『無敵の騎士、バーディア』
「こういうのはいかがでしょうか」
バーディアは挨拶代わりとばかりに斧で生み出した風の刃をノア目掛けて放つ。まあ本当に挨拶のようなもので、普通の人間が当たっても一命を取り留める程度には手加減をしているのだが。音のない風の刃はノア目掛けてグングン進んでいく。だが、自慢のタンクを舐めてもらっては困るというものだ。
「させないっすよー!」
「ほう」
盾で軽く風の刃を受け止めたアルマは、そのお返しとばかりに丸まって渾身の体当たりをバーディアにぶつける。もしこの体当たりが紫の狼、トタラに当たっていたら少なくとも怯ませることぐらいは簡単にできていただろう。
だが…
「これもノーダメージっすか…!」
「防御力の高さには自信がありますゆえ」
確かに直撃はしたはずだが、ダメージは全く通っていないようだ。バーディアは斧を振り下ろしアルマを叩き潰そうとするも…
「くっ…流石に真正面から剣で抑えるのはキツイね」
アルマに斧が届く前に間一髪のところで間に合ったノアは、光の剣で斧が振り下ろされるのを阻止する。しかし…これくらいに止められるようじゃ、懐刀の名が泣く。バーディアは一気に力を入れ、ノアごとアルマを叩き潰そうと動く。
「私のことも忘れないでほしいものね」
それはこの高貴なウサギの女王が許さなかった。光の魔法がバーディアに襲いかかり、その隙にノアとアルマはバーディアから距離を取る。
「当然のように無傷だな…!」
「あら〜これは中々骨が折れるわね」
「『守護騎士』という二つ名を主人より頂いているのです。当然、その名に似合った働きはさせてもらう所存」
例にも漏れずこの青騎士も何かしら弱点はあると睨んだルビーとノアはその弱点を探るため、火の魔法をぶつけてみたり電柱を利用して感電させてみたりなど様々な方法を試すが…どれもいまいち効果はない。
そして、アルマだけがこの青騎士に対して違和感を抱く。
確かにこの騎士の防御力は異常に高く、今まで戦ったことのある相手の中でもかなり上澄みの方ではあるのだが…
自分が見極めた力量と比較すると、今のバーディアはそれよりも確実に劣っている。
「防御力が高くて攻撃力は中程度で機動力はゼロ…?そんなはずないと思ったんすけどね…」
アルマはバーディアの攻撃から仲間を守りながらそう呟く。さっきは隙を突かれたが、しっかり盾を使えばバーディアの攻撃も十分抑えることはできる。しかしそれにしても…いや、ただの自分の勘違いだったのだろうか…?
「くっ…硬すぎて攻撃してるこっちの手の方が痺れてきた」
光の剣でバーディアを斬りつけるノアだったが、もはやあまりにも硬すぎて叩く…という表現の方が適切に思える。金属音が何度も鳴るが、一向にバーディアには傷一つつけられていない。
「この程度でしょうか。あのハクジャを…倒したというのだから期待していたのですが」
バーディアは斧で薙ぎ払って前衛2人をどかす。そして度々自分に襲いかかってくる光球を参考にして、こちらもルビーへ向けて光の球を放った。
一つルビーの光球と違う点があるとすると…
「デ、デカい!」
「っ…私の真似っ子のつもりなのかしら…!」
ルビーは防ぐよりも回避した方が消耗は少ないと判断し、瞬時に右方向へと回避する。
そしてそのすぐ後ルビーがいた場所を一つの大きな光球が通り過ぎ、後方にあった民家と壊れた車を粉々にする。
ルビーは大量の小さな光球で相手を翻弄しながら攻撃する戦法を取っているのだが、このバーディアは真逆。大きな一発で一気に決める戦法を得意とする。
「このままじゃジリ貧だ、どうするか…」
「そうね…このままじゃ魔力が尽きるのが先だわ」
ルビーが一瞬ではあるが人間への嫌悪感をも忘れ、あの青騎士の対処をどうするか考える。そしてそれはノアも同じである。電撃や炎も何一つあの騎士には通用しなかった。これは、どうするべきだろうか。
しかし、一人だけこの青騎士の処理に対しての最適解を思いつけた人物がいる。
「ノアさん、ルビーさん!時間を稼いでもらえることはできるっすか!?………あの騎士の倒し方が、わかったかもしれないっす」
それは青騎士と同じく防御力が非常に高いアルマジロの戦士、アルマだった。




