『相対せしは最強の魔龍』
強大かつ誇り高き騎士が大穴へと落下していくのを見届け、アルマはホッとする。
「ふぅ〜…流石に疲れたっすね」
あそこまでやってもあの青騎士、バーディアにはほとんどダメージを与えられていなかった。最後に勝ったのも場外に押し出しただけみたいなものであって、直接打ち倒したわけではない。
まあ、とはいっても幹部クラスの強さを持つバーディアをアルマ単独で打ち破ったのはまさに大金星である。
しかし、そんなことでずっと喜んでいるわけにもいかない。
「さて…ノアさん、ルビーさんと合流するっす」
これで『死の街』攻略完了…だったらよかったのだが、残念ながらそんなことはない。
あくまでバーディアはNo.2。そして、この『守護騎士』をも超える『魔龍』がまだ残っている。
「段々不安になってきたっすけど…なんとかなると願いたいっす。ころころ〜」
アルマはまるまりふぉーむへと移行し、来た道を逆走する。命に関わるほどではないが、バーディアによって残された傷がそこそこ痛いのであとでノアに回復してもらうとしよう。
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「お、アルマも帰ってき…そっちもかなり激戦だったんだな」
戻ってきたアルマに対しそうノアは声をかけ、そして驚く。防御力だけならこの3人の中でもダントツのアルマが、かなりの傷をつけて帰ってきたのだから余程だったのだろう。
「そうなんっすよ〜流石に痛いのでできれば回復してもらいたいっす」
「わかってる、任せろ」
ノアはそう言いながらアルマに対して手をかざし、治療魔法でアルマの傷を癒していく。どうやら精神攻撃にも対応できる治療魔法の使い手もいるようだが、残念ながらノアはそこまで治療に対して万能ではない。しかし、物理攻撃なら時間をかければ癒すことは可能だ。
「都合上仕方ないとはいえ…ニンゲンと二人きりってのはイヤだったから無事に帰ってきてくれて嬉しいわアルマ〜」
「(咳払い)」
今こそ精神攻撃にも対応できる治療魔法を使えるようになりたいところだが…まあ、我慢しよう。
「ノアさん回復ありがとうっす〜あとルビーさんも人間嫌いなのは価値観上わかるっすけど仲間なんだからほどほどにっすよ!」
「まあでも、人間のクセになかなかやるなとは思ってるわよ?」
一見そうとは思えないだろうが、実はこれでもルビーの人間に対しての評価となると最高評価である。まあ、ノアにとっては知る由もないのだが…
さて、そんな雑談はここら辺で終わりとしよう。
「ハクジャ、ガルゼドール、クラゴア、バーディア。これで、四ノ厄災は全員撃破っすね」
まあクラゴアについては別エリアに視察中と聞いていたため、登場も撃破も想定だったが倒せたので結果オーライである。
「シャドウロイド軍団は遠征中、ザルドアは行方不明…やるなら、今しかないわね」
いよいよ、この死の街での戦いもラストスパートを迎える。そしてそのことに怯える者は誰一人いない。相手は数多の世界を滅ぼし玉座に君臨する魔龍。その頂に、彼らは迫ろうとしていた。
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崩壊した街の中央、そこは人工物すらも何一つない魔龍の赤く朽ちた巣の本拠地。地面に広がりこびりつく赤くおどろおどろしい物体たちは、ここまで来た挑戦者をまるで歓迎しているかのように喝采し強く鼓動を開始する。
街の至る所にこの赤い物体はこびりついていたが、とうとう地面の割合がゼロになってしまっている。
そして、そこに鎮座しているのは歪な深紅の翼を持つ龍。数多の世界を滅ぼし、不死龍とも呼ばれた怪物。それこそが、この死の街の帝王であり、そして…
絶対に誰にも倒せない無敵の存在なのであった。
「とうとうここまで来たっすよ!」
アルマ、ルビー、ノアの3人は意思を持たぬ機械の軍団を、紫の狼など特級戦闘員含む大量の雑兵たちを、三つ首の白蛇を、翼を持つ大蛸を、隻腕の青騎士を退けついにここまでやってきた。
ここで一つ言っておこう。
アルマ、ルビー、ノアの3人はこのフィールドでは拠り所の世界による補正を受けられない。
魔龍グレイドは、このフィールドでは拠り所の世界による補正を受けられる。
魔龍グレイドの勝利と、三人の勇者の敗北がこれで確定した。
「先手必勝よ、それ!!」
「全力の体当たりっすよー!!」
「どりゃぁぁあ!!!」
ダイヤをも超える渾身の一撃が、大量かつ極太の光の弾が、光の双剣が、魔龍グレイドを襲う。
一つ、断言しよう。今の攻撃だけでシャドウロイドなど10体ほどは粉々になった可能性が高い。しかし、なぜこの総攻撃の威力についてわざわざ解説しているかというと…
答えは単純、『魔龍』の規格外さを伝えるにはこれが一番手っ取り早いからである。
「ノーダメージ…っすか!?」
「落ち着きなさい、何かカラクリがあるはずよ…!」
魔龍グレイドは、全くの無傷。そして目を光らせ不敵にもニヤリと笑う。
魔龍グレイド攻略戦…否、魔龍グレイドによる蹂躙が始まったことを宣言しよう。




