れることのない逸物。もはや、"神器"といっても過言ではないのだが…
その盾が、ミシミシと悲鳴を上げている。間一髪で盾が存在を繋ぎ止めているとでもいうのだろうか、盾の悲鳴は鳴り止まない。
そして『守護騎士』の攻撃すら盾を使えば難なく防いでみせたアルマだったが、今回はそうとはいかない。今にも突破されそうな不安定さがあるし、実際ルビーとノアの手助けがなかったら既に突破されている。
「てやぁぁぁぁぁ!!!」
なんとかアルマと盾の力が紅き砲弾たちに打ち勝ち、そしと跳ね返してみせた。補助ありといえども、グレイドの攻撃をなんとか捌いてみせたアルマもかなりの偉業を成し遂げている。その点は認めざるを得ない。
しかし、グレイドを倒すとなると話は別だ。
「グォ」
紅の砲弾を防ぎ切ってみせた三人を確認したあと、グレイドは距離を詰めるため一気に突っ込む。
まあ正直隙だらけだしやろうと思えばいつでも殺せるのだが、そういうわけにはいかない。何せ、彼らが生き延びてみせた"カラクリ"を理解しそれを有効活用しなければならないのだ。
四ノ厄災はほぼ全滅、戦闘員の数も大きく減らされてしまった。可愛い部下だった…まあいい。ひとまず、戦力を回復させるためにもなんとしてでもこのデータは取らなければならない。そしてそのためには彼らを生かしておかなければならない。
突っ込んでくるグレイドを見てルビーは瞬時に火の魔法で防御体制を、アルマは二つの盾で全員を守ろうと防御体制を、ノアは双剣で少しでもアルマの負担を減らそうと防御体制を取ろうとするがあまりにも遅すぎる。
「きゃ!?」
「ちっ…!」
グレイドによる強烈な打撃を喰らう。なんとかアルマが威力を軽減させたものの彼ら三人は後方へとまるで等速直線運動かのように…
等速直線運動すらもグレイドは許さない。即座に彼らの後ろに回り込み、そして彼らを上空へと打ち上げる。
これだけしてもまだ魔龍は許さない。
上空へと打ち上げられた三人だったが、さらに回り込んできたグレイドにより一気に地面に叩き落とされる。三人は地面に叩きつけられ、地面は大きくひび割れ、もう既にボロボロ。しかし彼ら三人も何もできなかったわけではなく、咄嗟の防御は何度か成功していたし治癒魔法によって最悪の事態は免れた。それでも、全員大きく血を吐く。
「グォ…!」
さらにそこにグレイドが三人へ向けて死の吐息を叩き込む。死の吐息を叩きつけられ、地面から大きな煙が発生する。まあ死なない程度には手加減してやったが…少々やりすぎてしまっただろうか。今後、力の調整について練習しておくのもいいかもしれない。
「中々…うぐっ、やるじゃない…!」
「流石メギドラさんと互角にやり合っただけあるっすね…!」
「だが、まだ俺たちは倒れないよ」
しかし、三人はまだ戦意を失っていなかった。
膝をつくほどボロボロであったが、彼らはなんとか立ち上がってみせたのだった。
本来敵に感心することなどあまりないグレイドだったが、今回ばかりは素直に感心する。
彼らが立ち上がることができた理由はノアによる治療魔法の力も大きいのだが…それとは別な、大きな理由があるのだった。




