『一騎討ち』
ここで一つ、バーディアという男の話をしよう。バーディアは歴史の彼方に葬られ名すらも残っていない者に造られた自立思考兵器。そして、『銀河最強』とも言われ、そして神話にも名を残した伝説の騎士である。しかし…
「…孤独」
バーディアという騎士はあまりにも強すぎた。人間も魔物も、あらゆる者が自分を狙って襲いかかってくる。自分のあまりにも硬すぎる鎧を剥いで素材にするのが目的なのだろうか。
当然、そんな者バーディアの敵ではない。全て返り討ちに遭う。それも、圧勝。本気を出さずに少し斧を振るってるだけで相手はただの肉片となる。
だからこそ、毎日が孤独で退屈だった。
本来守るべき対象の創造主も消息不明。
あまりにも弱すぎる愚か者を葬るだけの毎日だった。
そんな日々に現れたのが魔龍グレイド。
彼には手も足も出なかった、今までの相手とは格が違った。そして、自分はこの退屈な日々を終えることができるのかと安堵した。
しかし、グレイドは彼にとどめを刺さなかった。そして、グレイドはこう提案したのだ。
自分の仲間…いや、"右腕"にならないかと。
お前は強い、その強大な力を俺に預けてくれないかと。
「あぁ、あのときの恩はまだ覚えていますよ」
孤独でかつ力を振るうことのできる機会がなかったバーディアはその提案に喜んで乗り、そして今彼は"死の街"のNo.2、『守護騎士』バーディアとして君臨しているのだった。
いつか絶対的な力を持つグレイドと並べるような実力を目指し、彼は日々鍛錬を怠らない。そして、初めてできた仲間というのは想像以上に暖かなものだった。
『魔龍の右腕』として、主人に近づく不届き者の羽虫は全て斬り落とす。
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二つの盾と二つの斧は金属音を立てながら交差する。守護者としてお互い譲ることのできない戦いは、確かにまだ続いている。
「そりゃ!どりゃああああ!!!」
「素晴らしい…!」
通常モードと"まるまりふぉーむ"を使い分けながら、アルマは平均的な幹部ほどの実力はあるバーディアに対して互角の戦いを繰り広げてみせる。並大抵の者は『守護騎士』バーディアとは二、三手打ち合った時点で決着がつき、敗北してしまうだろう。アルマが互角の戦いを繰り広げられている理由とは、何か。
主人公補正か、想いの強さか、アルマ自身も絶壁の防御力を有しているため弱点がわかるというのか、ここに来て潜在能力が解放されたとでもいうのか、あるいは…その全てなのか。
「隙あり、とでも言っておきましょうか」
「ぬお!?」
しかしバーディアとアルマとの力量差は激しい。通常の姿からまるまりふぉーむに変わる隙をついてバーディアは氷の斧で斬撃を喰らわせる。アルマは地面に転がり込むもののすぐさま体制を立て直しバーディアと相対する。
地面は踏み切りで爆ぜ、アルマはバーディアに対して一気に距離を詰める。
バーディアも負けじと迎撃の姿勢となり前方へと踏み込んできたアルマを迎え撃つ。
漆黒の斧が双盾により防がれるが、氷の斧がその隙をついてアルマを叩き潰そうとする。
しかしアルマはすぐさま姿を変え球の姿となり、上方へと跳ぶことによってバーディアの攻撃を回避する。そしてまた通常の姿となりバーディアの頭部に強烈な頭突きをお見舞いする。
バーディアは漆黒の斧を薙ぎ払い一度アルマとの距離を取る。
————効いた。
鋼鉄をも、ダイヤをも超える硬さを誇るアルマの頭突きは、確かにバーディアに効いた。しかし、理由はもちろんそれだけではないのだが…これ以上語るのは無粋なことである。
バーディアによる胴体目掛けて放たれた迫撃、直撃を受ければ断ち切られることはなくても大きなダメージに繋がる。アルマは迷わず跳び、迫撃の氷の斧を真上から踏み潰した。
そして追撃として放たれたものの当たりどころを失った漆黒の斧は地面に突き刺さり、削岩する轟音にこの大地が揺れたかと錯覚させられる衝撃が走る。
それはまさしく人がいれば歴史にも残るであろう戦い、惜しむべくは今ここには観客は誰一人いないということだろうか。
戦士と戦士の誰にも邪魔されることのない一騎打ちはまだ続く。
バーディアもかつてないほどの強者。アルマが風切る氷の音を捉えた直後、二つの盾でガード。氷の斧はそれによって止められる。
