『待たない』
「というわけっす」
「なるほど」
状況を全く把握できてなかったノアにアルマはリヴァの紹介をした。まあとりあえず、自分たちの仲間であることを把握してもらえたならOKだ。
しかし、再会にずっと喜んでもいられない。ここは他エリアと比べても特別危険な場所である。何せ、ボスに仲良くしようだの裏切ろうだのといった甘えの気持ちが存在せず、ただ全力でこちらを殺しにかかってきているのだ。休む暇はほとんどない。それが超難攻不落のエリア、"死の街"なのである。
ところで、戦争で大事なものといえば何が思いつくだろうか。武器?人手?確かに、そのどれも大切なものである。しかし、少なくとももう一つはあるだろう?
「さて、このエリア、『死の街』について情報提供するなの」
戦争で大事なものとは、情報である。リヴァは単独行動中に手に入れた情報をノアたちに共有する。リヴァが人差し指を上げながらこう話す。
「ここのボスは誰かまだわかってないけど、直属の部下などの戦力は全て把握したからそれについて話すなの。まず一つ目は敵のメイン戦力、『四ノ厄災』なの」
「よんのやくさい?」
ルビーはそうリヴァに聞き返す。そもそも、四ノ厄災というワードすら初めて聞いたのだから当たり前だ。もちろん、それはアルマとノアも同じく。何故リヴァが『四ノ厄災』などというワードを知ってるかというと…
「ああ、これらの情報は全て氷漬けにした四ノ厄災のメンバーであるスライムに拷問して基本教えてもらったなの。本当はボスとかその他についても教えてもらうつもりだったけどその前に死んじゃったなの」
「ひぇ…仕方ないこととは言え、おっかないことするね」
「相手がこちらを全力で殺しにかかってきてる以上、綺麗事は言えないしできないなの。まあ、汚いことは全部私がやるからそこは安心して欲しいなの」
悲しいことに、『死の街』の攻略はこちらが圧倒的に不利。汚いことでもできることは全てやらなければならない。
さて、話を戻そう。
「四の厄災はボスに仕える幹部みたいなものなの。『守護騎士』バーディア、『三つ首』ハクジャ、『八つ裂き』クラゴア、『粘液』ガルゼドールの全四体なの」
「でもハクジャは僕たちが、ガルゼドールはリヴァさんが倒したから残り二体ってわけっすね」
「そういうことなの」
「残ってるのはクラゴアとバーディアってわけね。どっちも強いのか?」
ハクジャとガルゼドールは既に撃破完了している。割とどっちもあっさり勝ててはいるのだが…もっとも、残りのクラゴアとバーディアとやらが四ノ厄災の中でもかなり上澄みなのかもしれない。そうなると、今まで以上に気を引き締めなければ…
「安心して欲しいなの。クラゴアは翼を持つ巨大なタコ…どちらかといえばクラーケンの方が正しいか。まあとにかくクラゴアは四ノ厄災の中でも最弱らしいなの」
「大きいタコ…アリスがいたらタコ焼きにでもしてもらってるのに残念だわ」
「マジで?食べるつもりっすか?」
「ルビーさん………??」
クラゴアについての情報を聞いたルビーがすぐさま食事について連想し、アルマとリヴァは少し引いてしまった。この女王様、食欲で洗脳も抜け出したらしいし本当に恐ろしい。だが、ノアは一つだけ見逃さなかった。それは…
「クラゴアは…ってことは、守護騎士とやらのバーディアの方は結構強いのか?」
「んぁ、当たりなの。バーディアはどうやら…"魔龍の右腕"と言われてるなの。事実上この街のNo.2なの…」
とてつもない情報が明らかになった。しかし…バーディアも四ノ厄災。今までハクジャとガルゼドールはギミックボスであったし、その例に当てはめるならバーディアもなんとかならないだろうか。
さて…ハクジャは再生、ガルゼドールは無効。バーディアは何だろうか。
「うーん、わからないっすね…」
「ニンゲン、もしかしたらわかったりしないかしら?」
