『決戦!vsクラゴア』
「全く当たらねぇなぁ、エイム力エイム力ゥ!ほら、頑張った賞でこれどーうぞ!」
「厄介ね…!」
大量の光球がクラゴアに襲いかかるが、全て当たることなくクラゴアに回避され、お返しに瓦礫の投石をプレゼントされる。
ルビーとノアは投石攻撃を避け、クラゴアをどうやって倒すかを考える。クラゴアは最弱と聞いていたのだが、これでは脅威度は他とほとんど変わらないような気もする。しかし…
「俺のメインウェポンが投石攻撃だけってのもそろそろしんどくなってきたぜぇ!」
決定打が見つからないのはクラゴアも同じである。現状、得意とする触手を使った攻撃はルビーの魔法のせいで実質不可能と言ってもいい…なので、魔法の影響を受けない瓦礫の投石をメインウェポンとしているのだが…これだけで倒せるほど相手も貧弱ではない。
どちらもまさしく手詰まり、という状況…
の、はずだった。
「そうだ、いいこと考えたぜぇ!俺って天才かぁ!?」
クラゴアはそう言うと八本の触手でそれぞれ近くにあった電柱や枯れ朽ちた街路樹などを引き抜く。そして…
「これはこれは…中々やるじゃない!」
「おいおいマジか…!」
ルビーとノアもこれには驚愕する。そう…
「八刀流のクラゴアだぜぇぇ!!」
それぞれの触手で街路樹や電柱を持ったクラゴアはそう言い放つ。これで、魔法によるカウンターや投石攻撃のタイムラグを気にする必要はない。
改めて武装したクラゴアがノアとルビーに襲いかかる。
「そらそらぁ!どうした逃げてばっかりかぁ!?」
八本の触手からなる巧みな連撃は、ノアとルビーを防戦一方にさせる。
「こっちもやられてばっかりじゃないわよ!」
クラゴアの隙を窺いルビーも反撃する。電柱の方は無理だが…街路樹の方はなんとかできる。ルビーは炎魔法で射程圏内のクラゴアに握られた街路樹を焼き尽くす。
「またまたやってくれんなぁ!ほらプレゼントだぜぇ!!」
「ぬぉ!?」
クラゴアは燃え朽ちていきもはや武器として使いものにならなくなった街路樹たちをノアへと向かって投げ飛ばす。ノアは咄嗟にしゃがむことでなんとか燃えゆく街路樹から避けることができた。
「だーかーら!当たらねぇんだって言ってるじゃねぇか!人間のペットらしくそこで人間に甘えとけよバァカ!」
「この…!」
クラゴアに全ての光球を避けられ、挙げ句の果てに最大級の侮辱を喰らい一瞬ルビーは冷静さを欠きかけた。まだ大丈夫ではあるが…長く戦い続けるのはまずい。
しかしそこで、ノアがある作戦を思いつく。
「ルビー。あのクラゴアの動きを封じれる方法を思いついた。そのために時間稼ぎをしてもらうことはできるか」
ノアはルビーに対してそう囁く。ハクジャ撃破…という実績もあり信頼性のあるノアが思いつく作戦。反対するメリットはない。
「わかったわ、時間稼ぎくらいなら余裕よ。ただ、いつまで持つかはわからないからできるだけ迅速にね」
「任せろ」
「俺の前でなーんか話してるだとぉ…随分余裕そうじゃあねぇか!」
クラゴアはそのふざけた態度に怒り、彼らを電柱で叩きつぶそうとする。しかし当然、ノアとルビーの二人には避けられる。
「あなたの相手は私よ。"エスコート"はお得意かしら?」
「それは苦手だぜぇ!!"エリミネイト"は得意だがなぁ!」
クラゴアは電柱を使ってルビーを薙ぎ払おうとするも、電柱の一点に光球を集中してぶつけられ電柱はぐにゃりと曲がり、武器としての価値はなくなってしまった。
「ちっ…!」
