ケース01:デチュワちゃんが毒になっちゃった その1
毒のダメージを受けながら森を探検するのは大変だ。毒タイプのキャラでもない限り、プレイヤーも、敵キャラも、ボスキャラも、実に96%は毒に毒になったことがあるんだ。だからこそ、アイテムショップには色々な解毒薬が売られている。それに、毒を治す木の実もいっぱいある!
「ちょっと待って、木の実で簡単に毒を治せるのに、どうしてみんな医者に行くの?」
いい質問だね。ちょっと、説明しようか。
29歳の時、私はキングトッポッキの城の姫じゃなかった。今も姫じゃないけど、やめたことは後悔してないんだ。勝手に城を制服するのは、最悪な犯罪だしね。でも、みんなの病気を治すため、タヌキの三つ子と廃墟だった病院を改修して、ウサキュアくんと病院を始めたのは本当に素晴らしいことだった。
そう、「マジコロ病院」が誕生したんだよ!
…「え、その病気しか治療できないの?」なんて冗談を言わないでね。医者と病名がたまたま同じなのはよくあることだし、ここは色々な病気を治せるんだ。
さて、4か月後のある日、休憩室の椅子に座ってひたすら医学書を読みふけっていた。たいていは研究室で読むんだけど、この日は何か食べなきゃと、思って休憩室で読んでいた。名医が最近のリスギ・シンドロームの流行を研究した本で、こんな面白いだと食べるのも忘れて読んじゃうよね。
トッポッキくんがチップスを探しに部屋に入ってきたとき、戸棚の扉がバタンと閉まって彼の怒声が聞こえてきた。
「マジでまだ何も買ってねーのか?俺んちからチップス持ってきたのにー え?マジコロくん?」
見上げると、眉をひそめるトッポッキくんに気付いた。あ、忘れてた、私の周りにポテトチップスが一、二個あった。というか、三個だったっけ…?
「何してるんだ?なんでチップスを独り占めしやがるんだ?!読んでいる時は何も食ってなかったくせに!」
あ、「そんなに大きなドラゴンがどうやったらそんなことできるの」って思う読者もいるかもね。
キングトッポッキとトッポッキは違うキャラなんだ。キングトッポッキはトッポッキ城の… 領主?主?リスギ王国の王様じゃないんだけど、トッポッキ城を治めて住んでいる。キングトッポッキに「お前は王様じゃねーよ!」なんて言ったら、ふーという炎で燃やされちゃう。
とにかく、彼は息子に自分と同じ名前を付けた。30年あと、その王子はマジコロ病院で働くことにした。
彼はDr.トッポッキ3世!(王冠をもらうまで進化できないので今は2メートルぐらい)
ひとまず、私はポテトチップスを取ってぱっと開けた。
「ありがとう、研究してたから食べるのを忘れちゃってたんだよ」
トッポッキくんの鼻から炎が出てきた。そして、私に向かって怒鳴った。
「まだあんな奴手伝ってるのか。あのやぶ医者、あいつの弟さえあいつを信用してねーんだぞ!なんでお前はー」
「ウサキュアくんが彼を信用してなくても、感染の流行を止めた名医と研究したらもしかするとー」
「出会ったばかりの名医が、君と働きたい、なんて言うのが怪しいって気づけよ!」
突然、トッポッキくんの長いしっぽが私の体を巻き寿司のようにぐるぐる巻いて、ゆらゆら揺らしてきた。彼は戦うときは気絶させるために呼吸もできないほど絡みつくんだけど、友達相手の、イライラを伝える時の力加減はちょっとくすぐったい。
「あははは、トッポッキくん、やめて!その医者、その医者―」
「ウサキュアくんと俺のことを聞かせてやるぜ!」
「先生―!」
床を見ると、小さくて真ん丸の三匹のタヌキに気付いた。真面目そうなヤクくん。お母さんみたいなソクくん。何にも心配事の無さそうなドオリくん。彼らはタヌキの三つ子なんだ。
「お忙しいところ申し訳ござません!」
「二人の患者様がいらっしゃいました。マジコロ先生の診断室にいますが、トッポッキ先生が治療したいと仰るなら部屋を変更しますが…」
「変更しますが!」
トッポッキくんと私は目をぱちくりさせてお互いを見つめていた。マジコロ病院には、予約とか、「事前にお電話ください」といった決まりもなかった。ストーリー病で立てないレベルだと、予約の電話も出来ないんだ。助けてって言われたら、すぐに助けるんだよ!
