『現れし隻腕の青騎士』
「さ、バシバシやってくわよ〜」
「ゴォァァァ!?」
「…!?」
「グ…ガ…」
「ご飯食べたからかさっきからずっと元気っすねルビーさん」
怪異が、量産機械兵が、悪魔が、断末魔を上げながら光の弾に飲まれていく。おなかいっぱいになったルビーはいつにも増して絶好調。それはもちろん、攻撃の強さにも反映される。雑魚はもちろん、まともにやり合ったらアルマすら少々手こずる敵も一瞬で無に還っていく。
龍の巣に近づけば近づくほど、少しずつ敵の攻撃や量も激しくなってきたが…ごはんをたべてひと段落した彼ら3人の敵ではなかった。
しかし、ここで決して慢心してはならない。
「いつ四ノ厄災がまた襲いかかってくるかわからない。各自、気を抜かないようにね」
「もちろんっすよ」
「言われなくてもわかってるわよ、ニンゲン」
残りの厄災は2体。『守護騎士』バーディアと『八つ裂き』クラゴアだ。クラゴアはどうやら別エリアに視察中らしいから、もしかしたら接敵せずに済むかもしれないが…
「おそらく、バーディアとやらとは絶対に対峙することになる」
ノアは確かにそう確信していたのだった。
そして量産機兵や雑兵などを片付け終わったが…
なにやら、ひとまわり大きな影がこちらへと向かって歩いてくる。
「我が名はトタラ。『死の街』特級戦闘員であ…」
「どけっす!!」
大きな紫の狼が宣言し終わる前にアルマは強力な体当たりをお見舞いする。しかし、トタラは動じない。
「不意打ちとは、なんと卑怯なことか。ではこちらも、反撃と行かせてもらう」
トタラは大きな口を広げアルマをそのまま飲み込もうとする。飲み込まれて仕舞えばいくら防御力が高くても、攻撃手段に乏しいアルマではどうしようもできない。
「なーんちゃって、っすね」
初めから自分はただの囮。アルマだけに目をつけていた時点で、このトタラに勝算はなかった。
「視界を奪われる気分を味わったことはあるか」
「ぬ!?」
後ろからゆっくり近づいてきていたノアはトタラの上に飛び乗り、この狼の両目に光の剣を突き刺す。いくら体は頑丈でも、急所をつかれてしまえば意味はない。
「ぬぐぉあああああああああ"あ"!!」
突如視界が真っ暗になった恐怖とその激痛でトタラは地面に転がりながら悶え苦しむ。だが流石は特級戦闘員というべきか、すぐに反撃をしようと…
「もうゆっくりお眠りなさい」
光の薙刀を構えたルビーがトタラを真っ二つにし、荒れ狂う巨大なオオカミはその命を落とした。これにて、もはや第何波ともわからなくなってきた雑兵戦は終結である。
ルビーは狼の亡骸を一瞥したあと、前方を見てこう呟く。
「…とうとう、見えてきたわね」
「あぁ…いよいよか」
「緊張してきたっすね…」
今までは遠目で見るしかなかった"龍の巣"だが、だいぶ全貌が見えてきた。いよいよ決戦のときも近くなってきたが…
『守護騎士』は、それを許さない。
「あなたたちがこの死の街の侵略者…とお見受けします。無益な殺生は私もしたくないところでして…すみやかな投降を推奨いたします」
彼の名はノア、ルビー、アルマを待ち構えていた隻腕の青騎士、バーディア。魔龍を守る懐刀である。ノアやルビーにはわからなかったが、唯一アルマだけは理解することができた。それは…
「勘にすぎないっすけど…ハクジャなんかよりも手強そう、っすね」
それは、この青騎士が四ノ厄災でもかなり上澄であるという点である。まだタネがわからない以上なんとも言えないが…少なくとも、ハクジャよりは強い。
「それ、まずは一発いかがかしら!」
大量の雑兵を一瞬で蹴散らした光の球がバーディアに襲いかかる。この攻撃は、ハクジャを一瞬でボロボロにしたときのものよりもさらに高威力となっている。まあ、ハクジャは一瞬で再生したからあまり意味はなかったがそれは置いておこう。さて、光の球がバーディアに直撃し、それにより発生した煙が少しずつ消えていくが……
「無傷…!?」
「おい待て、嘘だろ!?」
ルビーとノアは驚愕する。なんと言うことだ…バーディアは、今の攻撃で何一つダメージを負っていなかったのだ。全くの無傷である。そしてバーディアの方も斧を構え、戦闘体勢へと移っていく。
今ここに、隻腕の青騎士との苛烈な死闘が始まったことを宣言しよう。
バーディア攻略戦、開始。




