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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

贖罪 白蛇の呪い♥のその裏で

白蛇の呪い の裏面です

あの夢を見たのは、これで9回目だった。


寝室の入り口に立つ夫。

私はベッドの上で会社の同僚の元カレと裸で抱き合っていた。


 そのあとは夢の中にいた様なふわふわした感覚で、気がついたら夫は元夫になっていて、私は会社を首になり、スーパーのパートの収入でなんとか子供と二人で暮らしている。そしてなぜかあの夢を見た回数を覚えている。あれから3年か。



「だからさぁ、ちょっと貸してくれよ、3万、いや2万で良いから」


 すいているスーパーのレジの前に立ち仕事中の私から金をせびっているのは元カレ。彼も仕事を首になりほぼ収入はないのだろう。こんなふうに金をせびってきたのはこれが初めてではない。こいつがいるからレジが進まない。見かねた他のパートさんがレジを開ける。そろそろマネージャーが来るか。もう、これで首だろうなぁ。


「あなた、レジ終わったならさっさとどきなさい。後ろがつかえてるでしょ」


 女性客に注意された彼は威嚇するようにそちらを見る。


「あなた、彼女には接近禁止のはずよね、弁護士さん呼びましょうか?」


 彼は途端に勢いがなくなる。女性は元カレの元奥さん。そういえばこの辺りに住んでいると聞いた。まさかこんなところで会うとは。


「ちっ……」


 彼は支払いを済ませて出て行った。

私のところに別なパートさんが来てレジを代わる。そしてマネージャーが呼んでいると伝えられた。


 結局、これが初めてでないことで柔らかい言い方だけど、ようするに首になった。


 裏口から出ると駐車場に元カレがいるのが見えた。困った、このままだと家にまで押しかけそうだ。そう思っているところに声を掛けられた。


「ごめんなさい、ちょっといいかな」


 さっきの奥さんだった。


「話があるの。一緒に来てもらえる?そういえばお子さんは?」

「保育園、○○保育園に」

「そう、じゃ、そちらにも寄っていくね」


 娘を引き取ってそのまま車に乗せてもらう。車は大きなマンションに入っていく。


「おかえり、あれ?どなた?」


 部屋で出迎えてくれたのは小学生らしい男の子。礼儀正しいのはお母さんの教育が良いのだろう。元カレにはこんな教育はできない。


「ちょっとお客さんと話さないといけないの。そうそう、この子の面倒をうちの子に見てもらっていいかしら?」


 この子なら大丈夫だろう。


「ももかって言うの、えと」

「しょう。翔ぶという字でしょうです。ももかちゃんお兄ちゃんと遊ぼう」


 ももかは人見知りするから心配だったけどおとなしくついて行った。


「それでね……」


 話はやっぱり元カレのことだった。たしかに離婚の条件の中に接近禁止も入っていた。ただ、法的にはあまり効果がないようだ。だから私も持て余している。


「それでね、ちょっとあいつのついでにあなたの事調べさせてもらった」


 何を言われるのだろう。慰謝料のお変わりは無理だ。


「慰謝料も苦労しているみたいね。あぁ、ごめんなさい責めてるんじゃないの。貴女も……ある意味あいつの被害者だしね」

 

 ちょっとムッとした。


「ごめんなさい、言い方悪かったわね、ごめんなさい」

「それで何が言いたいのですか」

「先日、翔の面倒をみてくれてた家政婦さんがやめちゃってね。代わりの人を探しているのだけど、なかなかいなくてね。貴女さえよければやってほしいなって」

「同情ですか?」

 少しいい方がきつくなるのは許してほしい。たしかに私はこの人の旦那さんとダブル不倫をしていた。弱い立場なのも確かだ。

「同情ね……、確かにそう見えるかもね。でも貴女はどうなってもいいけど、あの娘は大人の都合で不幸になってほしくない」

「……」

「よく考えてみてね、桜子さん。あと、うちに通うようになればあいつも近寄らないと思う。近寄れば慰謝料お代わりが待ってるからね」


 他に方法はない。

そういう結論になるまで時間はかからなかった。ももかももうすぐ小学生だ。いろいろ補助があってもいろいろお金は必要だ。

私は彼女、美鈴さんの家の家政婦として働くことになった。その後、いろいろあって通いではなく住み込みで働くようになった。

元カレは美鈴さんというか弁護士が怖いのか姿を見せなくなった。


◆◆◆


 美鈴さんは私が住み込みで働くようになってから仕事が忙しくなったようだ。帰りも遅い。時には酒の匂いをさせて帰ってくることもある。

そんな時は私が、なんか美鈴さんの妻のようにお世話をする。いつの間にか家族のようになった気がする。翔君も私を迎え入れてくれた。というか料理がまるでダメな美鈴さんよりある程度レパートリーのある私の方がママみたいだといわれてちょっと複雑だった。ももかも翔君に懐いていつの間にか兄さんと呼ぶようになっていた。戸籍の上ではももかの父親はいない。元夫と別れるときにDNA検査をして親子関係にないことは確認している。かと言って元カレを父親にはしたくなかった。


「ちょっとぉ、飲み過ぎですよ、もう少し控えてくださいな」

 セリフだけ聞くと飲み会が続いている夫に言っているようだ。美鈴さんなにかあったのかリビングで強いお酒を一人飲んでいる。

「なんか、桜子さん、奥さんみたい」

「ただの家政婦ですよ」

「桜子さんも飲まない?」


 お酒は……元カレとよりを戻したというか戻されたのは会社の飲み会のあとホテルに連れ込まれたから。そのあとは嫌な思いでしかないので別れてからは飲んでいない。


「ほら、飲み過……」


 私がお酒を取り上げようとすると、美鈴さんはお酒を口に含み私に口移しで呑ませてきた。そのあとは……気がついたら朝で二人とも裸でベッドに入っていた。


◆◆◆


 目の前で美鈴さんが土下座している。子供たちは学校だ。


「ごめんなさい、謝って済むことじゃないのはわかっているけど、許されないだろうけど」


 こまった。なぜなら、私ったら彼女のしたこと怒ってないから。それをどう伝えればいいのか。思い余った私は、美鈴さんに近寄り頭をあげさせ、キスをした。


「これが答えです」


 美鈴さんは一瞬驚いた表情だったけど、そのまま抱きしめてきた。


 その後元カレからは接触がなかった。元夫とは一度だけ会った。あちらから、ももかの入学の度にお祝いをもらってたのでそのお礼。すでに再婚していてお相手は大和なでしこという表現がぴったりな方だった。二人から白蛇がどうとかで謝られたけど何を言っているのかわからなかった。それから、もう一つ、DNA検査の結果が間違っていたことを教えられた。ももかは元夫の娘だった。それは、ももかにとって朗報だろう。ただ、あちらも家庭があることだし、今のままでとお願いした。奥さんがちょっとほっとしたのを見逃さなかった。


◆◆◆


 今日で親としては一区切り。翔君とももかの結婚式だ。ももかと翔君のあいだに血縁関係がなかった事が二人を後押しした。翔君にとって妹だったももかだけどももかにとっては兄ではなく男だったようだ。何時から付き合い始めたかは言うまい。


そして美鈴さんと私はほぼ夫婦として暮らしている。もう、あの夢は見ない。


 





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