『戦士の咆哮』
「わかりました。その一騎打ち、引き受けましょう」
「待て待て待てですよぉ!絶対罠ですぜぃ、行っちゃダメだバーディア殿!」
バーディアがアルマとの一騎打ちに応じようとするものの、クラゴアはそれを止める。だいたい、今までこのアルマジロはどこへ行っていた。そしてなぜ帰ってきたというのだ。
こんな見え見えの罠に乗るわけには…
「罠でも何でも構いませんよ。私を倒すことができるならですが」
しかし、バーディアは歩みを止めずアルマが指定した場所へと向かう。何より、一騎打ちを申し込まれたというのにそれを断っては騎士失格である…決して、断るわけにはいかない。
「クラゴア、あのお嬢さんと少年の相手は頼みました。できますよね?」
「…はいはいわかりましたですぜぃ!!ただ流石に二人相手はキツいんで時間はかかりやがりますが!!」
任務を忘れて勝手な行動をしだすバーディアに対して、渋々だがクラゴアはそれを許す。
まあ、バーディアのことだからアルマジロ一匹くらいなら返り討ちにはできるだろう。
人の心配よりもまず先に自分のやるべきことを遂行するために、クラゴアは愚かな挑戦者二人に立ち塞がる。
「おうおう!!派手にぶっ潰してやろうじゃねぇかぁ!!」
翼を持つ巨大な大蛸は改めて宣戦布告をし、ノアとルビーの二人に襲いかかる。
「かかってこい!」
「たこ焼きにしてあげるわ」
クラゴア攻略戦、開始。
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指定された場所に着いたバーディアだったが、違和感を覚える。この違和感の在りどころは…地面だ。
「硬すぎて攻撃が通らないなら…こんなのはどうっすか!」
アルマはそう告げ、地面を盾で軽く叩く。すると…
突如バーディアが立っている地面が崩壊し、そして全てを飲み込む大穴が顕になる。
それはバーディアですら例外ではなく、彼をも飲み込もうとする。
「ほう…!!」
しかしバーディアも歴戦の猛者であり、これしきで狼狽えるような軟弱者ではない。崩れゆく地面から逃げ出そうと降り注ぐ岩などを利用して跳ぶ。右、右、左……
あっさりと、バーディアは大穴の脅威から抜け出してしまった。
「焦りこそしましたが…あなたの切り札とやらは私には通用しなかったようです」
確かに"あと一歩"のところで自分を倒すことはできただろう。しかし、その"あと一歩"が足りなかった。今までもバーディア相手に罠を仕掛けてはバーディアにことごとく打ちのめされた者はたくさんいた。おそらく、相対している彼もその類だ。もはや、アルマに残された道など…
「なーに言ってるんすか。———想定済みっすよ」
「!」
この程度か、と落胆していたバーディアに対しアルマはそう返した。そして…
「確かに僕は防御力が自慢っすけど攻撃性能はほとんどないっす。でも、あの大穴までお前を押し出すことは可能っす…!」
「…!」
歴戦の猛者、バーディアに相対するアルマもまた歴戦の猛者。今まで自分がどれだけ戦ってきたと思っているのだ。この程度で諦めるほど軟弱者ではない。
しかし…今度こそ想定していなかった三つの影がアルマに対して襲いかかる。それはモノ・セラノイド、オルタナリース、侵晶衛星。彼らは、アルマが隙を晒すまでじっと様子を窺っていたのだった。
そしてそのチャンスは、今だ。
「しまっ…!?」
アルマは咄嗟に防御態勢となるが、もう遅い。三人の卑怯者たちはそれぞれ己が出せる最高威力の大技を放とうとするが…
突如、その三人の首が容赦のない風の刃によって跳ねられあっけなく絶命する。
その犯人は、バーディア。
「これ以上の無粋な横槍はやめてもらえると助かります。さて…」
バーディアは卑怯者たちにそれだけ言い残し、一呼吸置く。
すると青騎士の眼は赤く光りだし、そして彼は氷の魔法で義手と斧を作り出す。
「認めましょう。私をここまで本気にさせたのは、我が主人とあなただけだ」
漆黒の斧と氷の斧を構え、バーディアはそう話す。今までありとあらゆる者と戦ってきたが…『戦士』として認めたのは赤き魔龍だけだった。それに、アルマが追加される形となる。
「『守護騎士』バーディア」
"名乗り"は戦士の流儀である。これは、どこの世界でも変わらないことだ。名乗りを上げられたら、名乗り返すのが礼儀というものである。故に、アルマはこう返す。もっともこれはゲーム時代に使われていた二つ名であり、今までディノス以外に話したことはなかったのだが…この青騎士になら名乗ってもいいだろう。
「僕は…『絶壁』アルマっす!」
一方は龍を、一方は鰐を守るそれぞれの"盾"たちが相対し、誰にも介することのできない一騎打ちがここに始まる。