クラゴアは使い物にならなくなった電柱を放り投げ、ルビーを押し潰そうと残り四本の電柱を振り回す。クラゴアは別にバーディアなどとは違い剣の達人ではないゆえ…そもそもこれは剣ではないし、触手での攻撃をモットーとしているんだから上手く扱う必要もなかったのだが。まあ、電柱は電柱でずっと使っているとやはり扱いづらさが目立ち…クラゴアも焦ってくる。
「そらそらぁ!」
「あらあら、そんなに乱暴に振り回してお下品ね」
クラゴアは四本の触手で電柱を振り回し、残り四本の触手で瓦礫を投石する。それに対してルビーは杖から放った光球でいくつかの瓦礫を相殺しつつ、即座に光の薙刀に切り替え、最低限自分が避けるための道を確保するべく邪魔な乱入者たちを焼き裂きつつ電柱の脅威から逃れるべく射程範囲外に退避する。
追撃として瓦礫がまだ飛んでくるが、問題ない。
「ちょうどいい大きさで助かったわ」
「ナニヲ…」
「グギ…」
薙刀で切り裂かれて四肢をもがれ、戦闘能力を失ったモノ・セラノイドとオルタナリースを肉の盾としてルビーは瓦礫の脅威から身を守る。
「おうおう、やるじゃねぇかよぉ…!」
クラゴアにダメージをほとんど与えられていないのはルビーもだが、それはクラゴア側も同じのことである。さっきから避けられてばかりで全く攻撃を加えられていない。これは由々しき事態だ。
「まあこのまま長期戦に持ち込んだらいつかあのアマも倒れるぜぇ!!」
クラーケンの自分とたかがウサギ。確かにバーディアも認めるように魔法の腕は中々のものだが…体力は果たしていつまで持つというのだ。そこさえ攻めれば、何も問題ではない。
しかし、一人お忘れではないだろうか。
突如、クラゴアの右の翼に痛みと痺れが走る。
「この翼がお前の弱点だろ?」
「なっ…小僧っ!?」
その犯人は…隙を窺ってクラゴアの真上に飛び乗っていた少年、ノア。ノアはクラゴアの翼に剣を突き刺しこう話す。
「お前が最弱とされてる理由がわかったよ。——他の厄災どもと比べて、弱点があまりにもわかりやすすぎる」
ノアにより翼に剣を突き刺されたクラゴアは…
「ぬおおおお!?」
クラゴアは片方の翼がダメになったことにより、バランスを保つことができず急降下し地面へと墜落していく。回避性能が高く、サポート適性も非常に高いクラゴアだが…"不意打ち"だけは非常に相性が悪いものなのである。
「よっと!」
ノアはクラゴアが地面へと墜落する直前にその場を離れ受け身の姿勢をとることにより落下ダメージをほとんど受けずに済んだ。もっとも…
「ぐぉぉぉぉぉ!!や、やるじゃあねぇかぁぁ!!」
目の前の大蛸はその限りではない。もろに落下ダメージを喰らい、大ダメージを負ってしまった。
「翼がダメになろうとなぁ!?俺様にはこの自慢の触手があるんだぜぇぇぇ!?」
翼がダメになったとしても、それでもクラゴアは特級戦闘員よりも高いスペックを持つ。まずは知将であるノアに敬意を示し八つ裂きにしようとするが…
「さ、たこ焼き作りの下処理と行こうかしらね」
ノアに襲いかかる八本の触手の前に割って入り、光の薙刀で全て切り裂くその影の正体はルビー。
「あっちゃあああああああああああ!??」
クラゴアは思わぬ激痛に悶え、反応が遅れてしまう。それさえなければまだ逆転の可能性はあったというのに。
その隙をルビーは見逃さなかった。
「…ふふっ、どんな味なのかしら?」
ルビーはクラゴアの急所に光の薙刀を突き刺し、クラゴアはその生涯を終えた。
———クラゴア攻略戦、これにて終結である。