さて、どっちが治療をするかな…
「じゃん、けんー」
指のない私は新しいはさみのポーズを試してみた。両方のひれで、わにのようなポーズー
「おい、ずるいな!そんなことできるなんて言わなかっただろ!」
「ごめん、独学でー ちょっと待って、ネットで覚えたっけー」
「そんな勝ち方をして、ずるいと思わねーのか?」
「2試合目の賞品はチップスにする?」
「…」
「そして、3試合目の勝者が患者を治療出来る?」
「… 新しい技は禁止だぜ」
そして、私は患者のためにチップスを犠牲にせざるを得なかった。でも、決して残念なことではないよ。キャラが病気になったら、完全に治るまで何でもするんだ。
さて、チップスを持っていない私が109号室の診断室に足を踏み入れた時、二匹のキャラがいることに気付いた。リボンみたいな翼の紫のチョウが、コードみたいなしっぽのハムスターの隣を飛んでいる。そのチョウは元気そうなのでよかったけど、スツールに座っているハムスターは…
「犬先生、先生が働けなかったら、他の先輩先生なんかが対応してくれるのか?」
「犬ではないです。リスギです」
「えええ、かっこいいじゃん!リスギって何?そのペンギンは先生の先輩?」
「『ウニペンギン』と言ったほうがいいかもしれません。マジコロ先生です』
たれ耳のウサキュアくんと患者は私に視線を向けた。ハムスターは咳をしたら、口から紫の泡が出て10のダメージを受けた。毒… 治りやすい状態異常だね。
「初めまして、マジコロです!」
ウサキュアくんが持っていたクリップボードを取って素速く見た。
「あ、ウサキュアくんがもう言ったと思うけど、診断結果は毒なんだ」
「毒?えええ、相手が毒になるはずなのに… でも、相手に向かって毒の煙をパタパタ羽ばたいて送ったのに、何故かデチュワちゃんが毒になっちゃったんだ!」
「びっ、びっくりしたよ…」
「僕もびっくりしたよ」
もし患者が毒になっても、病院に来たらキュアベリーを使って治療が出来る。まあ、これを持っているキャラはそもそも病院には来ないんだけどね。私達は常備しているから、簡単に毒を治療できるんだ。
「心配しないで!キュアベリーを持ってるんだよ!」
「キュアベリーを持ってるの?ちょっと待って、ウサキュア先生は魔法少女みたいにベリーに変身できるの?でかい木のボス?!」
「違います、僕は果実とか、いわゆるでかい木などではありません。リスギです」
キュアベリーは、木から収穫される、毒を治療できる果実なんだ。手に入れやすいし、速く収穫できるから、これで毒を治す事が多い。良かったな…
でも、机の中にあるはずなのに…
「あれ?ウサキュアくん、ないんだよ」
「ないでしょうか」
ウサキュアくんはキュアベリーを探している私に向かってきた。
「うん、研究室から持って来たはずなのに… ちょっと待って、持ってくるつもりだったのに持って来てないなんだよ!なんで忘れちゃったんだろう?!」
「すみません、兄上との研究のために、『あ、しまった、25日までに病気の原因について論文を書かなきゃ!』とー」
「そうだ、せっかくウサキュアくんが『マジコロ先生の代わりにキュアベリーを』って言ってくれたのに、私が持ってくるって言い張ったんだっけ。それから、レストランでの支払いのような小競り合いになったんだよね」
その会話をしている間、リボンくんとデチュワちゃんは何か囁いていた。ほとんど聞き取れなかったけど、このキュアベリーの問題はそれよりも重要だし…
「ですから、僕が研究室に行ったらー」
「いやいや、私が研究室に行ってキュアベリーを持ってくるよ」
ウサキュアくんはリボンくんとデチュワちゃんをちらっと見ると、当惑しながら私を見てきた。
「それなら、僕が患者を見といた方がいいですか」
「いやー、私がそれも、いや、私…」
キュアベリーを手に入れるか患者の近くにいるか、私は選べないな…
リボンくんとデチュワちゃんの方を見ると、少し古ぼけた黄色い紙を見ていることに気付いた。私をちらっと見たり紙を読んだりしながら、彼らは少し驚いているように見えた。
「リボンくん、デチュワちゃんー あれ?何か見てるの?」