「今までが耐久寄りだったから攻撃寄りなのかも…しかし、守護騎士という点から考えると単純に防御力が高いのか?ハクジャのときみたいに生き埋めにでもするか…?」
アルマ、ルビー、ノアの三人は頭を悩ます。ハクジャは偶然対応できたが、もしかしたらバーディアはそうは行かないかもしれない。できることなら対策も考えておきたいところだが。
「頭を悩ませてるところ悪いなの、まだまだ向こうの戦力について話し足りないから話すなの」
「わ、わかったっす」
正直四ノ厄災の時点でお腹いっぱいではあるのだが、まあ、聞こうではないか。
「まず一つ目はシャドウロイドなの。これは拷問して聞いたものじゃなくて、私が直接見たものなの」
「シャドウロイド…っすか」
アルマはシャドウロイドとは戦ったことはないのだが、シャドウロイドとはそこそこな強敵である…ということくらいは把握している。しかし、そこそことは言え幹部どころかハクジャのような小ボスレベルには到底満たない強さだと思うのだが。
「私が見た限りだと、シャドウロイドの数は役百体。それも、団体行動している感じなの」
「百体だと!?」
「それも団体行動っすか!?」
「あらー…」
しかし塵も積もれば山となる、と言うように、100体もいるとなると脅威度は途端に上がる。まあ、シャドウロイドは決して塵と表せるくらい弱くはないのだが。
当然その事実はノア、アルマ、ルビーにそれぞれ衝撃を与える。
「『四ノ厄災』がギミックボスとするとシャドウロイド軍団は純粋にフィジカルを要求とするタイプのボスなの。ボスではないかもだけど、まあいいなの…もしかしたら四ノ厄災よりも脅威になるかもだから気をつけてなの」
そうリヴァは言うとため息をつき…
「次は洗脳軍団なの。ただ普通の洗脳者と違って…ここの洗脳者は集団で動いてるなの」
「集団で…ね」
「その中にはディノスやアリスくん、その他人間などもいたということは伝えておくなの」
「アニキ!?」
「アリス!?」
「もしかして、シエルとアイリスか!?」
アルマとルビーは知り合いの名を出され、ノアは知り合いがその中にいると勘付きそして驚く。
「それならすぐに助けに行くっす!」
「えぇ、アリスを早く洗脳から解放するわよ!」
「ちょっと待て!」
ノアは先走るルビーとアリスをそう制止する。なんてったって…
「まだ『四ノ厄災』も『シャドウロイド』も『ボス』も残ってる。まずはそれらの処理を進めるべきだ」
「なんでっすか!?洗脳されてる仲間を助けたらその分戦力増強ってのはノアさんもわかるっすよね!?」
「……そういうことか。アルマ、ここは癪だけどニンゲンの言うことに従うのよ」
ルビーもノアと同じく気づいてしまった。そう…
「ここまで狡猾に動いて戦力も整えてるボスがそんなこと見逃すはずないなの。洗脳組と交戦後に主力を一気にぶつけられて終わりなの………今はいないようだけどザルドアっていうサンドワームも警備役として地中を彷徨いているらしいなの。他にはボスが異世界から無理矢理連れてきた雑兵やただの量産機がいるけどそれらは大して脅威じゃないから割愛するなの。特級戦闘員っていうエリート雑兵もいるけど、それらはまあ普通に倒せると思うなの」
「なるほど、ね」
『ボス』だけでなく、『四ノ厄災』に『シャドウロイド』、『洗脳軍団』が敵の主力というわけだ。
そして、リヴァがまだ話してる途中だったとき。
突然、後方から瓦礫が崩れる凄まじい音がした。驚いて彼らが振り返ると…そこには一匹の赤き龍がいた。そして、アルマとリヴァは奴を知っている。そう、奴こそは…
「「魔龍グレイド…!?」」
ガンダーラ軍最高戦力であり、このエリア5『死の街』の支配者であり、最強かつ狡猾な無敵の魔龍。
4人の勇者の前に現れたのは、魔龍グレイドだった。
脅威になる芽は直接摘みに来たというわけか、用意も無しにいきなり敵の最高戦力と戦うことになってしまった。
魔龍グレイド前哨戦、開幕。