しかし、漆黒の斧はまだ残っている。
一度あえて退くことによってアルマの体制を崩し、そして漆黒の斧を杖代わりに発生させた風の刃はアルマの腹部に直撃した。
「くっ…!」
鉄壁の防御力を誇るアルマにもこのダメージは確かに効いた。しかしまだ舞える、ディノスが今まで負ってきたであろうダメージと比べたらこんなもの大したことはない。
一度退きはするものの…体制を崩すことなくアルマはまたバーディアに対して距離を詰める。
「ガチの接近戦となればそっちの方がキツいっすよね!?」
「その通りですな」
バーディアの持つ漆黒の斧と氷の斧はどれもリーチが非常に長い。しかし、リーチの長さは本当の至近距離での接近戦となれば逆に仇となる。射程が長いからこそ生まれる隙もあり…まあもっとも、並大抵の者はそこに付け入る隙を見出すことはできないのだが。
しかし一つ確かなことを言うと、アルマなら接近戦においてこの隙を見出し突くことができる。
「参りましたね…この姿となると、火の魔法は使えないんでした」
火の魔法で焼き尽くすことは今のバーディアにはできない。その理由は単純、火の魔法によって氷の隻腕とその斧が溶けてしまっては意味がないからである。僅かに溶けでもしたら義手の機動性や威力が大きく損なわれる。そしてそれは、この双盾の戦士と戦う上でなんとしてでも避けたい。
二つの斧がアルマに向かって振り下ろされるが、アルマはそれぞれの盾でこれを防いでみせる。そして、反動で大地がひび割れる。アルマは一度退…かない。あえて突っ込み力をかけることでアルマが退くものだと思っていて意表を突かれたバーディアの体制は大きく崩れた。
その隙をつき、アルマはとびかかり全力の頭突きで氷の隻腕にひびを入れる。しかし割れない。なら、もう一発入れるまでだ。渾身の頭突きが、氷の隻腕を貫き、そして氷の斧が地面に落ちる。
「ほう…!」
狙いはこれだったのかと感心するバーディアだがこの男相手に感心する余裕などはない。牽制のため風の刃を乱射しアルマに一旦退かせる。
そして追撃のため眼が最高潮に赤く光るバーディアが踏み切りを爆ぜ、一気にアルマとの距離を詰める。そして、全身全霊の斧による一撃をアルマに喰らわせる。アルマは吹き飛ばされ、岩壁に激突する。
「くっ…」
アルマは少々血を吐くが、膝は決して突かない。すぐに体制を立て直す。
「これで決着をつけます」
バーディアも追撃のために一気にアルマとの距離を詰め、とどめとなる一撃を喰らわせる。
しかし、これこそがアルマの本当の狙いだったのだ。
アルマは球上の姿へと変え、漆黒の斧による必殺の一撃を避ける。そしてその必殺の一撃は岩壁に対して激突し、とうとう負荷に耐えられなくなった岩壁は土砂崩れと化しバーディアに襲いかかる。
バーディアはこれを難なく斬り土砂崩れの脅威から抜け出すが、違和感に気づく。かの戦士は、どこへ向かったのか、と。
しかしそれに気づいたときにはもう遅い。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
とてつもなく勢いのついたアルマは盾を構えバーディアの斧に深く激突する。バーディアはなんとかこれを漆黒の斧で受け流そうとするも…盾の達人の勢いは止まらない。あまりの衝撃にバーディアは一気に大穴の崖沿いへと連れ戻されてしまう。
ここまで来たら、もはや作戦も何もない。
「くっ…ぬおおおおおお!!!!」
「…!!!」
全力でバーディアを崖に突き落とそうとするアルマと、それに抵抗するバーディアの力試しが始まった。もっとも、バーディアは隻腕という圧倒的なハンデがある。そして…
このアルマという男には、絶対的な決意がある。もちろんバーディアもその決意の点では負けていないのだが…アルマの想いが、ディノスに対しての想いが、それを上回る。
それが、勝敗を分けた。
「どりゃああああああああああああ!!」
アルマはバーディアに力試しに打ち勝ち、バーディアを奈落へと突き落とすことに成功する。こうなってしまったら、もはやバーディアは言い逃れようのない敗北である。尊敬する主人に対して申し訳ない気持ちも大きいが、ひとまずここは勝者を讃えようではないか。
「見事、でした」
これにて、バーディア攻略線閉幕である。




